三ノ二・薄曇天と廃墟アパート
「なにこれ?」
目を通し終えた壯須が、顔を上げて志羊を見た。ここ二ヶ月ほどで『ヨルコワ!』編集部に寄せられたメールやコメントを集めたものだ。
わざわざプリントアウトして持ってきたのは、共通点をあぶり出しやすくするためだった。あと、編集長が画面上の文字をどうしても読めないから。
スクリーンショットを貼り付けただけの簡易なものだが、いくつかマーカーを引いた部分がある。
『横浜』『アパート』『二階』。
読者からの投書に共通しているのは、その三点だった。肝心の幽霊の噂の方は共通しているようないないような、という感じではあるが、そこはそんなものだろう。
「心霊検証企画第一弾です! どうですか?」
「検証ねえ……」
「なんですか、雄憲さんに聞いてるんですよ」
「だからそれが……ウーン」
壯須はなにか言いたげにグラスチェーンを弄る。雄憲は黙ったまま投書を読んで、壯須と志羊を順番に見る。頷いたのは企画の承諾だと受け取っていいのだろうか。
「そもそも、志羊ちゃんはどういうスタンスでいるのさ。自分の目で見たものしか信じないんでしょ? 心霊とか信じてるの?」
口を挟んできた壯須の、こちらに突きつけてくる指先を睨む。人を指差さないでほしいが、「そこのところはっきりさせとかないと、企画としてブレちゃうでしょ」と言う言葉は尤もなものだった。
「私はオカルトの類はなにも信じてませんよ。幽霊もUFOも宇宙人も全部錯覚です」
「じゃあ志羊ちゃんは霊感とかないの?」
「ないですよ。自分で見てたらさすがに信じてますもん」
「ふうん……」
霊感の有無も人には見えないものを見たなんて話も、嘘だとも本当だとも他人には証明できないものだ。事実だと言い張るだけなら誰にでもできる。現代社会に霊を信じない人がこれだけ多いということは、そういう話を他人に信じさせるだけの根拠を、未だ誰も確立できていないということだ。
手にした投書に指を滑らせる。二つ目のコメントの、とある一文。簡単に書かれてはいるが、一つ目の内容と共通するところもあるので、少し気になった部分だ。
「心霊現象って、現代科学では証明できないってだけで、もっと研究が進めば証明できるようになるものだと思うんですよ。例えば、〝子供が入ると呪われて死ぬ洞窟〟って言い伝えられてた場所が、炭酸ガスの溜まり場だったって話とかありますよね」
「ガスは下に溜まるから、背の低い子供だけが吸い込んで死んでしまう、っていうやつだね」
「そうです。でも昔の人はそんなのわからないから、呪いや災いとして対処してきたわけですよね」
他にもそんな話が、世界各地にいくらでもあるはずだ。
入ってはいけない、近づいてはいけない。得体の知れないなにかに脅かされて、命を奪われるから。そんな言い伝えと共に恐れられ、封じられてきたものの中には、後世で科学的な危険が解明されたものが多数ある。
だったら現在は不可解とされている現象の中にも、将来的には解明されるものがあるはずだ。
腕を組んで首を傾げた壯須が、「なるほどねえ」と呟く。しかしその後に続けた言葉に、志羊は「うぐ」と口を噤んだ。
「でもそれ、自分の目で見たもの以外は信じない、っていうのと矛盾するよ? いつかは誰でも見えるようになるものかもしれないし、見えなくても存在が証明されるかもしれない。それこそ有毒ガスみたいにね」
「そ、それは」
「それとも見えるようになったら初めて信じるのかな」
喉の奥からぎゅう、とつつかれたフグのような鳴き声が出る。
『自分の目で見たものしか信じない』というよくあるフレーズが、実は深掘りされると整合性の不完全な代物であることは、わかっているのだ。編集部の先輩である塚田にも同じことを言ったら完膚なきまでに言い負かされ涙を飲んだのは、配属されたその日のことだ。
