僕の意味、家族の食卓

「ずるい」女性の服をちょこんと引っ張ると、アンは顔をふくらませる。僕だけが撫でられたことが悔しいのだろう。さっき僕を支えたように、女性の方に頭を出す。女性がわしゃわしゃと両手で髪の毛をなでると、アンは笑う。その時少しだけ、女性は僕に向かって目を細める。


「テロ」何かを言いたそうな、どこか寂しそうな顔。僕はなんて言えば良いのか分からなくて、苦笑いを浮かべる。きっと困らせてしまうと思うけど、多分大丈夫。女性はこっちに手招きをすると、僕を捕まえる。アンも一緒に抱きかかえられて、それぞれが机に座らされる。颯爽と台所に消える女性。十秒くらいだろうか?その短い間に女性は戻ってきて、料理を並べだす。ふわっとした暖かい空気が、部屋に溢れていく。僕はアンの方を一度だけ見て、料理の方に向き直る。


「おいっそー」わずかに聞き取れなかった”し”。その一文字が、聞こえたような気がする。食卓に置かれている料理は、所狭しという気分だろう。サニーレタスのような緑野菜のサラダに、牛と鳥の中間くらいの焼肉。そこに加えて、餃子の量な料理まである。あまりの種類と量に、僕とアンは文字道理舌を巻く。


「うん!」僕も負けじと、アンに同意する。こんなにたくさんの美味しそうな料理を食べるのなんて、夢みたいだから。サラダには不思議なソースまでかかっていて、僕とアンを止まらせない。いろいろな料理一つ一つが宝石みたいで、僕とアンはひたすらに食べ続ける。


「嬉しい」情勢は感極まったように、口を半円の形にして言う。アンはその間もひたすらに食べ続け、それだけに集中している。僕はある程度食べたところで、あることに気づく。この料理たちが、一つ一つがとても取りやすく作られていることに。


「ごちそうさま!」アンのはつらつとした声が、部屋に響く。女性はアンの口元を拭き取ると、空になったお皿を持っていく。僕は軽く頭を下げて、女性にお皿を渡す。


「ごちそうさま」僕は、おいしさのままに言う。後から振り返れば、この時の僕は随分と油断していたように思う。僕もアンと同じように、口元を拭き取られてしまったからだ。僕は心臓がかあぁぁぁと赤くなる気がして、部屋に戻る。


「ふふっ」女性はアンを抱きかかえて、広い庭に出ていく。アンは食べ終えてすぐに寝てしまったのか、女性に体を預けてくっついている。今日は気持ちの良い陽が出ていて、洗濯物がよく乾きそうだ。


 僕は急いで階段を降りて、かごの方に走っていった。



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