第13話  父様の火竜を頂き

「こら!! エリサ!! 待て!」


「「嫌よ~~!!」」


 私は、風の精霊を操って飛びながら、父様から逃げていた。


「もう、魔法鍛冶はやらないんでしょ?火竜の精はいらないでしょう?」


「それとこれとは、話が違う!! 火竜は危険なんだぞ!! 返せ!!」


「ちゃんと、挨拶して契約したわよ」


「駄目だ!! これ以上、そなたに精霊は持たせないとミジア叔母様に言われているのだ!! ましてや、火竜なぞ」


 父様は、二年前まで優秀な魔法鍛冶師だった。

 だが、不幸な作業場での事故により、大ケガを負った。

 父様の持っていた魔法の力で、傷は治癒したが魔力は完全に失われてしまった。以後は騎士として、騎士団の創設の携わっていたらしい。つい、先日事故以来初めて谷へ帰還した。


 父様の叔母のミジアに預けていた私は、父様の突然の「家族ごっこ」宣言に驚い。父親のフリ。娘のフリ、母様

 まで巻き込んでやることかしら…….?


 魔法使いでなくなった父様には、強力な精霊が二匹いた。火竜の精と風の精霊だ。風の精霊は、私の場合もう風の騎士がいるので、要らないのだ。だから、火の精霊を狙ってやった。

 私が、挨拶したらすぐに名前を教えてきたわ。そうね、父様がよそ事をしている間によ。


「リカルド、父様を振り切るわよ」


 <了解>


 エリサは、騎士の格好をした風の精霊のに更なる風を吹かせて、上空に舞い上がって行った。


 薄茶色の髪と、茶水晶色の瞳。髪の緩いウエーブが父と似ていた。

 金髪で暗緑色の瞳の母とは、似たところは一つもないのだ。

 母は、「お前が父の子だという証だと」と言うが、


 <おっと、此処ここまでだ。これ以上は結界に触っちまう>


 半透明のリカルドが、エリサの前に廻りこんで、それ以上エリサが進まないように止めた。


「また、結界なの!触ってもいけないんでしょう?」


 <俺にもよく知らされていないんだ。ただ……エリサに外の世界は早いんだと>


「でも、見てみたいわ。母様が行った銀の森へ」


 <俺の生まれた所だ! 神秘的な処だぜ……リドムの葉が銀色に年中輝いてる>


「ここは……狭すぎるわ」


 寂しそうに話すエリサに、風の騎士が言った。


 <戻ろうぜ……レフに怒られろよ、レフを祝福をしてた火竜と契約しちまったんだから……>


「分かったわ」

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