それでも同じ言葉で霊的存在を否定し続けるのは、他に否定の言葉が見つからないからだった。つまり、信じきれないが、疑いきれてもいない。そんな現代人が、実は一番多いのではないだろうか。
「じゃあ、志羊ちゃんは妖怪も見たことないんだ?」
口を尖らせて押し黙っていると、壯須が唐突にそんなことを言い出した。四秒ほど反応に困ってから「は」と聞き返すと、「妖怪だよ」と繰り返す。
「かまいたちとか、河童とか」
「あ、あるわけないでしょう」
「だよね。僕も河童はさすがに」
雄憲は、と水を向けられて、無表情で二人の会話を聞いていただけの彼も「ない」と答える。
「皆ないんじゃないですか。そんな、普通あるみたいな言い方するからてっきり」
「そう、ほとんどの人は見たことがないし、見たことを証明できた人もいない」
幽霊よりはもう少し生き物らしいイメージが強い存在ではあるが、その点においては幽霊と同様だ。
「なのに『妖怪』という言葉がなくならないのはどうしてだと思う?」
「……使う人がいるからでしょう?」
「妖怪なんて見たことないのに、どうして使うんだろうね?」
確かに、と思う。言われて初めて意識したことだった。
見たことがないなら当然、人に伝えることもない。伝承という形以外では、史実にそれほど出てくる単語でもない。絶滅動物などなら後世に伝え残していく必要もあるだろうが、そもそも存在しない生き物だから、そんなこともしなくてよい。
要らないのになくならず、『妖怪』という言葉の意味がわからない世代というのも存在しない。昔の言葉にならない。
それがどうしてかは、考えてもわからなかった。壯須の顔を見ると、彼は思ったよりも真面目な顔をしている。志羊を論破したりのらりくらり交わしたりするくせ、そういう時は揶揄うような表情はしていないのだ。
「言ったでしょ。言葉が廃れないのには、理由があるんだよ」
「あ、それ……」
典を発見して帰って来た晩にも、彼が言っていた言葉だ。あの時は妙な迫力に呑まれながらも、詭弁だと思っていたが。
壯須は続ける。
「成り代わる新しい言葉がないんだ。他の言葉では代用できないなにかを、見てしまう人が現れる。それが存在の証明に他ならないと思うんだよ。妖怪も、幽霊もね」
志羊は再び黙り込んでしまった。返す言葉がなかったからではなく、考え込んでしまったからだ。実在する動物の見間違いや、新種の生物が妖怪の正体だったなら、その生き物の名の方が広まるはずだ。科学的に解明できるなら、それも同様に。そうならないのはいつまで経っても『妖怪』という言葉以外で説明できない〝生き物〟が、実際にいるから。
まさか、とは思いつつも、つい考えてしまう。
「まあ、かまいたちは切り傷やあかぎれに時間が経ってから気付いただけとか、河童は江戸時代に使われた水死体の隠喩だとか、説明しようと思えばいくらでもできるんだけどね」
志羊は口をぱかりと開けて、壯須を見た。「は?」と後から声が出る。
「ほら、血の気が引いて緑色になって、ちょんまげが解ければ頭の皿みたいに見えるでしょ。他の妖怪も障害のある人を見間違えたり隠語として言ってたって説が結構あるよ」
「な……」
「まあ、『妖怪』って比喩表現で言ったりもするしね。悪口だけど」
「ぜ、全然存在の証明にならないじゃないですか……?」
「そーかも」
肩を竦める彼に、怒りが沸いてくる。尤もらしい言葉で人を言いくるめたと思ったらこれだ。
「なんなんですかいっつも!? ちょっと信じちゃうとこだったじゃないですか!」
「あっはっは、志羊ちゃん本当ちょれ〜」
「もーっ! いい加減にしてください!」
壯須と知り合ってからというものの、この繰り返しな気がする。きっと彼の語り口に妙に説得力があるのがよくないのだ。占い師って皆こうなのだろうか。
