ハレオト♪ 第9話 ライブコンテスト!

まほは部屋でギターの練習をしていた。

指がじんじんと痛むのを感じながらも、りえやたまに追いつくため、ひたむきに弦を押さえる。


(痛いけど……頑張るしかないっ)


あれから2ヶ月。

課題曲は、つっかえながらも何となく1曲通して弾けるようになっていた。


そんなとき――


「まほちゃん、ちょっと見てこれ!」


お母さんが、嬉しそうな顔で部屋に飛び込んできた。

手には一枚のチラシを持っている。


「ちょっとー、ノックしてよー! ん?なにそれ?」


まほはギターを中断し、チラシを受け取る。


そこにはこう書かれていた。


『ヤマムラ楽器主催 ライブコンテスト!

グランプリにはスタジオ代1年無料+賞金授与!』


「これ、近くの楽器店の店長が教えてくれたのよ。

バンド、組んでるんでしょ? 出てみたら?」


「ライブコンテスト……面白そう!」


まほの目がキラキラと輝いた。


「バンドで出たらきっと楽しいわよ。賞金もあるし、挑戦してみる価値あると思うわ」


「ありがとう、お母さん! 今度の練習のとき、みんなに相談してみる!」


 * * *


次の土曜日、スタジオのロビー。

まほ・りえ・たまの3人は練習を終え、ペットボトルのドリンクを手に一息ついていた。


スタジオ内は薄暗い蛍光灯に照らされ、壁には過去のライブポスターがぎっしり貼られている。

年季の入ったソファに腰かけ、練習の余韻に浸る3人。


「……あ、そうだ!」


まほが急に思い出したように声を上げ、カバンの中からチラシを取り出す。


「実は、こんなのあるんだけど、どうかな?」


そう言って、2人の前にチラシを差し出す。


「ライブコンテスト?」

りえとたまが同時に声を上げた。


「面白そうですね!」

たまがチラシを手に取り、食い入るように見つめる。


「再来月の中旬開催……エントリーは今月中……!

うわ、グランプリはスタジオ代1年無料だって!」


目を輝かせながら、たまが読み上げる。


「でもボーカルとかってどうしようか……私ボーカルは無理かも…まほちゃん歌える?」


りえが少し申し訳なさそうに、まほを見た。


「わ、私!? ムリムリムリ! ギター弾くだけでいっぱいこんがらがっちゃうよ〜!」


まほは顔を赤らめ、慌てて手を振る。


「そっか……そういえば、うちってボーカルいなかったんだよね」


「うん、楽器のことに気を取られてて、すっかり忘れてた……」


「ギター弾きながら歌うとか、ハードル高すぎて……」


「そ、そうだよね……じゃあ、またメンバー募集してみようか?

ボーカルなら比較的見つけやすいかも!」


りえがスマホを取り出し、メンバー募集サイトの画面を開いた。


 * * *


と、そのとき。


スタジオのロビー奥から、ふたりの女の子の話し声が聞こえてきた。


「めい、なかなかメンバー見つからないね……やっぱドラムやベースって少ないのかなぁ……」


話していたのは、外ハネ気味の肩までのボブヘアに赤いTシャツ、短めのキュロットパンツを穿いた女の子。

活発そうな雰囲気で、少し残念そうに肩を落としていた。


彼女の名前は「しゅあ」。

その隣にいた、青いメッシュの入ったショートボブで黒のラバーソールに黒のスカートを履いたクールな雰囲気の女の子が「めい」だった。


ふたりはボーカルとギターでユニットを組んでいて、まほたちと同じスタジオでよく練習していた。

実はふたりも、同じライブコンテストに出場するために、ドラムとベースを探していたのだった。


「しゅあ、諦めないで。きっと見つかる。神を信じる者は救われる」


めいは静かな口調でそう言う。


「でも、もう時間ないし無理じゃない? それに私、神様は信じてないし。無宗教ですっ!」


しゅあが少しムッとした顔で言うと、めいが淡々と返した。


「でもこの前、神社に初詣行ってたよね」


「うっ……!」


思わず言葉を詰まらせ、ほっぺをふくらませるしゅあ。


そのやりとりを、まほとたまは少し離れた場所から耳にしていた。


「ねえ、まほちゃん。あの二人……」


たまがまほに小声で話しかける。


「うん、無宗教みたいだね!」


「ね!でも、もう一人の子は神様を信じてるみたいだよ!って、そこじゃなくてっ!」


たまが軽くツッコミを入れる。


「もしかして、バンドメンバー探してるんじゃない?」


たまが指差す先――

しゅあとめいが話しているテーブルの上には、「ヤマムラ楽器主催ライブコンテスト」のチラシが置かれていた。


「こ、これは……! たまちゃん、神様じゃん!?」


「見た感じ同い年くらいだし……もしよかったら、一緒に出られないかな?」


少しの沈黙のあと、まほは「よし、行ってくる!」と意を決して立ち上がった。


「えっ、急に行くの!?」

たまとりえが驚いた様子で顔を見合わせ、すぐに後を追いかける。


声をかける前に、リーダーらしくりえもまほの隣に並んで、一緒に話しかける。


「こんにちは。さっきの話、少し聞こえちゃったんですけど……神様……じゃなくて、ドラムとベースを探してるんですか?」


まほが話しかけると、しゅあが驚いた表情で振り返った。


「え?え?」とびっくりするしゅあ。


「え? あ、うん。そうだけど……あなたたちは?」


「私たちは3人でバンドを組んでるんだけど、実はボーカルがいなくて……

このコンテストに出てみたいと思ってるの。よかったら、合同で一緒に出てみませんか?」


しゅあが目をキラキラさせて、めいの方を見る。


「めい、どうしよう……私、神様信じそう!」


「……でも、一度音を合わせてみてからにしよう?

その方がお互いにとっていいと思う」


めいが冷静にそう提案すると、まほたちは笑顔でうなずいた。


こうして5人は、合同練習を試してみるため、しゅあとめいと一緒にスタジオに入ることにしたのだった。

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