消えたいと願った夏

@SKySaLT

プロローグ



夏が、嫌いだった。


陽の光も、空の青さも、笑い声も。

全部、まぶしすぎて、うるさすぎて、遠すぎた。



私はただ、静かにしていたかった。

誰にも話しかけられずに、誰の記憶にも残らずに、ただ、風みたいにこの季節を通りすぎたかった。


いつからこんなふうに思うようになったのかは、思い出せない。

けれど、気づけば私の中には「消えてしまいたい」という願いが、しずかに根を張っていた。


別に、死にたいわけじゃない。

でも、生きていることをやめられたらいいのに、と願う瞬間は、一日に何度もあった。

誰にも見つけられない場所に、私はいたい。

誰にも気づかれないまま、私はいなくなりたい。


その夏、私は――

ほんとうに、消えようとしていた。

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