第3話 村の日常生活②

 ある日、村の畑がイノシシに荒らされるという被害が続いた。困った村人たちは、ノアに助けを求めたが、ノアが作った罠にイノシシはなかなかかかってくれなかった。そこで、ジュンナはノアにそっと提案した。

「お父さん、私にちょっとだけ手伝わせてくれない?」

 ジュンナはエレナと一緒に畑の周りの茂みに隠れた。


 エレナの擬態スキルで姿を消し、イノシシがどこから畑に侵入してくるのか、じっと観察した。そして、イノシシが特定の場所の柵を壊して入ってくることを発見したのだ。

 その時のジュンナは服を脱いで全裸で姿を消していた訳ではなく服にも擬態スキルを付与出来るようになっていたのだ。


 通常のカメレオンでは擬態は物にまでスキル付与できないが、実はエレナはカメレオンではなく姿は似てても幻獣と言われる存在でスキルも彼女であれば物にまで付与できるとの事らしい。早く教えて欲しかったジュンナであった。


 今更だが、この世界にはスキルという魔法みたいな能力があるので魔法が存在しない代わりに(伝説やおとぎ話なんかには魔法と言う言葉はでてくる)付与スキルを持つ人間が造れる前世で言うとバッテリー電池のような「固有石ドライブストーン」と呼ばれる石に様々なスキルを付与を充填して日常生活で利用している。

 、

 転生物のテンプレでトイレに下水道がない代わりにスライムが汚物を浄化しているという描写がよくあるが、スライムではなく「清掃スキル」を持っている人間と「付与スキル」を持った人間が固有石ドライブストーンに「清掃スキル」を付与(充填)し、その付与された固有石ドライブストーンを村では購入して共同トイレに設置して使用している。


 もちろん、自分が「清掃スキル」を持っていれば固有石ドライブストーンは必要ない。

 様々なスキルを付与した固有石ドライブストーンは日常生活に使われている。

 ただし、固有石ドライブストーンには上位や特殊と呼ばれるスキルは付与できない縛りがある。

 自分が持っていない職業のスキルも付与された固有石ドライブストーンを使えば使い切りで時間制限あり、下位レベルしか付与できないという条件付きで覚えられる。ただし、値段も安くはないので使用頻度は低い。


 固有石ドライブストーンはその地域を治めている領主に税を納める時などに購入代金分を一緒に納めて購入しているのがほとんどだ。

 アインツ村にたまに来る行商人などから直接買う事も出来るが粗悪品もない訳では無い。領主は懇意にしている御用商人から一定レベルの固有石ドライブストーンを大量購入する事で多少安くしてもらいそれを領民たちに分け与える仕組みだ。


 貴族や金持ち向けには「冷暖房」、「洗濯乾燥」、「冷蔵冷凍」、「サウナ風呂」などの機能を持つ複合スキルの固有石ドライブストーンを設置した設備もあるみたいだ。使い切りの物から複数年使用できる物もあるらしい。

 ジュンナが思っていたよりこの世界は文化レベルは高いのだった。


 ジュンナはその場所をノアに教え、ノアはそこに頑丈な罠を仕掛けた。次の日、見事に大きなイノシシが罠にかかった。村人たちは大喜びで、ジュンナとエレナに感謝した。

 こうして、ジュンナはエレナと共に、アインツ村での日常をゆっくりと、そして少しずつ豊かにしていった。特別な力は、彼女の生活に小さな魔法をかけ、周りの人々との繋がりをより深くしていった。明日もまた、どんな新しい発見や出来事が待っているだろうか。ジュンナの心は、希望に満ちていた。

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