きぃ、と彼を睨みつけていた志羊だったが、気を取り直して顔を上げた。そうだ、壯須に関わっている場合ではないのだ。もう問題の心霊アパートの、目の前まで来ているのだから。手の平を広げて、聳え立つ建物を――との間を隔てるフェンスを、指し示す。
「着きました! ここです」
被膜が剥がれ、錆び付いたフェンス。前庭は広く、十台ほどの駐車スペースはあるが、全く手入れされていない雑草が地面を覆い隠してしまっていた。金網の間からこちらの歩道に、草が飛び出してきている。
その向こうに横たわるようにして建っている横長の建物が、件のアパートだ。
汚れてくすんだ外壁。ところどころぼろぼろとひび割れている。壊れた雨樋。見える範囲の窓は全て割れて、中の闇が覗いていた。
おどろおどろしい雰囲気だった。背景が薄暗い曇り空なのも相俟って、かなり薄気味悪い。
ごく、と喉を鳴らす。雄憲の方を見た。
「ど、どうですか……?」
尋ねてみるが、彼は「どうと言われても」とでも言うような顔でアパートと、志羊を見る。本当に霊や霊感があるとしたら、外から見て感じるものなのだろうか。それとも敷地内に入って初めてわかるのだろうか。
「うわ〜、スゴイね雰囲気。ヤバぁ」
場違いなほど楽しそうな声をあげる壯須を、振り返る。
「……というか、壯須さんも入るんですか?」
「え、ここまで来て外から見てるだけはありえないでしょ。ダメ?」
「ダメじゃないんですけど……」
志羊が中華街を訪れたのは、オカルト雑誌『ヨルコワ!』の心霊検証企画のためだ。岩端商店を訪ねはしたが、それは雄憲の連絡先も家の場所もわからなかったから。要するに、用があるのは除霊のできる雄憲だけなのだが――雄憲を紹介してくれたのも壯須である。除け者にもできない。
しかし今回ばかりは、霊感もない壯須がいてもなににもならないのではないか。変なことをしないのであれば、いて困るということもないが。これは決して、人数が多い方が志羊が安心できるから、とかではない。決して。
「雄憲さんには正式なお仕事の依頼ということでもちろん謝礼を出すんですけど、二人分は……どうなんだろう……」
編集長に相談してみないことには、まだなんとも言えない。これで壯須の分の謝礼金が出なかった場合、個人的に礼をしなければいけないが、それはなにか問題にならないのだろうか。
「出ないなら出ないで別にいいよ。隅っこに広告でも載せてもらえれば」
「そういうわけには……」
「正直、ちょっと心配でさ。君ね、雄憲を雑誌の名物キャラにでもする気でしょ」
「え?」
どういう意味だろう、と眉が寄る。雄憲を見て、確かにだいぶキャラは濃い、と思ってから、意図に気付く。いやに協力的だった小杉編集長の意図に、だ。
「あっ! そういうこと」
「気付いてなかったの……」
壯須が呆れたように言う。つまり、雄憲の求めている未解決行方不明事件の情報を集めるのを手伝う代わりに雑誌の取材に同行してほしい、という交換条件は、雄憲を記事に登場させてシリーズ化し、読者人気を狙うつもりで提案したことだったのだ。ネット上の都市伝説に因んで『寺生まれのYさん』とでも呼ぶつもりだったのだろうか。小杉が乗り気だったのはそういうわけだったのだ。
「うう、意外と親切だなぁと思ってたのに……」
「志羊ちゃんにそんな悪知恵あるわけないか……」
「か、顔はもちろん隠しますから! なんなら全身モザイクでも……」
「どんな霊媒師だよ」
「別に、いい。なんでも」
本当になんでもよさそうに、雄憲が言う。彼の興味はそんなものより、心霊アパートの方にあるようだった。
時刻は夕方、18時。そろそろ日が落ち切って、暗くなってしまう。その前に終わらせてしまおうと、志羊はカメラを取り出した。
ここを管理している不動産会社の担当者には、取材許可は取ってある。しばらく開けていないので使えるかどうか、と言われながらも、フェンスや建物の鍵も借りてきた。
