スターダスト

Kurimu Kora

プロローグと第1章

「プロローグ」


「この世界は、まだ読まれていない多くのドラマの脚本が積み重なったものに過ぎない。」




戦争は常に悲劇を生み出す。


そして悲劇は、私たちがそれを学び、楽しむために存在する。


私たちはしばしばそれを否定し、「かわいそうだ」「悲しい」「怒っている」と言う…


でも心の奥底では、私たちもまた、他人が苦しむのを見て楽しんでいることがよくある。


でも神はどうだろう?


もし違うなら、なぜ彼はこの世界に悲劇を作り、与えたのか?


それは、私たちが完璧な存在だと言われるように、彼自身もまた悲劇に楽しみを見出しているからではないだろうか?


********


2028年、3月10日。


インドカリス国ムラダディ市


レッドゾーン。



かつて美しかったこの小さな町の赤い空は、煙と黒い雲に覆われている。かつては高層ビルが立ち並んでいた街並みも、いまや廃墟と化している。


その混乱の中、軍服を着た若い男が、右の手のひらに石炭のように燃え続ける刃のついた大剣を引きずりながら、足を引きずって歩いているのが見えた。


「はぁ、はぁ、はぁ…」


青年の息はかすかに乱れている。


炎が彼の周りで激しく燃え盛り、


頭上では雷鳴が絶え間なく轟いている。


そして今、この絶望をさらに深めようとするかのように、青年の足元に広がるアスファルトは、犠牲者たちの血が長い間乾ききったことで赤黒く染まっていた。


「これが終末というものなのか…?」


青年は立ち尽くしたまま、周囲の凄惨な光景を見つめていた。


左肩の傷口からはまだ血が流れ続けている。


視界が徐々にぼやけていく中、彼はうつむいて、自分が立っているアスファルトを見つめた。


「…赤い。」


彼はかすかに呟いた


黒い髪が疲れきった彼の顔を覆っていた。


傷だらけでボロボロの体にもかかわらず、彼の目はまだ鋭く、任務を全うしようとする強い意志に満ちていた。


「はぁ…たとえこれが終末でも、俺は…まだ動き続けなければならない…」


「…今、この場で皆を救えるのは俺だけだ!」と呟いた。


強い決意を胸に、青年は震える足を引きずりながら、再びこの赤くて鉄臭い大地を進み始めた。


「ブリュクッ!」


その瞬間、彼の体が地面に倒れ込んだ。


若者の決意はまだ強かった。


しかし、その身体はもはやその意志を支えきれなかった。


「ちっ!なんでこんなところで倒れなきゃならないんだ!?さっさと立て!まだ助けなきゃいけない市民がたくさんいるんだ!」


若者は自分の身体に向かって叫んだ。


「たくさん?一体、まだどれだけの人を助けなきゃならないんだ?」

疲れ切った身体が反論する。


「聞くな!動き続けろ!今は俺たちだけが、あのエイリアンやクソ野郎どもを殺せるんだ!」


魂が答える。


「でも…もう疲れた…ここで少し休もうぜ。」

身体が返す。


「何言ってんだ!?こんなところで休むな!あのクソどもに喰われたいのか!?立て!」


燃え盛る決意の魂が怒鳴る。


「悪いけど、もう無理だ。俺はもう血を流しすぎた。これ以上、戦い続けるなんて不可能だ。」


身体が呟く。


「じゃあ、どうするんだ!?このまま侵略を許すのか!?あのエイリアンどもと化け物どもに皆を虐殺させる気か!?ふざけるな!見ろよ!神様は全てを俺たちに託したんだ!この炎の剣で、奴らを傷つけるだけじゃない、奴らを皆殺しにだってできるんだ!」


魂が燃え上がるように叫ぶ。


「見えないのか!?もう疲れ果てたんだ!もしお前が戦い続けたいなら、お前とお前の神様だけがあそこで戦えばいい!俺はもう限界だ!人を助けるどころか、今は自分すら助けられないんだ!」


