決闘


 闘技場では、今か今かと待ち望んでいる冒険者たちで溢れ返っている。


 私と元ギルマスのルドルフ・ロンベルクは、闘技場の中心で向かい合う。


 ルドルフは、元々Sランクの冒険者だそうだ。

 そんなに強いとは思えなかったが、30でギルマスになって、走り回ったり大きく動くことがめっきりなくなった。

 それだけでは実力が衰えることはほとんどないが、何十年と続けていたことで今ではAランク程の実力になったそうだ。


 ガミルさんが教えてくれた。


 どうやって戦おうかと思っていると、ルドルフが声を荒らげてこう言った。


「お前、その使い魔は出すんじゃねぇ! 一騎討ちだ!」


 なんかめちゃくちゃ怒ってるんだけど、とか思いながら冷静に言い返す。


「もちろんそのつもりです」


「「「「「ワァァァァァ!!!!!」」」」」


 待ちきれないと言わんばかりに、聴衆が声を上げる。


 シロには客席で待っているように伝えた。


 「これより、Dランク冒険者アルトの昇格試験を始める! 両者構え!」


 静かになった闘技場にアンナさんの声が響く。

 

 互いに剣を構える。

 目が合うと、ルドルフはニヤっと口角を上げる。勝利を確信しているようだ。

 無論、簡単には勝たせない。

 

 初めての対人戦、学ぶことが多そうだ――


「始め!!」


 アンナさんの掛け声と同時に、ルドルフが正面から突っ込んでくる。


「先手必勝! 『剛剣』!!」


 ルドルフの剣が光に包まれる。

 

 最近は、自分で技みたいなのを作って命名することが流行りのよう。ただ魔力を入れただけなのにね。前世知識で言うとスキルみたいなものかな?


 魔法も超能力も使えない者がほとんどだが、魔力操作ができる者は多い。

 それでも、そこから魔法に変えるのに苦労するようだ。ほとんどの人間は魔力を変換して外界に放出することができないらしい。

 

 そのため、魔道具を使って魔法を使う者が多い。普通の人間には手の届かない代物だが、それなりに稼げる冒険者にとってはそれほど高くない。ルドルフが持っている剣も魔道具だ。

 

 ただ、ひとつの魔道具につき使える属性に限りがあり、また寿命が来ると壊れてしまう。魔法使いのように様々な魔法をバンバン撃ちまくることは出来ないそうだ。


 閑話休題。

 

 相手の強さが未知数であるため、慎重に動くつもりだったが、思っていたより速くない。


 見える。


 これならいける。

 だが警戒レベルは下げない。油断大敵。


 両手で剣を構えて正面からぶつかってくるルドルフ。

 斬られると思われるような距離。


 左腰に下げ、手を添えていた剣を、当たる直前、相手の剣に沿うように振り抜いた。


 魔力を纏ったそれは、力をほとんど入れずに、奴の剣を上下真っ二つに斬り裂いた。

 …………やりすぎた気がする。


 一瞬驚きはしたが、流石はAランク。

 剣を手放し、後ろに飛びずさって距離をとる。判断が速い。


 えっ、と口にした者もいたようだが、周りは沈黙。固唾を飲んで見守る。


 ルドルフは、手に何も持たずに疾走。

 

 斬る準備をしていたが、直前。

 手が届く距離で立ち止まったルドルフは手を握りしめ、私の顔面めがけて殴ろうとする。


 私は地を蹴り前方に飛び、ルドルフの背中を踏み台にして空中で一回転してから着地。


「がぁっ!?」


 着地の瞬間を狙っているルドルフに、予め準備していた氷魔法が地面から生えて彼の足に巻き付く。

 

 優雅に彼の元へと歩き、身動きが取れないルドルフの首に剣を向ける。


 戦闘終了だ。



 

 いく秒かの沈黙の後、


「試験終了。アルトのBランク昇格を許可する」


「「「「「ワァァァァァ!!!!!」」」」」


 アンナさんの一声で、闘技場が歓声に包まれる。


 歓声の中、私は氷を解除し、剣を仕舞う。


 立ち上がったルドルフを見て、


「ありがとうございました」


 返事はなかったが、そのままギルド内に入る。シロを肩に乗せて登録証を更新し、ついでに使い魔登録をして森に行こうとすると、ガミルさんが話しかけてきた。





 

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