第3話:確認
荒れたコメント欄を松倉と萩原は確認していた。
「・・・やっぱ、あいつらが投稿してんだろ?」
松倉が、指でトントンと机を叩いた。
「たぶん。ていうか、連携して盛り上げてる感、露骨だよね。でもさ。どこまでが悪ふざけで、どこまでが本当か、わかんなくなってきてない?」
萩原が投稿を選んでクリックする。
【黒フードの人・夜中の声】
祠の方から、誰もいないのに泣いてる声が聞こえた。
最初、黒フードの人かと思ったけど、そっちじゃなかった。
むしろ周りから。どこかに隠れてるような気配。
本気で怖くなって逃げた。
「この投稿、なんか変じゃない?最初は黒フードの話だったのに、周りに気配がするって・・・」
「おいおい。創作路線に入ってきたか?」
「いや、それが・・・」
萩原は別タブに切り替えて別の投稿を開く。
【匿名】
昨日の夜、公園で黒フード見た。
遠くで見てただけだけど、あいつのまわりに誰かいたっぽい。
暗くて見えなかったけど、何かがしゃがんでるような気がして、ゾッとした。
「投稿者が違う。時間もズレてる。でも、言ってること、妙に似てる」
松倉は腕を組み、画面を睨みながら言った。
「まあ・・・どうせ周りにいたガキの自演か、そいつらを見てそう思ったんだろ」
「そ、そうかな・・・?」
「あの人は動いてないように見えるけど、気づくとこっちを向いているとか、祠の裏に誰かがいる気がしたとか。言いたい放題じゃん」
そう言って、作業に戻ろうとした松倉のスマホが震えた。
「ん、緒川からだ」
「お、緒川さんっ!?」と謎の萩原。
電話に出ると、少し興奮した声が飛び込んできた。
「あのさ、松倉。ちょっと変な話していい?」
「急にどうした?」
「うちの父が、公園で子供たちと揉めたらしいの」
「・・・公園って、祠がある?」
「そう。掲示板で騒がれてたアレ。気になって夜に見に行ったら、数人の子が動画撮ってふざけてたんだって。注意したら、釣れたとか言って笑って、まともに取り合わなかったらしくてさ。親父、頭にきて怒鳴ったら一応は散ったらしいんだけど、まだしつこくやってるっぽいのよ」
「・・・そりゃ、ちょっとまずいな」
「でしょ。あんたたちがサイト立ち上げたせいってわけじゃないけど、なんか良くない感じになっちゃってるんじゃないの?』
「おいおい、そう言われてもだな・・・」
思わずため息が出たが、確かに無関係とは言い切れない。
「わかった。ちょっと様子見に行ってくるよ」
「できれば早めにお願い。最近、公園の掲示板にも迷惑って張り紙されたらしいし。絡まれたりした人もいるらしいから気をつけてね」
「了解。ありがとな」
電話を切ったところで、萩原が顔を上げた。
「な、なんて?」
「祠、やっぱ荒れてるらしい。緒川の親父さんがガキと揉めたってさ」
「えっ親父さんが!?大丈夫だったの?」
「ああ、怒鳴ったら逃げてったって話だから大丈夫だ。でも何が起きるかわかんねえよな。絡まれた人もいるって話だ」
「確かに。若い連中は何してくるかわかんないしね・・・で、どうするつもりなの?」
「とりあえず見に行くけど、ひとりで行くってのもな。萩原も行くか?」
「えっ、え、いや俺はどうだろう。・・・なんかいて役に立つかな?」
「冗談だよ。・・・まあでも、一応、美橋は呼んどくか。」
松倉は少し考えてから、スマホを取り出した。
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