身体が激しく怒鳴る。


その返答を聞いて、燃え盛っていた魂の声は徐々に弱まり、意志は薄れていった。


今、魂の決意はしぼみ始め、燃えていた炎はゆっくりと消えかけている。


「でも…今は…俺たちだけが…」


ゆっくりと、しかし確実に魂は声を失い始めた


溶けきった蝋燭のように、その青年は赤いアスファルトの上に倒れ込み、体中の重みを解き放っていた。


「そうだ……彼の言う通りだ。最初から、一人で全てを守るなんて無理だったんだ……」と青年は呟いた。


青年はゆっくりと体を反転させ、黒い雷雲が覆う空を見上げた。


「くそっ……あの異星人さえいなければ……俺たちの世界は、ずっと平和でいられたのに……」


青年は重たそうに大剣を地面に落とし、右手を天に向けて差し出した。まるで、あの稲妻を掴もうとするかのように。


「神様……お願いです。どうか、俺の願いを聞いてください……もし叶うなら……もう一度だけ……俺にチャンスを与えてください……俺たちから全てを奪ったあいつらに報いを果たすための……」青年は涙を流しながら呟いた。


青年は右手を固く握りしめ、唇を強く噛みしめた。燃えるような怒りを宿した瞳で、彼は叫んだ。


「神の名の下に誓う!この地獄を奴らに返してやる!この炎で奴らの身体を焼き尽くしてやる!そして、その血でこの大地を清めてやる!」


ゆっくりと、青年の右手は力なく地面に落ちた。


その瞳からは抑えきれない涙が流れ出し、その表情には深い失望が刻まれていた。


空は真っ黒に染まり、この小さな町から太陽の恵みが消え去っていた。


暗闇と静寂に包まれたその場所で、青年の悲痛な嗚咽だけが、生きとし生けるものの心を切り裂いていた。


「母さん……ごめんなさい……」


「父さん……ごめんなさい……」


「みんな……ごめんなさい……」


「……ごめんなさい……」


「.........」


「......」


「...」


「アウラ……」




第1章


「再び燃え上がる灰塵」




2030年XX月XX日



16時30分(WIB)


