ハレオト♪ 第15話 君ともう一度

「えーん、めいちゃん、このコード難しいよ~! 指つる~!」


 スタジオの中に、まほの明るい声が響く。

 ギターを抱えたまま、まほは指をぶんぶん振って、めいの方に助けを求めていた。


「だからさっき教えたじゃん、親指で握っちゃうと届かなくなるんだって」

「ええー、でも親指のクセなんだもん……やだ、ギターさんが私を拒絶してる~!」

「いや、それはまほが力入りすぎなだけ」


 しゅあが笑いながら突っ込みを入れる。


 3人だけのスタジオ。明るくて、どこかほんわかした空気が漂っていた。

 でもそこに、りえの姿はなかった。


「……りえちゃん、今日も来なかったね」


 ふと、まほがポツリとつぶやくと、めいもチューニングをしていた手を止めた。


「うん……たまのこと、すごく責任感じてるんだと思う」


 しゅあも小さく頷いた。

「自分が誘ったから、って。気にするなって言っても、そう簡単には切り替えられないよね……」


「でも……」

 まほは、ギターをぎゅっと抱きしめた。

「私は、また5人で演奏したいよ。たまちゃんが頑張ってるの、知ってるから。だから、りえちゃんにも戻ってきてほしい……」


 数日後。曇り空の下、病院の玄関前。


 たまが、松葉杖を使って立っていた。


「ひゃ~、なんとか歩けるけど、まだリズム取りづらいなぁ」


 まほ、しゅあ、めいが彼女を迎えに来ていた。


「たまちゃん、無理しないでね!」

「うん、でも今日のスタジオ、出たいんだ。みんなの音、聴きたくて!」


 その言葉に、まほたちは微笑みながら頷いた。


 ――しかし、そのスタジオに、りえの姿はまだなかった。


「そっかー、りえちゃん、今日も来てないんだ……」


 たまが松葉杖を横に置きながら言った。


「実は……この前、一人でお見舞いに来てくれてね……」

「“私が誘ったばかりにごめん”って、謝られちゃって」


 まほが眉をひそめた。


「そんなの……それでたまちゃん、なんて答えたの?」


「うん。誘ってくれてありがとうって言ったよ。ほんとにそう思ってるし……でも、まだ気にしてるのかなって……」


 たまちゃんの声は、少しだけ寂しそうだった。


「このあと、みんなでりえのところに行ってみようか? もしかしたら、助けが必要なのかも」


 しゅあが提案した。


「でも……どうだろう、みんなで押しかけて大丈夫かな? りえちゃん、あんまり人が多いと話しづらいかも……」


 まほが心配そうに言った。


「じゃあ……私、行ってみようかな」めいが静かに言った。


たまがそっと頷いた。「私も、もう一度ちゃんと伝えたい。けど……今日はちょっと体力が……」


「じゃあ、わたしとめいちゃんで行こうか」まほが手を挙げる。


「しゅあは……?」


「うん、私は二人に任せるよ。その方がうまく話せると思うから」


その空気に、自然と「うん」と全員が頷いた。


 その日の夕方、りえに連絡を取り、まほとめい、りえの3人でりえの家の近くの公園で話すことにした。


二人が到着すると、すでにりえがブランコに座って待っていた。


「りえちゃん!」


まほが声を掛けると、りえが力なくまほたちの方を見ながら立ち上がった。


「まほちゃん・・・」


「りえちゃん、今日の練習にたまちゃん来てて、早く5人でやりたいねって話してたんだよ?」


「たまちゃん、自分のせいでりえちゃん来なくなっちゃったって心配してたよ」


「まほちゃん、ちがうの」


りえは顔を伏せた。


「たまちゃんのことも、すごく責任感じて……でも、話して。気持ち伝わって……私も頑張ろうって、思ったんだけど……」


めいは静かに二人の様子を見守っていた。


「わたし、高校のときに仲間はずれっていうか、いじめに近いことをされていて、その子達にこの前偶然合って色々言われちゃって・・・」

「高校の時のトラウマっていうか、私何も言えなくて、怖くて・・・私がNGMにいることで、みんなに迷惑とかかけちゃったらどうしようって……」


「そした、頭が真っ白になっちゃって、胸の奥がぞわぞわって・・・」


「ベース弾こうとすると手が震えるの……」


涙をこらえながら、りえは言った。


「りえちゃん…」


まほも何も言えなくなり、だまってりえに寄り添った。


どれくらい時間がたっただろうかめいが静か口を開いた。


「りえ……。責任感、強すぎだよ」


「私達にはりえが必要、5人をまとめられるのはりえしかいないんだから」

「あのね、私も実はしゅあと出会う前、いじめに合ってたんだ」


りえとまほが驚いたように顔を上げる。


「ギターばっかりやってて、私も不器用だから、ギター隠されちゃって……」

「その時、夜遅くまで一緒に探してくれたのがしゅあだったんだ、私しゅあにもひどいことしちゃってたのに……」

「その時友達っていいなって、あの時しゅあがそばにいてくれたから、強くなれたし、毎日楽しくなった」


「今りえには私達がいるよ、りえになにかあったら絶対、私達が守るよ。NGMはあったかくてすごく楽しいバンドなの」

「それはりえが作ったバンドだから、りえがいなかったら今の5人は集まらなかったんだから」

「だから絶対、自信持ってほしいし、みんなそれぞれ思いはあると思うけど、バンド組むのりえの夢だったんでしょ?りえの夢今、一緒に見てるんだよ?」


りえの目からは涙が溢れ、止めどとなく涙が出てきた。

嗚咽が漏れた。りえはたまの気持ち、めいの言葉がこれでもかと胸に響いていた。


その時めいが突然りえを抱きしめた。


りえがはっとなる。


「……大丈夫。みんなで頑張ろう。その先の夢、私たちも見たい。だから、もう一度……」


りえは声を上げて泣いた、自分の夢、仲間たちの思いこらきれない感情が溢れてきた。


めいも熱くなったのか涙が出てきた。


その時「……うわぁぁあああああんっ!!感動だよ~、二人のドラマ感動だよ~」


といってりえより声を上げて泣いてる人がいた。


「ちょ、ちょっとまほ、なんであんたが一番泣いてるんだよ!」

「だってぇぇぇ、ゆうじょうがぁぁぁ~~~!!」といって顔をぐちゃぐちゃにする。


そんなまほを見て、りえに笑顔が戻る。

めいも笑った、まほも泣きながら笑った


「……私……ふたりともありがとう……ライブまで後2回練習あったっけ?次のスタジオ絶対行くよ」

「またせてごめんね」


めいは静かに頷いた


明日からまた、5人で前に進んでいく。

小さな夜風が、3人の肩をそっと撫でていった。

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