妄想たち

第13話 確率操作・確定結果

 皆さんは確率操作や確定結果のようなとある事象が起こる確率を増加させる方式の魔法やら能力について考えたことがあるだろうか。ある人もない人も、それについて考えてみよう。


 もし多世界解釈が正しいとしたならばそれぞれの世界線には存在量がある。で、観測すると分岐しそのどれかが選ばれる。だがそれだと考えるのが面倒臭い。


 ここでは世界線は事前にすべての量子状態に対し用意されており物理法則がそれぞれの存在量を削りそれぞれの存在量の割合が結果となり、また分岐するのではなく観測者が観測することによりどの世界線にいるのか判明することにより量子的効果が生まれるものとする。


 すげえ簡単に言うと、多世界解釈では観測で世界線が分岐するとされている。でもそれは時間とともに作られていないかもしれない。すでに生成された分岐を選んでいたとしても、さらに言えば道があって全体の太さが変わらずに境界が引かれているような感じに分岐されていても変わらんやろってことだ。


 で、そうすると道の端からの距離をiとしたら、それを特定できればその先の世界線を完全に予測できることになる。つまり、そこから進んだ道の行き先というふうに定量化すれば座標系みたいなことができる。我々はその座標系のどこにいるか分からないから量子的効果が発生しているにすぎない。だがしかしこれらは数式で書くと等価である。ここ、重要。


 さて、この時に4次元空間すなわち時間と空間を破壊し他の並行世界には影響を与えないような爆弾を考える。この場合破壊された時空は観測が不可能になり実質的に無視できる。ただしこれで破壊するのはあくまでも時空であり、観測者を消し飛ばしてあらゆる時間、場所から観測不可にするだけだ。故にMWIのユニタリー性は失われない。例えるならば道に光学迷彩をつけるようなものだ。


 ではある事象が起こる確率を増加させたければどうしたらいいだろうか。それはある事象が発生しなかった時空を爆破すれば爆弾をセットしたまたはそれが可能になった時点以降の時空間たちの中で爆発しなかったものだけが残る。


 そのため、結果的に観測される確率は増加したようにみえる。ただしこれはあくまでも見かけ上の話であるが我々観測者にとっては問題ない。


 ようは、「ここに10個のみかんがあり、その内5個は腐っている。また腐っているみかんの内4個は君からは見えない。さて、君が腐ったみかんを食べる確率は?」ということである。


 または神から見たら一定、観測者から見た見かけの存在量は変わるということだ。この世界にはある条件付き確率が必ず潜んでおり、その条件は「観測できる」ことだ。観測者と神の視点の違いはそこだ。


 そしてこのように考えたとき、確率操作には2パターンあると推測できる。事前破壊と事後破壊だ。事前破壊はある時間から信管設定を行い爆弾を未来に送りつけたり埋めたりして未来で観測、爆破する方式だ。そして事後破壊は術者が起爆スイッチを握り事象が起こらなかったことを確認してから爆破する方式だ。


 基本的によくアニメやらなんやらで見られるのは事前破壊方式と思われる。なぜなら事後破壊方式は発動しようと思った術者はすでにその世界線が吹き飛んでおりおらず、また能動的に発動しているように見受けられるからだ。


 だが運が向上するとかそういうものは事後破壊方式かもしれない。なぜなら本人に自覚がなさそうだからだ。基本的に事後破壊と事前破壊は観測できる術者にその気があるかで判断できる。


 また基本的に事後破壊方式の方が事前破壊方式より成功率が高い。なぜなら事前破壊方式はあくまで信管設定によって起爆するものであり、信管が無効化されたり信管が不具合を起こしたら起爆せずそのまま不発で残ってしまうからだ。




 さて、もしこんなバケモノみたいな能力を持った敵と対峙したらどうするべきだろうか。一応これも物理法則、対処法はある。


 まず事前破壊方式の場合、能力が発動された、つまり未来に向け爆弾がセットされた時点で行える対策は限られている。が、これはある意味未来で敵に勝った自分に爆弾が投下されたものと考えることができるため2つの手段が考えられる。ハードキルとソフトキルだ。


 ハードキルは爆弾が起爆する前にどうにか破壊し防御する方法だ。だがこの方法にはいささか困難が伴う。なにせその時間にいる必要性がないのだ。なのでたとえば強力な重力場の中にいて時間の流れが極めて遅かったり、そもそも時間を飛び越えても問題ないことになる。


 それを迎撃するにはこちらも時間を飛び越えるか飛び越え出現した直後起爆するまでのわずかな時間の間に破壊しないといけない。それは極めて困難であり、かなりの技術力を必要とする。しかしほぼ確実に防御できる。


 ソフトキルは信管を起爆させないことによって防御をおこなう。たとえば時間の流れを遅らせて起爆できないようにしたり起爆のもととなる設定された刺激が入ってこないように隔離したり、ブラックホールなどの影響が外に漏れないようなところにでもぶち込んだり、とにかく起爆させないことにより防御する。


 ただしこの方法は失敗率が高く、また起爆を阻止したからといってすぐに爆弾を処理しないといつかは起爆するため意味がなくなる。起爆を防いだら直ちに処理する必要があるのも欠点だ。


 事後破壊方式の場合はとにかく装置を破壊することに全力を出さなければならない。しかし敵も馬鹿じゃないため破壊されそうになったら起爆するだろう。そのため一度起動してしまったらそれの解除は極めて困難となる。まだ不意打ちできる初期の間に破壊しよう。できなかったら諦めろ。



 ただしそれぞれには致命的な欠点がある。信管や機器の故障率が見かけ上凄まじい高さになることだ。たとえば、その爆弾のスイッチをなんとなぁく押したとしよう。この爆弾は見かけ上必ず故障する。なぜなら起爆に成功した世界線は観測不可だからだ。この場合信管や術者の選択によって起爆しない世界線が明確に存在するからこそ大丈夫だが、やはり見かけ上の故障率はかなり上昇する。


 この方式で、確率操作を行う前の確率をP(A)、故障率をP(B)とすると見かけ上の故障率はP(B)/P(A)+P(B)で求められる。もし宝くじを0.01%の故障率の爆弾で当てたいとしても、この計算式より(1/10000)/(1/10000000)+(1/10000)=1000/1+1000=1000/1001≒99.9%の確率で故障してしまう。もっとも、ただ宝くじに当たるよりかは幾分マシな確率ではあるが。そのため信管や爆弾にはかなりの精度が求められるのである。

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