遭遇


 1010年。初夏。


 家出をして5年が経った。17歳。

 

 身長も伸びて、170センチメートル。女の子だとは思えない。

 

 シロとも結構打ち解けて、念話での会話も増えた。

 シロが見たという冒険者の剣術を教わって、恥ずかしくないほどには成長出来た。


 今日はそろそろ、冒険者登録をしに行こうかと思ってる。討伐経験も増えたし、森での生活にも慣れた。

 旅をするにも身分証は欲しい。冒険者証があると、国境もスムーズに渡れるらしい。

 持っておくに越したことはない。


 のんびり10時頃に起きて、シロに朝食を捕ってもらっていると、シロから連絡があった。


 『人間です。魔物に苦戦しているようです。加勢しますか?』


 『分かった。ウルフの姿でね。私も行くから』


 『分かりました』


 そこで念話が途絶える。シロの魔力を頼りに走る。


 最近考えを改めた。

 もともと、シロの人間の姿で2人一緒に登録しようと思ったのだが、森の中でもフェンリルの姿で任務をこなすことが多くなりそうだった。その時、この傷は魔物の爪だ、だとか、魔物がやったのを盗んだんだろうかとか疑われる可能性を考慮し、フェンリルの姿で、使い魔として登録することに決めた。

 彼女自身もその方が動きやすいそうだ。


 まあここら辺の魔物はさくっと倒せるんだけど、どうなるか分かんないしね。

 

 もちろん、フェンリルだなんて言ったら大騒ぎになるので、普通サイズのウルフになってもらった。

 白くてもふもふだから人気になるんじゃないかな。驚かれるとは思うけど。

 


 五分ほどで着いた時、既に決着はついていた。


 斃された魔物の前にシロ、その後ろに怪我をした冒険者3人が座り込んでいた。

 

「大丈夫ですか」


「ああ、大丈夫だ。少し怪我をしちまったが」


「呑気に話してる場合じゃないでしょ! ウルフがこっちに来てるわよ!」


「君も逃げた方がいい。あれはレアモンスターだ。ホワイトウルフなんてこんな所で出てるわけない。小さいからって侮らないで」


 そんなことより、怪我してて逃げられるのかこの人たち。


「……これ使ってください」


「うぉ!? ポーション持ってんのか! ありがとよ! あとで金は払う!」


「私にもちょうだい! 早く逃げるわよ!」


 随分と混乱してるなぁ。


 すると、シロが肩に乗るサイズになってそのまま私の肩に飛び乗る。


 『この方が怖がられないでしょう』


 『うん。ありがとう。色々話すけど、合わせてね』


 『分かりました』


「驚かせてごめんなさい。私の使い魔なんです」


「な、なんだそうなのか……」


「え、あなた、ホワイトウルフが使い魔なの!?」


「めちゃくちゃ強いじゃないですか……」


 三者三様、反応が大違い。

 使い魔が小さくなることは、この世界での常識。ちなみに方法は、互いの了承を得るか相手をボコボコにして弱らせ、動物に名前をつけることで誰でも契約できる。器用貧乏な人間だけの特権だ。


「ええ、まあ……」


 もっと上のフェンリルだけどね。


「おっと、自己紹介が遅れたな。俺はガミル。『赤い月』のリーダーだ」


 短い赤髪で、ガタイのいいイケおじ。

 大剣を背に構えている。


「私はヴィネス。同じく『赤い月』メンバーの魔道具師よ」


 同じく赤髪のきれいなお姉さん。

 腰まで届く綺麗な髪は、随分と丁寧に整えられている。

 肩まである長さの太い杖の先端には、赤い魔石が嵌められている。

 

「……クラネスと申します。超能力者です」


 色素が薄い赤髪のお兄さん。

 丸メガネが良く似合う。偏見だけど、研究とかしてそう。

 あんまり喋んない感じかな。


「アルトと言います。一応剣士です。こっちは使い魔のシロです」


「アルトかぁ……見ない顔だな」


「ランクはいくつ?」


「ランク?」


「おう。冒険者はランク別になる。知ってるだろ?」


「……あ、冒険者ではないです」


「違うんですか!?」


 クラネスさんが1番驚いてる。


「この森で暮らしてるんですが、せめて冒険者証は取っておこうと思って、これから行くところです」


「ホワイトウルフを従えていてFかぁ。だめだな」


「そうね。Aは無理でもCぐらいには推薦しましょう」


「…………ところで、僕たち任務失敗してますけど」


「「あ」」


「ま、まあ何とかなるだろ! 結局斃されたし、金出すだけだろ!」


「そ、そうね! そう悲観的にならないでクラネス!」


「…………」


 クラネスさん大変そうだなぁ。


「じゃあアルト、行くか!」


「そうね! 一緒にいた方が信憑性も上がるってものよ!」


「あ、ありがとうございます」


 そのまま、『赤い月』一行と、初めての街へ繰り出すのだった。




 

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