使い捨ての自爆スケルトンに転生した~やがて全てを捻じ伏せる嫉妬の魔王~

マオウスノウ

第一章 自爆のスケルトン

第1話 気付いたら転生

「クックック!!アーッハッハッハッハ!!!!ついに我はたどり着いたぞ!ネクロマンスの力に!」


暗い洞窟の奥。薄暗い松明がボンヤリと照らす部屋の中で、数多の書物に囲まれた男が一人、狂ったように歓喜していた。

男の目の前には人の死体が一つ、しかし明らかに異常だといえるのは、それの目が怪しく輝いたかと思えば、ひとりでに立ち上がったことだ。

その様子を見て更に男の笑い声は大きくなり、それに比例するようにして、


「これから始まるのだ!魔王デルク・マーハルガイトの物語が!」


気付けば数百にまで増えていた骸骨の中、男の笑い声だけがこだましていったのだった______。


☆☆☆


(え?ここどこ?)


突然真っ暗闇の中意識を覚ました俺は、慌てて周囲を確認しようとする。だが、まるで鉛に使ったように体は自由を効かず、全身が地面に埋まったかのような閉塞感を感じる。このままでは息ができないと思おうとして____


(あれ?俺、息してない?)


自分が呼吸を行っていないことに気付いた。それどころか、集中してみても自分の鼓動の音や振動が感じ取れない。というか、さっきから熱いとか寒いとかの感覚がないのだ。何かに触っていることはわかるのに、そこからエネルギーを感じないというか……………。


試しに体を動かそうとすると___


(うーん、やっぱりダメか……)


やはり体は動かず、視点は暗いままだ。

なぜこんなことになっているのか全く分からないが、なぜだかこんなにも精神が摩耗しそうな空間にいるというのに孤独感や強迫観念を一切感じないので、気ままにいろいろ考えてみる。


(確か、俺ってさっきまで高校からの帰り道を歩いていたはず……そうそう、横断歩道の前にたどり着いたとき、赤信号なのに全く止まる気配がないトラックが来て、目の前を歩いている女の子が心配になって、それで………)


_______それで、女の子をかばってトラックにひかれた。


(うわ、マジか……ってことはここって死後の世界?感情っぽいもの感じないのはそういうこと?でもこの暗さと閉塞感は地獄っぽいなぁ……でも苦しみは感じないし地獄とか天国とかそういう区分が存在しない感じなのかな……)


うんうんと頭を唸らせているが、生憎と一向に答えは出ない。せめて、周囲の状況ぐらいは感じられないとなぁ……。


(って、あれ?これ、手足動かせる?)


試しに全力で上を押してみたら、なんと天井が動いた。そのまま上に押し上げ続け、薄ぼんやりとした明かりがさしこんだのを確認すると……


(これ、棺桶じゃないか…!?)


なんと、自分が入っていたのは棺桶だったのだ。もしや、死後の世界ではなく自分は悪霊かなにかとして蘇ってしまったのだろうか?

もしや、自分の手足は実は透けていたりして……。


チラッと、自分の体を確認する。


(お、俺の体が、骨になってるぅぅぅぅーーー!?)


オイオイオイ、おかしいだろ。なんで人助けしたのにモンスターになってるんだよ?俺別に未練とか後悔とかないよ?いやさ、確かにあれこれしたかったなーとか思うことはあるけどさ、でも自分で選んだ死に方だし……悪霊になるような怨念とか持ってたイメージないんだけど……いや、実は死後の世界では悪霊になって生活する可能性もあるか?そうなると、俺以外にも悪霊が存在するかを確かめたいな……。


そんなことを考えていると、ちょうど俺の隣に安置されていた棺桶が一人でに動き、そして_______



俺と全く同じ姿をした、骸骨がはい出してきた。



(マジで死後の世界だーーーー!!??)


これで半ば、俺の説が立証されることになる。


(よ、よし!とりあえずどういう状況か聞いてみよう!)


相手も俺と同じく混乱の真っただ中である可能性もあるが、それでもコミュニケーションをとることは重要だ。この状況下では、それ以外にすることもないしな。


(よ、よろし___ぐぐ、声が出ない?)


