第150話 エボニーという女

 シュテムプライム入植地護衛依頼4日目、ノエミに任せたケサディーヤテトラを入植地付近に浮遊させ、俺の乗ったトルティーヤダブルを分離、森のほうへ飛ばしてまた対空砲が動き出さないかと挑発を続けるが、まったく動きは無い、あれで最後だったのだろうか。


「殺人機械自体はちらほら居るんだがな……」

「ね~、たまに撃たれるから居るのはわかるけど~」

「数は徐々に減ってるっぽいのじゃ、徒歩でバトルドローンを引き連れて警戒をするのがメインになるかもなのじゃ」


 とにかく森というか原生林が多いんだよね。入植者達が降り立ったところは風が強くて見通しの良い平原で危険な物は上から排除した。


 モグラ型みたいな地中を掘ってくる奴が居たらやばいんだけど、そこは入植者達も地中センサーを張り巡らしていて問題無い。


 森のほうはアイリスがリジー8達を引き連れて巡回をしている。映像も電波が届く範囲なら受信していて、今もたまたま見つけたダンゴムシ型の殺人機械にエボニーが体当たりをしているところだ。


 あれ?エボニーが巡回に参加してる。


「は!?エボニーが殺人機械と素手でやりあってる!?」

「へ?うわ、デッカ~!?機械イノシシより大きいのに蹴っ飛ばしてふっ飛ばしちゃった!」

「というか、エボニー浮いてるのじゃ……」


 エボニーに羽は生えていない。なのになぜか浮いている。素手で箱型貨物自動車と同じ大きさである機械ダンゴムシをぶっ飛ばしてひっくり返し……横に真っ二つに引き裂いちゃった、素手で。


 鉄を引きちぎらないでほしい。そもそもハイエ◯スサイズを素手で弾き返すな。浮くな。


 さらに森の奥からクアッドコプター型ドローンが2機飛んできているのが映像に映った。


 だが、エボニーは右腕を上げ手を前に出すと光弾が6つ出現。


「<『魔法の矢!』>」


 ふぁんたじーっぽい掛け声と共に光弾が高速で飛んでいってドローンに1つずつ当たり叩き落としていた。残り4つの光弾は何かに当たる前に消失した。


「<魚獲りより楽勝だな>」

「<身体のほうに問題はございませんか?>」

「<なぁに、われは頑丈ぞ、われより太い木に押しつぶされたときもそのまま押し返してやったわ!>」

「<頑丈すぎます……>」


 サ◯ヤ人かよ。


「竜人は割と頑丈と聞くのじゃ。殴り合いになったらアイリスにも殴り勝つと思うのじゃ」

「それでもレーザーガンは無理だよね~」


 モニターに映した映像が軽く光った。森の奥からレーザーが飛んできてエボニーの頭に当たり、弾いた。なんでー?


「シールドベルトつけてるのか?」

「いや、あれシールドで弾いたときと違うのじゃ……」


 ガシガシと頭をかいたエボニーが撃たれた方向へ身体を向けると、またレーザーが飛んできたがおでこで弾いた。確かにデコ出しセミロングヘアーだけどさぁ。


「竜人ってあんなに頑丈なのか……」

「個人差はあるね~」

「諸説あるのじゃ」


 というかアイリス、外に出してるのにエボニーにシールドベルトつけさせていないのダメじゃない?もしかして頑丈さは事前に計測済みか?


