出会い
翌日、早朝。
寒さが辺りに漂う中、アルトはあるものを探していた。
ズバリ、果物。
朝はやっぱり、軽いけどそれなりにお腹にたまるものがいいと探していたのである。
昨日は魚だけだったし。
前世では、ラーメンとかカレーとかを普通に食べていたが、今ここにそんなものはない。
作ろうと思えば作れるだろうが、流石にそれではつまらない。
リンゴっぽいものと、毒がないと確定したキノコ。
焼いた食パンに目玉焼きを乗せて、野菜とか、とも思ったが、贅沢。
それに、昨日の魚3匹が引きずって、お腹はあまり空いていない。
作った木のプレートにリンゴふたつと醤油をかけたキノコが置かれる。
もちろん醤油はお手製。
そうそうにキノコを食べ終え、待ちに待ったリンゴ。日本のものとは違って一回り大きい。
水で洗い、水滴がついて瑞々しさが増したそれを、一口。
シャリっとした音とともに甘さが口の中に広がる。
うん、やっぱりリンゴだ。
これがあるなら、ブドウとか梨とかイチゴとかもあるかな。
ちなみに、この世界の時間や単位は地球とほとんど変わらない。1日は24時間、1ヶ月は30日で1年は360日。長さや重さの単位も同じだ。
季節も春夏秋冬あるから、それぞれで美味しい果物が食べられる。
季節関係ないかもしれないけどね。
ごちそうさまでした。
未だ眠い瞼を擦りながら、立ち上がる。
今日は何をしようか。
まだ考えていなかった。
何をしても楽しいだろうと楽観的なアルトはここら一帯の散策をすることにした。
随分と森の奥に居を構えたが、ここに来てから一度も魔物に出会っていない。
ここで暮らす魔物の種類とその特徴を知るためにも、必要だと考えた。
立ち上がり、森を突き進む。
家には目印をつけてあるから、適当に進んでも迷うことは無い。
注意力散漫に、のんびりと歩いていると、狼の群れに遭遇した。
グレイウルフ。
それが彼らの種族名だ。
神様の資料に書いてあった情報を思い出していると、エサを目の前にしたグレイウルフたちが一斉に突っ込んできた。
それを危なげなく躱しながら考える。
たしか、グレイウルフは、群れのボスを斃したら散り散りになるんだったか。
彼らの攻撃を躱しながら、隙をみつけて逃げる。その先には、後方で指示を出していたボスだった。
群れのボスを一瞬で斃し、一息つく。
が、残りのグレイウルフが考える隙を与えずに突進。
慌てて仕留める。
例外はある、と。
こういうのは経験で分かるものだね。
躱さずに、とっとと全てを斃しても良かったのだが、魔物の攻撃を躱したり、相手の動きを観察する経験も大事だと、時間をかけた。
それまでは、拠点探しのために時短で済ましていたが、新しい魔物に会ったらこういうのもいいかもね。
全てを一撃で倒せるという保証は無いしね。
斃した全てのグレイウルフを空属性で作った空間収納に入れ、また歩き出す。
季節は秋。この森の冬がどうだかは知らないが、食事には困らないようにしたい。
保存方法はちゃんとあるし、いろんな料理も試してみたいな。
♢ ♢ ♢
道中出会った魔物たちを斃し、収納し、12時を少しすぎる頃。
なんかでっかいのに遭遇した。
「なにこれ」
見た目はフェンリルのような白い狼? なのだが、額には2本のツノ、全身に鱗のようなものがついている。
私の3倍以上の体長を持つそれは、座り込んでスヤスヤと眠っている。
少し焦げた跡と、前足には見てわかるような怪我をしている。
気になって私が近づいた瞬間、それは起き上がり、バチッと目が合った。
「…………」
驚いて身構えたが、何もない。
小首をかしげていると、フェンリル(仮)が犬のお座りのような格好で口を開く。
「私はあなたに忠誠を誓います」
ん?
咆哮かと思ったら普通に喋ったし。
ちゅうせい、ちゅうせいって忠誠?
忠誠ね。うんうん。
「なんで?」
思わず出てしまった言葉に、フェンリルは構わずこう続けた。
「あなた様は強いです。私たちフェンリルには、相手の強さを見極める能力があります。あなた様を見た時、その強さに思わず固まってしまいました」
「……それが、どうして忠誠を誓うことになるんですか?」
やっぱりフェンリルだった、と驚くと同時に、巷で噂のS級魔物が私に忠誠を誓うのは何故だろうと、逆鱗に触れて一瞬で潰されないよう丁寧に尋ねる。
……怪我もしてるし、そんな体力はないかもしれないけど。
「私なんかにそのような言葉遣いはおやめ下さい。フェンリルという種族は、常に生涯を捧げて仕える主を探しています。私は、その主をたった今見つけました」
うんうん。
私が強いから、仕えるに値すると。
「私があなたより強いとは思えないのですが」
眉をひそめながら答える。
言われたから言葉遣いを改めようとしたけど、違和感。ダメだった。
「そんなことはありません。あなた様は、この世界で誰よりも強いです。私が保証します」
折れる気はなさそうだな。
「……本当に、私が主でいいのですか?」
「もちろんです」
即答された。
まあ確かに、私も1人じゃ心細かったし、もふもふ要素も欲しかったから……
「それでいいなら構いませんが……」
「ありがとうございます!」
わあ嬉しそう。
尻尾がブンブン動いてる。あの木折れそうだな。
「それでですね、主には名前をつけて頂きたいのです」
「名前?」
はい出た不得意分野〜。
「仕えた主に名前を授かることが主従の証なのです」
「なるほど……シロでいいですか?」
いい名前が思いつかなかった!
だって! 名前つけるの苦手なんだもん!
「シロ、ですね。ありがとうございます」
「……私はアルトと言います」
危ない。名乗り忘れるところだった。
「アルト様。シロは、一生をかけてあなたに仕えることを誓います」
「……よろしくお願いします」
いや、まあ、確かにこういう相棒ゲットシーン憧れてたけど、早くない?
もうちょっと後だと思ってました。
そうして、私の異世界旅の仲間に、つよつよなもふもふちゃんが加わりました。
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