第六話・繧峨ゅあ℃縺ヲ繧?≧馬

六ノ一・22時、羊が一匹

 タン、タン、と一定の間隔で音が鳴る。横にかかる重力で、重い体が斜めに傾く。

 仕事帰り、電車に揺られながら、志羊はうとうとと船を漕いでいた。かくん、と首が落ちそうになって慌てて瞼を開ける。自宅の最寄りまでは四駅だから、うっかり寝落ちするとあっという間に通り過ぎてしまうのだ。

 無意味にスマホの待ち受けを確認したり、窓の向こうを駆け抜ける中途半端な暗闇を眺めたりしていたが、やがてふと我に返った。

 しばらく電車が止まっていない。

 会社を出て、電車に乗り込んだのは桜木町駅だ。一駅目に着くまで三分。志羊が降りる四駅目までは、二十分と少し。しかしスマホを見ると、さっきスマホを見てから二十分、電車に乗る前に時間を確認してから四十分も経っていた。

 ぎょっとして現在地を確かめる。ドアの上のモニターは映像が停止し、半分が不気味な色のモザイク模様になっていた。ピンクと緑が斑らになり、ばちばちと点滅している。見える範囲のモニターどれもがそうだった。この車両内は全て故障してしまっているようだ。

 今どこにいるのかわからない。

 各駅停車に乗ったはずだから、時間から考えると、乗り過ごしたとして三駅ほどのはずだ。いつも乗っている路線に、それほど間隔の開く駅はない。

 ということは、間違えて快速特急に乗ったか、そもそも乗る路線を間違えたか。そんなことも気付かないほど疲労が溜まっていただろうか。ここのところ色々なことがあったので、身体的にも精神的にも疲れ切っていてもおかしくはない気がした。

 こうなっては次の駅で折り返すしかなかったが、いくら待っても、その次の駅になかなか停車しない。アナウンスもなければ、モニターも相変わらず役に立たないので、どこに着くのかもわからない。

 志羊はだんだん不安になって、スマホの地図アプリを開いた。電車に乗っていても線路上の位置情報がわかるはず、と思ったのだが。

「ええ……? なにこれ……」

 GPSの不具合だろうか。現在地のマークはずっと同じところをぐるぐると彷徨っている。小さな虫が蠢いているようでなんとなく嫌で、すぐにアプリを閉じた。

『……駅ーー、次は……駅』

「えっ? なんて?」

 なんの前触れもなくアナウンスが流れたが、気を逸らされていたので、ボソボソとした声色のそれを聞き逃してしまった。他にもなにか話しているが、やけに不明瞭だ。

『間もなく……%縺ヲ着いたします。ご乗車あり……ございましq}』

 電車の速度が少しづつ落ちていくのが、体感でわかる。志羊はとりあえず立ち上がった。とにかくここで折り返さなければ、帰れもしないのだ。

 その時になってようやく、車両内に自分以外誰も乗っていないことに気が付いた。それどころか、連結部の窓を覗いても、前後の車両にも人影は見当たらない。

 電車に乗り込んだのは二十一時頃で、混んでいるとまではいかないがそれなりに人は多かったはずだ。駅に停まった記憶は志羊にはなかったが、やはりいつの間にかどこかで停車していたのだろうか。それにしたって、志羊以外の全員がそこで降りてしまうなんてこと、あるだろうか。

 不思議よりも不安が勝る。ともかく折り返す路線を探さなければ。

 気付けば二十二時になろうとしていた。

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