そういえば、さっきから驚いた時にも顎が動くだけで声が出ることはなかった。どうやら、俺の体は本当に骨だけで筋肉は一切存在しないらしい。とうことは、言葉ではなくジェスチャーでどうにか意思疎通を図るしかないわけだが……。


(あ、あれ?通じてない?)


仮に目の前に挙動不審に動きまくる骨がいたりしたらびっくりするようなリアクションをとると思うのだが、先ほどから目の前の骸骨は全く動く様子がない。数分ほど眺めていると、唐突に目に光がともるとともに、棺桶の安置所から出て行った。


(これはもしや、自我がない?)


まるで機械化のような動きを見て、そう思った。となると、骸骨としてはあのように行動するのが正しいのかもしれない。ここにいても何かが変わるような出来事は起らないだろうし、ついて行ってみるのが吉か。


そう思い、慌てて骸骨の後をついていく。


歩いている通路は両サイドに大量の棺桶を安置した部屋の真ん中に続いており、終わりが見えない。

数百か、あるいは数千か____それだけの棺桶を見送っただろうか、30分ほど歩いていくと___大きな広間へと行きついた。


そこには俺のような骸骨が大群をなして整列しており、その様は訓練された兵士を彷彿とさせた。目の前の骸骨が最後尾の方へ歩いていくのを見て、ボケっとしていた頭を急いで整理しそのあとをついていく。


そして、整列が完了した。


その瞬間、頭に直接声が響く。


『ついに、ついにこの時が来た!付近の村や町を襲い、数を減らしながらではあるが軍の戦力を整え、我自身の魔力も磨き続け___そしてようやく、2万の兵を集めることに成功した!』


その声はまるで絶対的な支配者であるかのように感じられた。この声に逆らってはならない、この声に従うことが幸せだ……そんな風に言われているような気がした。


『我がネクロマンスの秘術を用いれば、2万の軍勢をそろえれば主要都市の奪還は可能……そしてゆくゆくはこの国をも支配し、世界征服を成し遂げるのだ……!!』


どうやら男の目的は世界征服らしい。ずいぶんと壮大だな。てか、さっきまでの地獄とか死後の世界とか考えてた俺の苦労は一体なんだったんだよ……これ明らかに禁忌犯して復活させられてるだけだろ……。


いやいや待て待て、禁忌犯してるとかそもそも骨がひとりでに動く時点でありえない。え?俺が知らないだけでネクロマンサーとかごろごろいる世界だったの?もしそうだとするならすげーもったいない気分だわ……俺も超能力とかほしかったな~。


それか異世界の可能性もあるのか。そういうラノベとかは大好きでよく読んでたから、現時点でもいくつかルートは考えられるぞ。ただ、骸骨………スケルトン風情が、チートスキルとか持ってるイメージはわかないなぁ……どっちかっていうと地道にレベルを上げて進化したり、裏切られた復讐でアンデットになったりっていうのはわかるんだが……ちょっと試しにステータスオープンって言ってみるか。


(ステータスオープン)


そう念じると、まさかのまさか、目の前に青白い画面が現れた。


(すげぇ!ここ地球じゃなくて異世界だったのか!やべーめっちゃテンション上がる!)


まあスケルトンだから人間と敵対する感じだとは思うけどね。ラノベでも人外転生系で人間に受け入れられるのが難しいっていうのは基本だし、魔物になったせいか感情に振り回されなくなってるから、この世界についていろいろと知ったうえで関わるのが難しいと感じたら、スローライフとかするのも面白そうだなぁ。あ、俺今から世界征服しに行くから無理だわ。


とりあえずステータスを確認してみる。


種族:スケルトンLv.1 

スキル『自爆』


なるほど、能力値とかは表記されないパターンね。にしても自爆かぁ……これもしかして俺以外のスケルトンにも全員付与されてるんじゃね?Lv.1だしスケルトンだし量産できてるしで強くないだろうし、爆弾として扱えるならいい戦力になるもんなぁ……。こっちの世界に来ても死ぬ前提なのかよ……。


『さぁ行くぞ我が僕たちよ!これは大義の戦である!』


あ、さっそく出発なのね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る