ハレオト♪ 第7話 スタジオ入り!
まほは悩んでいた。「私に弾けるかなぁ……でもやるって言っちゃったしなぁ」 そういって課題曲の譜面を眺める。 課題曲は「空も飛べるはず」という教科書に載っていたまほとりえが好きだった曲で、比較的簡単そうだという事で選んだ曲だった。 次の土曜日にりえとの初めてのスタジオ入りが控えていて、初心者のまほはコードの移動がスムーズにできず大苦戦していた。
指も痛い、そして指先は少し皮がめくれていた。 でも何とか一通り弾けるようになりたい!と土曜日までの間、猛特訓していた。
「土曜日まで、あと3日頑張って練習するぞ!」まほはそう言ってギターに向き合うのだった。
…… そして、つぎの土曜日。りえとの初めてのスタジオ練習の日が来た。 まほは音楽スタジオの前で深呼吸をした。「つ、ついにこの日が来てしまった……」
今日まで指がちぎれそうになるくらい練習したが、それでも不安は拭えない。 スタジオの受付の前を通り階段を昇っていき、部屋の前でまた深呼吸をした。 意を決して重い扉を押し開けると、りえが既に中でベースをセッティングしていた。
スタジオの中は、音楽機材の独特な匂いが漂っていて、それだけでなんか特別な気持ちを感じた。
スタジオの壁は吸音材で覆われ、薄暗い照明が機材を照らしていた。 床にはケーブルが這い、壁には「5分前には退出」と張り紙がされていた。 何より独特の機材の匂いが鼻をくすぐり、まほは少し興奮していた。
「(みゅ、ミュージシャンだ!)」 まほはそんなことを思っているとまほに気づいたりえが「まほちゃん、おはよう」と奥ゆかしい笑顔を浮かべている。
「うん、おはよう」 まほは緊張しながら部屋に入りギターケースを開けた。
「練習はしてきたけど……うまく弾けるか自信なくて……。」
まほは、りえにそう言って自身がないことを伝えたが、りえもなんだかんだ緊張していたようで。
「私も……人と合わせるの初めてだから、少し緊張してる……」と答えた。
まほは初のスタジオに備えて母親にアンプのセッティングを教えてもらっていた。 魔法の箱といって黄色いペダルエフェクターを渡されていた。 「この黄色い子に、シールドを差すんだっけ?」とおぼろげながら聞いていたセッティング方法をなぞる。 「ツマミはそのままでいいって言ってたな・・・」 アンプに繋いでエフェクターを踏むとアンプからブーというノイズが聞こえてくる。
「(この感覚、思い出してきたかもと)」いざ初めて音を出してみる。 ジャーン! スタジオに備え付けのMarshallアンプからはじめてまほが鳴らしたギターの音がなる。
父親の部屋で、初めて音を出したときのことがよみがえり、背筋が「ぞぞぞ」ってなるのを感じた。
あの日の感動がよみがえって来た事で、なんだかまほは少しだけ緊張が和らいだ気がした。
「やばー、かっこいいじゃん私」と自画自賛するまほ。
「じゃあ、やってみようか。リズムマシンでリズムを打ち込んできたので、遅いテンポからやってみよう」
りえは自宅で練習するときに使っていたリズムマシンでリズムを打ち込んできていた。
元々のテンポもそんなに速い曲ではないけど、初心者のまほの為にそれよりも少し遅いテンポで練習をすることにした。 まほは「(あ、遅いテンポならいけるかも)」とちょっとほっとした。
まほはギターを構えるとりえがリズムマシンのスイッチを入れた。リズムマシンがカウントともに一定のリズムを刻み始める音がスタジオ内に響く。
まほは深呼吸をして、ギターのコードを押さえた。
「よし、いくよ。ワン、ツー、スリー、フォー!」 りえのカウントとともに二人は演奏を開始した。
弦を押さえる指がうまく動かず、苦戦するまほ。
それに加えてリズムに合わせるというのが初心者のまほには難しくゆっくりのテンポでもうまく弾けなかった。 隣でりえのベースもなっているが、まほのそれよりはうまくリズムを刻んでいるように聞こえ、まほは焦り始めた。
「難しいよー、全然合わせられない……」
まほは焦りながら、なんとかリズムに戻ろうとするが、リズムマシンの冷酷なマイペースは変わらない。
「リズムマシンさーん、私に合わせてー!」
まほのギターがずれるがリズムマシンは容赦なく一定のテンポを刻み続ける。 りえもまほのずれに気づき、なんとか合わせようとするが、二人のリズムはますます乱れていく。
演奏をしていると弾くことに夢中になり、リズムマシーンの音が聞けなくなる。 演奏を止めると圧倒的にずれていて、悲しくなる二人……。
りえはメトロノームを使った練習はやって来てそれなりにできていたが、まほと合わせるという部分で苦戦していた。「もう少しテンポを落としてやってみようか?最初はみんなこんな感じだよきっと」
とりえさらにテンポを落として挑むことにした。 まほは再びギターを弾き始めた。リズムマシンのテンポに合わせようとするが、どうしても手が追いつかない。 それでも何度も繰り返しているうちに、少しずつ音がまとまってきた。
「あれ?なんか少しできてきたかも……(リズムとりえちゃんの音を意識して……)」
りえのベースがまほの耳に入ってきた奥ゆかしい性格で自信がなさそうに見えるりえちゃんが、こんなにもベースが上手いとは思わなかった。
二人は休憩を挟みながら、一時間ほど同じ曲を繰り返し練習した。 まほの指は痛みを感じながらも、それでもなんとか食らいついていた。
「すこしテンポを早めてみようか……」
りえがリズムマシンのテンポを少しだけ原曲に近いテンポにした。
「いくよ」二人は息を整えた。
どったんどどたんどったんどどったん。
「わわわわわー、だめー!まってまってまってー」
スピードが速すぎてついていけないまほ。
「えーん、リズムマシンくん、お願いだから私に合わせてください……」
等と泣き言を言い、いつの日かリズムに合わせて演奏ができることを夢見て練習に励むまほとりえだった。
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