第27話 代案

 荷馬車を守った私は牧場に戻った。そこでスピリットの帰りを待つ。このハルタ村にも王都の小麦不足の情報が入ってくる。王都に行った村の人の話では庶民はパンどころか、食うものにも困っているようだ。王様にこの惨状を訴えようと人々は宮殿の前に座り込んでいるという。そして町の中では不満を貯めた人たちによって暴動の一歩手前まで来ている・・・。小麦問題がこの国に大きな危機を迎えている。


 そんなある日、ハルタ村の村長がコロ牧場にやって来た。代々、この村で村長を務めるアックス家の出だ。村長は私が追放の身であったので、あまり関わり合いにならないようにしていたようだ。だが今回は特別なことであり、面談に来たのだ。

 私が外に出て出迎えると、村長は書状をうやうやしく開いて見せた。


「もったいなくも王様の書状である。今朝、村に届けられた」


 村長はそう説明して読み上げる。私は礼に乗っ取り、頭を下げて聞いた。


「・・・この度、小麦の不作により王都の民が飢饉に見舞われている。心ある者は小麦、または穀物を王都に運び、こららの民を救え。功績のあったものに栄誉を与える。これには身分や罪人を問わない。追放処分の者であってもよい・・・」


 王様は誰でもいいから食料を王都にもってこいと命令している。これには従わねばならない。だが村の方もギリギリのはずだ。だから村長は村人から集めようとしたのだろう。それはコロ牧場も例外ではない。


「王様のご命令だ。小麦を出すように。この牧場の割り当ては・・・」


 村長は牧場に備蓄している小麦を出させようとしているのだ。だがこちらで食う分だけしかない。


「私のところも小麦は不作でした。とても供出できる量はございません」


 私は断るしかなかった。すると村長は烈火のごとく怒りだした。


「追放の分際で何を言う! ここは従うのだ! いいな! あるだけ出すのだ! 断ればさらにお咎めを受けるぞ! 今度来るまでに用意をせよ! また来る!」


 村長はそう言い捨てて帰って行った。村長は必死なのだろう。王様の命令が出たからには何としても小麦を集めねばならないと・・・。だが私は反発した。


「何よ! 偉そうに! 村長は小麦を出して王様から栄誉でも貰うつもり?」


 そうは言ってみたが、ここは従うしかない。しかし・・・


(小麦は無事に王都に届くのだろうか?)


 今までと同じように盗賊団に襲われる可能性がある。そうなれば王都の民の飢餓がさらに広がることになる。魔法剣士で阻止するにも限りがある・・・。


 とにかく穀物倉庫を見てみた。小麦のところはがらんとしている。割り当ての分を出すと残りが心もとない。だがコメの袋は大量に積み重ねられている。豊作だったからだ。食堂に卸しても大量に余る。


「このコメさえあれば・・・あっ! そうだ!」


 私はひらめいた。一時しのぎだが、これで王都の人たちを助けられるはずだ。



 私はあるものを用意してから、すぐに村役場に向かった。村長に直談判するためだ。


「村長に会わせて!」


 いきなり訪ねて行ったが、元公爵令嬢であるからすぐに村長室に通された。


「失礼!」


 村長室ではで机の上で村長が暗い顔をしてため息をついていた。


「何の用ですかな?」

「小麦は集まっていないようですね」

「余計なお世話です。何とか集めます!」


 村長はそう言い張るが、思ったほど小麦が集まっていないようだ。


「この村に小麦はあまりないはずです。代わりの案をお持ちしました」

「代わりの案とは?」

「小麦の代わりにコメを送るのです」


 すると村長はうすら笑いを浮かべた。


「穀物には違いありませんが、そんな得体のしれないものを食う者はいないでしょう」


 世間知らずなお嬢さんは黙っていてくれとも言いたげだった。だが村長はご飯を食べたことがないはず。そのうまさを知らないのだ。


「ではこれをどうぞ!」


 私は持ってきた包みを開いた。これには塩を振ったご飯を握って丸くしたものが入っている。カスケさんが言うには「おにぎり」というものだそうだ。


「これは?」

「コメを炊いて握ったものです。どうか試してください。これを食べてまずかったらあきらめて帰ります」

「こんなものを・・・」


 村長は嫌々ながら口に運んだ。すると村長の顔つきが変わった。


「う、うまい!」

「そうでしょう。コメはおいしいのです。これなら王都に送っても問題ないのでは?」

「確かに・・・」


 村長は同意したが引っかかる点もあるようだ。


「小麦ならパン職人もおりましょうが、コメとなると・・・。王都ではその扱いがわからないかもしれない」

「だから私たちが王都に行きます。そこで調理したコメを食べてもらうのです。村の人にも協力してもらえればうれしいですけど・・・」


 私は村長に計画を話した。これできっとうまくいくはずだと・・・。


「わかりました。荷馬車や必要な物も村で準備しましょう。村の人たちに協力してくれるように声をかけましょう」


 村長は私の計画に乗ってくれるようだ。こうして私の思いついた計画は進み始めた。

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