第4話 VSドラゴン?

「ふわぁ…」

 初めての依頼をこなした次の日。


 僕たちは宿屋からギルドに向かった。

「道は長いですね」

「まだブロンズ冒険者だからな。ランクが上がれば知名度も上がって布教もスムーズにできるようになるはずだ」

 …こんなんでやっていけるのかなぁ。


「だからぁ!俺は一人でもできるっつの!」

「ですが、決まりで…」

「うるせぇ!」


 なんだろう。受付が騒がしい。

 近くの人に話を聞く。

「どうしたんですか?」

「あぁ、あいつがなあ。ソロでドラゴン討伐に行くって」

 怒声の主を指さす。見たところ僕と同年代の青年だ。

「ドラゴンは危険な魔物だ。ソロで行くなんて自分から死にに行くようなもんだぞ」

「だから受付のねーちゃんも困ってるんだ」

 ほんとだ。

 …女性を困らせるなんて良くないぞ。


「せめて神官を連れて行ってください!」

「神官?暇な神官なんていな…!ん?お前!」

 僕と目が合う。

 ずんずん進んでくる青年。


「お前、神官だな!おいねーちゃん!コイツ連れてくから、それでいいだろ!」

「「え」」

「ですが、コトイさんは昨日登録したばかりの新人でして…」

「そんなのどうだっていいだろ!そこのフードのあんた、コイツの連れか?だったら一緒に行こうぜ」

「…コトイ殿と私は他の依頼を受けたいのだが」

「報酬は全額アンタらにやるよ」

「乗った」

「コトイ殿?!」

「お金、大事」

 僕、知ってるんだ。昨日ファナさんが夜な夜なお金が足りないって言いながら荷物整理してたの。


「本人がその気ならギルドからは何も言えません…」

 お姉さんが疲れた声で言う。ちょっと申し訳ない。


「おし!俺はフリング・スローイング!」

「僕はヒガキコトイです」

「…ああもう!ファナ・アローだ」

「よろしく!コトイ!ファナ!」


* * *

 

「どこまで行くんですか?」

「魔山脈の麓までだな」

「魔山脈?」

「魔王領と人間たちの領土の間にある山脈だ。ほら、見えるだろう」

 ファナさんが僕たちが進んでいる方向を指さす。馬車の中だから身を乗り出さないと見えない。


「よいしょ」

 確かに少し遠くに雄大な山脈が見える。

「でかくないですか?」

「まぁ、3国が面するぐらいだからな」

「3国?」

「人間が主な国民のここヒューマ王国、獣人が主のビースタン王国、エルフが主のエルランデ帝国だ。そして反対側にはジャスティ共和国、そしてフロー正教国がある」


「そんなことも知らないなんて、コトイって相当な田舎もんだな」

「そんなことないですよ~だ。…なんでドラゴンを狩ろうと思ったんですか?」

「ああ。ドラゴンスレイヤーってなんかかっこいいだろ?」

「…。」


「それにドラゴンが町まで飛んできたらパニックになっちまう。だから、この依頼を見たときは何が何でも行きたかったんだ。お前ら以外誰も誘いには乗ってくれなかったがな」

 少々突っ走りすぎだけど良い人なんだな。この馬車の中、良い人ばっかりだ。


「ところで、フリング殿」

「フリングでいいぜ」

「…フリング。さっきから言おうと思ってたのだが、お前の武器はどこだ?」

「武器?いらねぇよそんなん」

「その見た目で魔法使いなのか?」

「ちげぇよ。ま、目的地に着いたらわかるから楽しみにしてな」


 いや、命関わるかもだから言った方が良くない?

 なんか自信満々だから言えないけど。




「ついた~」

「疲れた…」

 慣れない乗り物はキツイ。にしても、近くで見るととんでもなく切り立った山だ。


「ドラゴンはどこにいるんだ?」

「依頼書によるとあの洞穴の中に普段は寝てるらしい。でも、油断は禁物だ。俺が前衛でお前ら二人は後衛を頼む」

「わかった」

「はい」


 緊張する。ドラゴン。人が勝てる相手なのだろうか。不安になってきた。

「コトイ殿、大丈夫だ」

「ファナさん…」

 優しい頼もしい嬉しい。泣きそう。 

 

「よっし行くか」

 薄暗い洞窟を進む。

 しばらく歩くと、黒い巨体が見えてきた。

「シーッ。静かに」

 岩陰に隠れ様子を窺う。


 ドラゴンだ。まんまドラゴンだ。寝ているみたいだが、威圧感がすごい。

「さて、じゃあ始めるか。『パワー』!」

「聖魔法が使えるのか?」

「バフ系だけな!ほいっと」

 フリングが足元の石を拾う。

 石?


「先手必勝!『ジェット』!」

 振りかぶって…、思い切り…、投げた?!

『ドォォォォォン!!!!!!』

「よっしゃ命中!」

「投石…」

 武器がいらないってそういうこと?!


「コトイ殿、フリング、油断するな!」

「ギャアア!!!!」

 ドラゴンが咆哮する。

「ッチ。いいとこ当てたんだけどな」

 あまり効いていないみたいだ。

 むしろ、怒らせてる?


「ギャ―ス!!!」

 突進してきた。

「くそっ」

 何とか避ける。

 が、次いで腕を振り下ろされる。大きな鋭い爪が目の前に迫る。

「『ジャッジメントショット』!」

 なんとか銃を撃つ。

 光の波動を喰らい、ドラゴンは動きを一瞬止める。


「ギャ―…」

「『ファイアアロー』!」

「ギャ?!」

 ファナさんの追撃。

 効果はあるようだ。

「『ジェット』!」

 さらに投石。

 これなら…。

「ギャァ…」

 …効いてはいるがまだ倒せない。


 さすがドラゴン、耐久力はある。

「ギャアア!!!」

 と、ドラゴンが何かを溜め始める。

「まずい!『ライトニングブレス』だ!」

「避けろ!」


 避けろったって!こんな狭い洞穴で?!