しかし担当者は、このアパートの現状を全く知らなかったようだ。敷地沿いにぐるりと回り込むと、金網が破けて人が通れる大きさに開いているのがすぐに見えた。
そこから中に潜り込むと、草むらの中に踏みならされたような道ができている。きっと肝試しにくる人たちは、ここを通ってアパートへ近付いているのだ。
ガサ、と音が立つたびに志羊は息を殺して周囲に目を光らせているが、雄憲はなにも気にせずずかずかと先頭を歩いていく。最後尾を歩く壯須も、あまり周りを観察している様子はない。
アパートの建物もフェンスと同様に、無許可で侵入した痕跡が残されていた。そもそも肝試しでわざわざ管理者に許可を取る人はいないだろう。入り口は簡易な作りで、玄関の引き戸がついており、共用スペースには十個のポストがついていた。二階建てなのでエレベーターはなく、インターホンもない。そのまま扉を隔てもしないで、階段に繋がっている。古いせいか、セキュリティ面では頼りないアパートのようだ。
玄関の戸を開けた雄憲が、そのまま躊躇なく入って行こうとするので、志羊は慌てて呼び止めた。
「ちょ、ちょっと待って雄憲さん! 入る前に写真を」
こちらを振り返って、わずかに眉を動かす。遅い、か、面倒な、とでも思っているのだろう。記事を書くための取材ということを忘れていないだろうか。シャッターを切ると、雄憲はどうせ毎回待たなければいけないことを悟ったのか、先行するのをやめて二人と一緒に歩き出した。
外はまだ明るいが、電灯もなく生い茂る雑草で西日も遮られるので、アパートの中は暗い。編集部にやたらと立派な懐中電灯がいくつもあったので、それを二本借りてきていた。
読者からの投書によると、入り口から異変を感じる人は感じるらしい。それから、動画を撮りに入った学生達の話では、103号室と裏口前で気配を感じる、という話だ。そろそろと足を進めながら、ここだ、という場所を写真に収めていく。
その間なんの助言もしてくれない雄憲に痺れを切らして、志羊は後ろを振り返った。
「あの雄憲さん、ここで心霊写真が撮れそうっていう場所あったら教えてもらえませんか? 私じゃ全然わからないので……」
「ん」
ぱち、と瞬きを一つして、彼は廊下に視線を彷徨わせる。志羊がなんとなくレンズを向けた辺りだ。そこになにか見えているのか、漂うシャボン玉でも眺めるような静かな視線だった。それから志羊に向かって頷く。
「いいと思う。その辺で」
「……本当に?」
「お前がいそうと思ったところで撮ればいい」
「はあ……」
正直言って、なんの参考にもならない。仕方ないので、こちらに構わずに蜘蛛の巣でも気にする雄憲の背中を一枚撮る。狭く荒れ果てたアパートの廊下に、着流し姿の大男。ある意味画にはなるだろう。
結論としては、一階ではなにも起きなかった。ただ歩きながら、扉の開け放された部屋の中を覗き込んで、写真を何枚か撮っただけ。103号室が他の部屋となにか違ったということもないし、奥の裏口の前ではほんの少し空気の悪さを感じるくらいで、何事もない。地面に彼はやゴミが溜まっていたので、そこが風の吹き溜まりになっていて、埃などが集まってしまっているのだろう。
「つ、次は二階ですね……」
階段を見上げて、こく、と喉を鳴らす。薄い鉄板張りの階段は錆で穴があき、虫食いのようになっている。足元が抜けないか、慎重に足を乗せて上がっていくと、一階よりはいくらか状態のいい二階の廊下が見えてきた。廊下は木板張りなので軋みや歪みはあるが、階下のように侵入のために窓が破られておらず、雨風が入らないぶんかなり綺麗だ。
しかし雰囲気の悪さは一階の比ではない。階段を昇りきったところで立ち止まってしまった志羊に、壯須が声をかける。
「どしたの、デカい虫でもいた?」
「む、虫は平気ですもん」
