第22話 砂糖作り ①

 工房建設に向けて、皆はそれぞれの役割を担い動き始めました。モルゲンとの会話で砂糖を自作するというアイデアを思いついたジュンナは、早速それを試してみようと考えました。

 まず、ジュンナは母親のフローラを探し、庭で洗濯物を干している彼女に声をかけました。

「お母さん、ちょっと良いかな?」

「あら、ジュンナ。どうしたの?」と、フローラは笑顔で振り返りました。

「この村の近くに生えていて、葉っぱを乾かしてお茶にすると甘みが出るような野草って知らない?」

 フローラは少し考えて、「甘みが出る野草ねぇ……いくつか心当たりはあるわよ。どうしたの、急に?」と、不思議そうな表情で尋ね返しました。

「それの甘みを取り出して、お砂糖みたいに出来ないかなと思って」と、ジュンナは少し期待を込めて言いました。

 フローラは目を丸くして、「あら、面白いことを考えるわね。砂糖みたいに、というと、あの甘い粉にするってこと?」と興味を示しました。「確かに、昔からお茶にする甘い草はいくつかあって、蜂蜜が取れない時なんかは、少し甘味を足すのに使ったりもしたけれど……それを砂糖みたいにするというのは聞いたことがないわね。でも、試してみる価値はあるかもしれないわ。どんな草に目星をつけているの?」

 ジュンナは「つるみたいな植物」と答えました。

「つるみたいな植物?」フローラはそう呟くと、少し顎に手を当てて考え始めました。「つる性で甘い葉っぱ……そうね、いくつか思い当たるものがあるわ。例えば、『甘葛(あまづら)』っていうつる草を知ってるかしら? 葉っぱを乾燥させてお茶にすると、ほんのりとした自然な甘さがあるの。昔は、貴重な甘味料として少し使われていたみたいよ。村の裏山あたりを探せば見つかるかもしれないわ。あとは、もっと珍しいものだと『砂糖蔓(さとうかずら)』っていうのも聞いたことがあるけれど、これは自生している場所が限られているかもしれないわね。甘葛なら、この辺りでも見つけやすいと思うわ。」

 フローラはそう言いながら、庭の隅に目をやりました。「確か、少し前に裏山に行った時に甘葛を見かけたような気がするわ。もし興味があるなら、明日一緒に探しに行ってみましょうか?」

「だけど、飲んで中毒みたいな症状が出る人がたまにいるのよ」とフローラは続けて話しました。

「えっ、中毒を起こすことがあるの?」ジュンナは驚いて聞き返しました。

「どんな風に?」

 フローラは少し心配そうな顔で頷きました。「ええ、昔からそういう話を聞いたことがあるわ。特に、間違った種類のつる草を採って混ざってしまったり、同じものでも体質によっては合わないことがあるみたいね。ひどい場合は、お腹を壊したり、気分が悪くなったりするらしいわ。だから、もし試してみるにしても、最初はごく少量からにして、様子を見ることが大切よ。」

 フローラはさらに続けました。「甘葛自体は、きちんと乾燥させて、適量を守れば大丈夫だと聞いているけれど、見た目がよく似た毒性のあるつる草もあるらしいの。だから、見慣れないものは安易に口にしない方が良いわ。もし一緒に探しに行くなら、私がちゃんと見分けるから安心してね。」

「よし!これで第1候補が見つかるかも」ジュンナは心の中で叫んだ。

「ありがとう、お母さん!甘葛ね、覚えたわ。明日、一緒に行けるのが楽しみ!」と、ジュンナは目を輝かせながら言いました。「もしかしたら、本当に砂糖みたいにできるかもしれないんだもんね!」

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