「コトイ!気休めに『パワー』使っとけ!」

 フリングのその言葉が終わると同時に、ドラゴンの口から閃光が放たれる。

「!『パワー』!」

 なんとか間に合っ…


 砂埃が舞う。

「ゲホッゲホッ」

 痛い。もろに喰らった。


 体から緑のオーラが溢れている。

「自動回復の加護…」

「コトイ殿!危ない!」

 ファナさんが僕を突き飛ばす。


 次の瞬間僕が居た場所にビームが炸裂する。

「…ファナさんありがとうございます。消し炭になるところでした」

「ああ。ところで回復できないか?『ヒール』って聖魔法があるんだが…」

「はい!『ヒール』!」

 魔法で大事なのはイメージだ。ファナさんを回復させる。回復回復…

「うん。大丈夫だ、ありがとう」

「おい!」

 僕たちが隠れている岩陰とは別の岩から声が聞こえる。


「フリング!大丈夫ですか!」

「鍛えてるからな!でも、こっからどうする?あのビーム幅が広すぎて」

「次弾が来るぞ!フリング!」

「嘘だろ!?」


 轟音。

 フリングが隠れている岩が閃光に包まれる。


「フリング!」

「あっぶね!」

 閃光からフリングが出てくる。

 それはもう当たってるのでは?


「いてて…」

「『ヒール』!」

「おっ、ありがとな」

「しかし、合流はできたがどうする?現状『ライトニングブレス』から逃れつつ攻撃する術はないぞ」


 確かにあのビームは強力だ。

 どうやって倒せば…。

 考えろ考えろ考えろ。


「…そうだ!空飛べませんか?」

「はぁ?何言ってるんだコトイ?」

「いや、成程。いい案だコトイ殿」

「なにが?!」

「あのビームは幅は広いが縦の長さには限度がある。一瞬で天井ぎりぎりまで飛べれば攻撃のチャンスはある」

「どうやって行くんだよ!」

「それは…」


「私の風魔法なら一人ぐらいは飛ばせるぞ」

「ファナさんナイス!」

「ただ、決めるなら一発で決めないと魔力的にも体力的にも厳しい。飛ばすとしたらこの中で最大火力のフリングだろうが、あのドラゴンを後一発で仕留められるか?」

「急所に当てればギリかな」

「急所…、額か」

 そう言えば額に宝石みたいなのがついている。あれが急所…てかちっさ!


「当てれるか…?」

 う~ん。フリングの投石は強力だけど、いかんせん力任せだ。コントロールが効くかなあ…。


「こういう時こそ必中ならなぁ」

「必中…それだ!コトイ殿、『シンクロ』だ!」

「スイミング?」

「『シンクロ』!聖魔法の一つだ!他人と感覚を共有できる。これがあればフリングも『ロックオン』が使えるぞ!」

 成程。天才か。


「ギャアアア!!!!!!!」

「やばいぞ!今度のは特大だ!」

「コトイ殿!ぶっつけ本番だがやるぞ!フリング!準備はいいか!」

「おう!いつでも飛」

「『グランドウインド』!」

「最後まで聞いて!」

「コトイ殿!」

「『シンクロ』!」

 フリングと共有!共有共有共有!ん?


「「何これきも~!!」」


 お互い変な感じがする。でも、これなら

「フリングいきますよ!『ロックオン』!」

「おお!これはすごいな!」

「ギャアア!!!!!」


 ドラゴンの顔がフリングの方に向く。が、フリングはもうモーションに入っている。

「喰らいやがれ!『グランドジェット』!!!」


 流星のような速さで石が放たれる。もちろん、急所の宝石に向かって一直線に。


『ドゴォオオオン!!!』


「ギャアーーーー!!!!」

 ドラゴンが断末魔を上げる。


 なんとか勝てたようだ。でも、

「勝った…!やったぞコトイ殿!…コトイ殿?」

「腕痛すぎ…」

 どんだけ力任せなんだよフリング!


「ハッ!そうだ、フリング!大丈夫…」

「ムガムガムガ!」

「…はまってる」


 頭だけ天井に。宙ぶらりんだ。


「大丈夫!?」

「ムガガ~」

「よかった~」

「…まぁ、何はともあれ討伐成功だな!」




「ところで、あのスキルなんだ?!」

 帰り道、馬車の中でフリングが問う。

「え~っと、『ロックオン』って言って」

「我らが神の信者のみが使える神聖なスキルだ!」

「神?」

「必中神ショア様だ!」

「誰?」

「ショア様は原始の時代から我らダークエルフを見守ってくださり…」

 

 熱弁を始めるファナさんを横目にフリングに話す。

 布教チャンス!

「僕たちショア教って宗教やってて、信者数は少ないんですけどもし良かったら入信して…」

「いいぜ!」

「え?」

「『ロックオン』かっけぇしな!それに今の時代信じる対象がいるって、それだけで心が強く在れるしな!遅かれ早かれ俺はこうなる運命だったってこった!」

 魔王軍の脅威が目の前にある中で、そういう考えにもなるのか。


 ともあれ、

「…やったぁ!ついに3人目!ありがとうございます!」

「え?3人?少な!」


 これからも頑張ろう!

 そう思った1日だった。

===

【現在の教徒:3人】

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