「そなの? 強いね」
空間が澱んでいる。通気が悪いせいで湿気が留まっているのだろうか。黴臭さはそれほど気にならないのに、なんとなく空気が刺々しい、そんな感じだ。
横を通りすぎざま、雄憲が志羊の肩にぽん、と手を置いた。細い肩を覆ってしまいそうなほど、大きな手のひら。埃でも払うように、ぱぱ、と指先を動かす。
「えっ、ホントに虫ですか?」
「……そんなところ」
「志羊ちゃん虫は平気なんでしょ?」
「平気ですよ? 足の比率の小さいものなら」
「比率って」
壯須のニヤケ顔を見ていたら、得体の知れない怯えが霧散するようになくなっていることに気付いた。というより、雄憲に肩を叩かれてからだろうか。
初めて会った時も気付いたらとっくに除霊が済んでいたし、もしかしてさっきの虫を払うような仕草がそうなのかもしれない。お祓いというのはもっと仰々しくお経を読んだり、肩や背中を叩いたりするものだと思っていたので、そうと気付くと少し拍子抜けだった。咄嗟に『誌面に映えないな』と思ってしまったのは、完全に職業病だ。
動くようになった足を踏み出して、軋む床を進む。数歩歩けばもう201号室で、壯須の開けたその扉を潜った。
部屋の位置と間取りは、一階とほぼ同じだ。五戸並んだ部屋。廊下に面して窓がついている。これは台所の窓だと、一階の部屋でも確認済みだ。部屋に仕切りはなく、板張りと畳で区切られているのみ。トイレはあるが風呂はない。昭和後期に建てられた古いアパートにはよくある間取り、という感じだった。
部屋の中も、やはり一階より気味が悪い。住人の物が残っていて生活感があるわけでもなく、ゴミが吹き込んで乱雑ということもないのに、なぜか周りが気になるのだ。
「こ、ここはなにも感じないですか……?」
雄憲の表情を窺うが、黙って壯須の顔を見るだけだ。「なんか言ってください」と言う自分の声が思ったより泣きそうだった。なにも答えずきょろきょろとあたりを見回す雄憲の代わりに、壯須が口を開く。
「いやな感じがする」
「えっ?」
意外な人物からの意外な意見に、驚く。実は壯須にも霊感があるのだろうか。しかし彼はすぐに真剣な表情を緩めた。
「カビくさぁ。肺に悪いよ」
「ああ……」
「マスク持ってくればよかったな」
そう言いながら、持ってきたバックパックからタオルハンカチを取り出して口に当てる。それを眺めていた志羊は、「そういえば」と言った。
「荷物多くないですか? いつの間にか着替えてるし……」
ずっと気になってはいたのだ。岩端商店を訪ねた時はいつものチャイナシャツにカンフーシューズという出立ちだったのに、これから取材に行くことが決まると、「準備するから十分待ってて」と言って店の奥に姿を消したのだ。十分も経たずに戻ってきた壯須は、ワイドパンツをトラックパンツに履き替え、靴もスニーカーになっていた。
そしてまるで登山にでも行くような、この大荷物だ。壯須自身のアンニュイな見た目と全くそぐわない雰囲気に、志羊は怪訝な顔を浮かべる。
すると彼は、バックパックの口を大きく開けて中を見せた。
「ほとんど折り畳み椅子と毛布だよ、三人分あるから嵩張っちゃって。それと一応ライトとレジャーシート、あとは救急セットとか」
「……え?」
一瞬で意図を理解した志羊の顔から、ざあ、と血の気が引く。壯須はにゃあ、とでも鳴きそうな笑顔を浮かべた。
「待って。無理です」
「志羊ちゃん、まさかチャチャっと写真撮って検証終わり、なんて気じゃないよね?」
「いや無理! ムリですよ」
「心霊スポット検証といったらこれでしょ」
この人、ここに泊まる気だ。
そうわかった瞬間、今まで緊張しながらもなんとか堪えていた悲鳴が、思い切り口から飛び出したのだった。
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