一人が好きな恥ずかしがり屋で寂しがり屋の冒険者

喜友 方山

第1話 やぁ、いらっしゃい

やあ、いらっしゃい。


【ハウスバー@セニョール・セニョリータ】へようこそ。


まずは、掛けて落ち着いてほしい。

そうなんだ、今、君が思っていることは正しい。

タイトルとはまったくの無関係なんだ。

済まない、ほんの出来心なんだ。


よくここがわかったね。

来たくて来たんじゃないって?

久しぶりなのに、連れないこと言わないでくれよ。

でもね。

君がここへ来ることは、必然だったんだ。

不思議に思うのは、無理もない。じつはね。

新しいお店の特別な招待状を、君にこっそり送ってあったからさ。


もらってない? 見える形で送ったわけじゃないんだ。

君は心が命ずるままに、この店の扉を叩いた。

どうか今の気持ちを、忘れないでほしい。

そう、今なんだ。

こうして、ここで時間を取らせるのは、済まないと思う。

でも、君は気がついているはずさ。

言いしれぬ高揚感、ようやく出会えたという安堵感、ここにいていいんだっていう安心感。


君だって、恋をしたときのことを覚えているだろ?

胸が高鳴り、喉は渇き、手足は痺れて、呼吸が荒れて、汗が出なくなる。

不整脈だなんて、バカな話さ。


恋、それは恋だよ。


さ、座ってくれよ。

最初の一杯は、奢らせてほしい。

友情に乾杯しようじゃないか。


口の中のキズにお酒が染みる?

いいね、カッコイイ♪ 


言われてみれば、頬に痣が残ってるね。

名誉の負傷だ。隠す必要なんて無いのさ。誇っていい。


気になってたけど、目が真っ赤じゃないか。

朝まで泣いてたのかい。

はは、煙が目に滲みただけ?

禁煙のこの場所でかい?

ああ、わかったわかった、そういうことにしておこう。


そうだな⋯⋯また聴きたくなったのかも知れない。

そう、またなんだ、君が冒険に出た最初の話だ。

大袈裟だって?

あの頃を思えば、大冒険さ。卑下することはない。


最初は⋯⋯ああ、まぁ確かに迷うね。

人見知りの君は、このバーに顔を出すだけで精一杯だったはずだ。

それが、どうだろう。君が一人でギルドへ登録するなんて、もう新しい生き方のプロローグだ。


じゃあ聞かせてくれないか、君の大冒険活劇談を。

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