インドカリス国ジャヤシディ市



太陽の恵みはこの賑やかな街を今もなお照らし続けている。


この明るい日差しの下、青い空と広がる雲が果てしなく広がり、超高層ビル群がそれに届こうとそびえ立っている。


ここは希望と色彩に満ちた街。あらゆる性質が集う場所であり、他人の目には壊れた街に映るかもしれないが、別の目には美しく映る街。


人類全体の視点を変えるための先端、常にそしてこれからもそうあり続ける街、それがジャヤシディ、インドカリス国の首都である。


この街の喧騒の中、交差点のゼブラクロスを渡る多くの人々が行き交っているのが見える。


交差点では多くの歩行者と車が行き交い、そこまでひどくはないものの渋滞が起きていた。しかし、混雑した街中には車のクラクションが鳴り響き合っていた。


その頃、少し離れた二階にあるファストフード店で、一人の若者が窓際に座り、目の前の道路の景色を窓越しに眺めていた。彼はイチゴ味のミルクシェイクを飲んでいる。


ミルクシェイクを啜りながら、彼は空を見上げてつぶやいた。


「いつも通り、今日も普通に過ぎていくな。」


そう言って、彼は窓に手をつけて空を見つめる。


何気ない街の空を見て、彼の心は複雑な思いでいっぱいだった。平和なはずなのに、なぜかずっと心の奥が痛み、苦しんでいる。


「くっ…!」彼は突然胸に走る痛みを堪えた。


そして、彼の頭にはかつて自分の街で経験した混乱と叫び、苦しみの記憶がよみがえった。


彼の瞳に映るのは、血で染まった両手のひら。気づけば、そのファストフード店が激しく燃え盛っていた。


炎は激しく燃え、子どもたちは泣き叫び、女性たちは悲鳴を上げ、男たちは焼けただれた体を抱えて呪いの言葉を吐いている。


彼らの鋭い視線は若者に向けられ、泣いている者もいれば睨みつける者もいた。


「なぜ助けてくれなかったんだ!」


「なぜ置いていったんだ!」


「神様はお前にすべてを託したのに、なぜ剣を使って俺たちを守ろうとしない!」


「なぜだ!」


「なぜなんだ!」


「なぜ!!!」


その光景を見て、彼はすぐに頭を伏せて叫んだ。


「あああ!!! ごめん! ごめん! ごめん! どうか許してくれ! 許してくれ!」


「えっ…大丈夫ですか?」不安そうな表情の店員が声をかけた。


「はっ!?」驚いた表情で彼は店員を見返した。


彼は混乱しながら額の冷や汗を拭い、周囲を見回したが、燃えている様子はどこにもなかった。


若者は鋭く、目の前に立っている店員の身体を観察したが、その清潔な肌には火傷の跡も切り傷も一切見当たらなかった。


すべてが「きれい」だった。


すべてが「普通」だった。


「……。」


「……くそ、まだ本当に忘れられていないようだ。」


その若者は、すべてがただの幻覚であったことに気づくと、今やファストフード店のすべての客と従業員が彼に視線を向けていることに気づいた。


皆に不快感を与えたことに気づいた彼は、すぐにミルクシェイクを手に取り、店を出た。


「君はそれを忘れるつもりか?」


突然、かつて座っていた場所から女性の柔らかい声が聞こえた。


驚いて若者は後ろを振り向いたが、そこには誰も座っていなかった。


「彼らへの仕返しはしないのか?」


その女性の声は再び聞こえ、今度はレストランの窓越しに見える交差点の真ん中に立っていることがわかった。


そこは多くの人が行き交う場所だった。


その女性は白いマントをまとい、頭にフードをかぶっていた。周囲の多くの人々は彼女に気づかず、彼女もまた通行人を気にする様子はなかった。


「君は…誰だ?」と若者は囁いた。


彼は、その声が距離とガラスの壁によって届かないことを理解しつつも、思わずその言葉を口に出した。


「おお、汝、神々の王の力を持つ者よ。」と女性は言い、その後、動き始めた車に隠れて姿を消した。


「まだ幻覚を見ているのか?」と青年はつぶやき、体をひるがえしてファストフード店の出口に向かって歩き始めた。


歩みを進めるたびに、白いマントの女性の言葉が頭の中で繰り返される。


そして、一歩ごとに、彼の心に二つの問いが浮かぶ。


「君はそれを忘れるつもりか?」


「彼らへの復讐をしないのか?」


そして、彼の信念とは真逆の一言が響く。


「おお、汝、神々の王の力を持つ者よ。」


気づけば、彼はもうファストフード店の出口の前に立っていた。


少しの間そこに立ち止まり、朱に染まった夕焼け空を見上げる。


ため息をつきながら、彼はつぶやいた。


「もしかして、あの女性は知っているのか…?」


心の平穏を取り戻したと思った青年は、再び家へ帰るために歩き出した。


しかし、彼の足が地面に触れる前に――


「ドカァァン!!」


突然、彼が見ていた交差点の地下から轟音が響いた。


「グロォォアァァ!!」


全身を毛で覆われたヤギの頭を持つ巨大なモンスターが地下から現れ、その圧倒的な姿を見せつけた。


たった一声の咆哮で、街の人々は驚き恐怖に駆られて逃げ出した。


かつては賑わい秩序だったその場所で、人々は財産や目的を忘れ、ただ逃げ惑う。


それでも、中には仲間や家族を助けようと必死に動く者たちもいた。


「な、何が起こっているんだ!?ここはグリーンゾーンのはずだろ!?どうしてこんな巨大なモンスターが現れたんだ!?」と青年は叫んだ。


「グロォォアァァ!!」


制御を失ったモンスターは、周囲のエリアを無差別に破壊し始めた。ヤギの頭を持つその怪物は、怒り狂いながら、目の前のアスファルトの破片や車を無造作に投げ飛ばした。


そして数秒のうちに、かつて「普通」だった場所は、希望と絶望が入り混じる地獄と化した。


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