「アイリス、エボニーにシールドベルトをつけさせてくれないか?見ていて怖い」

「<問題ございません、無意識に障壁魔術を発動しておりますので、簡単に剥がれるシールドベルトよりも遥かに安全でございます>」


 自前の肉体じゃなかったのか、無意識ってのも凄いが……いや、木に押しつぶされたのを押し返すのは自前の肉体か、素体が強い。


「もしかしてレーザーキャノンを素手で持つ勢が増えたのじゃ?」

「かもね~?サーラやリーサと比べるとちっちゃいから船内白兵戦もやりやすそ~」

「ダブルレーザーキャノンで動き出しても不思議じゃないな……」


▽▽▽


 4日目ともなると激しい戦闘は減ってきた。周囲の殺人機械は大方集めて壊しきったのだろう。


 リザードマンやゴブリン、オークといった蛮族、もしくは亜人と呼ぶモンスター連中は偵察に出した者が全部殺されて右往左往している様子である、次はどうくるやら。


 ただ、そういったモンスター連中は基本的に夜は眠る。だから俺達も全員ケサディーヤテトラに帰還してのんびりするのだ。


 俺達はL字型カウチを4つ角に配置したリビングにて、中央に敷いた厚手のラグの上には思い思いの場所でクッションを置き、ドラムテーブルやころすけ君を近くに配置して飲み物やおつまみを乗せ、皆でくつろいでいる。


 主な話題はその日によっていつも違うが、今日は新参者たるエボニーの話題一色だ。


「われの住んでいた場所か、海上だぞ、名は確か光合成プラント5号だったか……光合成プラントってどういう意味か皆はわかるか?」

「名前から察するに、巨大人工浮き島に土を持ち込み、海水淡水化装置なんかを使って森を育ててるあれなのじゃ?原始惑星って発展が進むとよくそういう箱物を作って自然保護団体を誤魔化すのじゃ」

「うむ?うむ……なるほど、確かにそうだったな、森はあったが島は大地に根付いていなかった。不思議と思うたこともあったが、浮き島か、そういう物だったか」

「ちょっと気になったんだが、その光合成プラントは何年前から存在してたかってわかるか?」


 あまり意味は無いけど何年前に殺人機械が活動してたかわかるかも。


「確か……200年の歴史があったはずである、古老衆がそういっておった、世界は機械に飲まれた、天光に気をつけろ……そんな感じで村は森の中や地下の……今思えばケサディーヤテトラの貨物室に似たようなところだったな、そういうところに隠れ住んでいたのだ」


 思ったよりも機械が弱っちくて拍子抜けではある、とエボニーは締めくくった。


 だが、200年って……短くないか?


 コンクリートで出来た高層ビルとかって数百年経っても意外と風化しないっていう話をどっかで見た気がするんだよな。でもこの辺りにそういう人工物は殺人機械の物以外は見たことがない。


 もちろんこの星がコンクリートよりも自然に還りやすい素材で建築物を作っていた可能性はあるし、入植している場所がそもそも人里離れた場所だっただけってパターンもあるが。


「天光に気をつけろ、ね。恒星のことかしら?不思議な忠告よね」

「確かにそうだね、ってことはエボニーはなるべく恒星の光に当たらないように生活してたってことかい?」

「村の衆が居たときは地下生活だったが、みんなおっちんでしまったあとはわれは普通に地上で生活しとったな、特に何もおきなんだ」


 サラーサとヴァシリーサの疑問に答えるが、なんだろうなぁ?よくわからん。


「ちかせいかつ!どんなかんじなの!?」

「ん?んー……ケサディーヤテトラより狭い通路で雑魚寝をするのだ。換気が出来る真下で夜間に取ってきた薪で火を炊いて料理して……不便だったのう、本当になんであんな生活を皆しておったのやら」

「普通に考えたら殺人機械に見つからないようにって感じだろうか、どれぐらいの人が居たんだ?」

「じいさまは教えてくれんかったなー、いっぱい居るとはいってたが当時はわれも子供だったし数える気にもなれんかったし……最低でも80人は居たはずだが、集落は全部で20個あったな」


 集落一つに50人住んでたとしたら1,000人かぁ。結構デカい浮き島だな……。


「ちょっと話しづらいことだとは思うのですが、流行り病の症状をお聞かせ出来ますでしょうか、我々の総合ワクチンが効くとは思いますが、念の為確認を取っておきたいです」

「ん?んーわれは結局罹らんかったからなぁ。熱が出て、下痢、あとは肺炎だったか、われのような竜人は当時はもうおらんでな、ウォーカー、獣人、エルフ、ドワーフ、皆死んだわ」

「よくある風邪系の流行り病って感じがするな……一番厄介なやつだ」


 クソ強インフルエンザみたいなのが閉鎖環境で流行っちまったんだな。地下暮らしともなるとさぞ感染しやすかっただろう。そしてエボニーは免疫も強かったと。

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