第33話 ヴァンパイア伯爵と冥府

 魔王の時とは違う緊張感を感じながら、私達はヴァンパイアのBOSSが居る部屋に入る、適度な緊張感を滲ませベルが警戒して入りながら剣を抜く、大きくドーム型の部屋は広くそして前方の広場の奥には、棺(ひつぎ)らしき大理石(だいりせき)らしき物と祭壇に、地面には新しい血の跡らしき黒く見える染みが在る、そしてドームの真ん中に到着すると周りにどんよりとした青くも揺らめく炎が立ち上がる。

 何かの演出の様に次々に青い炎が、照明の様に松明の灯(あか)りの灯火(ともしび)の様に光り、祭壇の様な場所に在る大理石の棺がゆっくりと開き中から異彩を放つ物が現れた。


「また新たな食事が来たか………………さっきは、何やら我輩に聖なるダメージを受けたが………」


 響き渡る声は男性とも女性とも言えない声であり、優雅に大理石の棺から起き上がり此方を眠そうな目で見るが、ベルやチビッ子三人もだがプリムローズさんやシャルロッテさんもポカンとしてる、そして此方を見たヴァンパイアらしき者全員爆笑を堪えるかの様に地面を殴る、まあ分からなくは無いが緊張感を持とうな皆。

 まあ笑いたいのは分かるが、どんな姿かと言えば頭には黄色や赤に緑とヤバい、昔のデスメタルの様なカラフルヘアーだが、髪と言うよりは草と言って良い草の葉の様な髪は爆笑必須、何時もはおしとやかなプリムローズさんやシャルロッテさんが、腹筋崩壊クラスに爆笑を堪えてた、分からなくもないがシリアスに現れた割に髪型から笑えるしからね。


 肌はダークブロンド系の肌で、まあまあ鈍色をした灰色の古い石像をイメージかな、目は真っ赤なのはお約束として服装は襟を立てた紫色のローブに、短足でブカブカなシルク系の貴族ズボンは何か道化にしか見えんし、ローブはセンスが無いとしか思えないし羽織ってるだけなので、上半身半裸ローブ変態でしかない。


「上半身半裸変態」


 ベルが言っては成らん一言を言うと、全員が腹筋を崩壊しそうな位我慢しながら、爆笑を堪える。


「……ベルさんそれは……クッ……ぷっ……」

「ベル兄ちゃん、それは言っては………」

「息が………息が…………クフッ!」


 プリムローズさんは、笑いのツボにハマったらしい、あとシャルロッテさんとクラーラは後ろを向き笑いが止まらなく成ってるみたいだけど、今飲み物を飲んでたら大惨事だっただろうな。


「下等な人間よ、この高貴な我を愚弄するとは良い度胸だ、死を持って……………そこに居るのはまさか此の嫌な気配、貴様は聖女か!?」


 シャルロッテさんは、笑いを堪えながら言う。


「そうですけど………ぷす………くく」


 口の前を片手で覆い、笑いを堪えるシャルロッテさんの態度に、モンスターヴァンパイアはキレながら言う。


「小馬鹿にしおって、我はヴァンパイアの伯爵で在るぞ!!」

「はくしゃ………」


 怒りをあらわにして叫ぶ、自称ヴァンパイアの伯爵…………伯爵には見えん服装のセンスだな……………爆笑したくなるわ、私は普通に伯爵と聞いて更に腹がよじれそうな笑いを堪える。


「そこの人間の男、何か昔に来たサガラて奴に似た髪の色だな、しかも奴と同じく我を見て笑うとは失敬な所も似てる、貴様まさかサガラの子孫か!」


 私は真顔で返した。


「そんな奴は知らんし、私はそんな奴の子孫ではない、違う次元から来た人間だからな」

「何だと!?」


 モンスター自称ヴァンパイア伯爵が、驚愕の顔に成る。


「貴様はあの忌々しい、創造の女神の遣いかぁ!!」

「創造の女神? 高次元体の女神様なら、数柱知り合いですが?」

「「「「「はぁ!!」」」」」

「何だと!?」


 うっかり喋っちゃったが、まあ聞かれても黙秘すれば良いや、何か慌て出す自称ヴァンパイア伯爵、何処からかレイピアの様な細長い剣の様な物が浮遊し、自称ヴァンパイア伯爵の手に収まる。

 剣先は注射器の先の様な先端で、どう見ても刺したら血を吸引するにしか見えない剣だ…………ヴァンパイアだし、ゆっくりと浮遊し大理石の棺桶から出て地面にゆっくりと降り立ち宣言する。


「貴様達は、我が逃がす事なく皆殺しにしてやる、我の糧にするまでもなくな」


 そしてシャルロッテさんが、自称ヴァンパイア伯爵に言う。


「貴方を浄化しましょう」

「また排泄物を、我に掛ける気か!」

「そんな破廉恥な事は、普通にしませんよ!!」


 ヴァンパイアに排泄物を掛ける、前回の聖女て一体………全員同じく思ったらしく、笑いが収まり、シリアスに雰囲気に変わる。


「何か汚いな」

「汚物まみれのヴァンパイアて事?」

「どんな浄化かは知りませんが、滅んで下さい」

「「「汚いヴァンパイアを、斬らずに済みそう」」」

「ばっちいのに、攻撃せずに済みそう」

「下等な人間のクセに、我を馬鹿にしおってぇぇぇ!!」


 ブチキレ地団駄を踏む汚物の自称ヴァンパイア伯爵は、シャルロッテさんが放つ浄化の光は、変態汚物ヴァンパイアを飲み込み。


「グオォ~さっきの痛みは、貴様が犯人かぁー!!」

「汚いから、滅んで!!!」


 さっきよりも強い光で部屋を照らし、そして変態汚物ヴァンパイアの自称伯爵は、姿を光に呑まれて消えて行った、塵すら残らずに光の中心で祈りを捧げるシャルロッテさんにより、滅びたヴァンパイアは光が収まっても姿は無い。


「浄化完了です、一応瘴気も祓いますね」


 地面から光の雨が天に上がる様に、美しく光輝きながら瘴気も祓い一応この場所を目印を付け、あとで何かあった場合の緊急の手段を祭壇とか棺周りに聖水で浄めてから、設置した。


 ベルが宝箱を見付けたが、何故か変なポーションらしきのとかしか無かったらしい、因みに誰も欲しく無かったしベルが泣きながら所有する事に成った、そして最後に十字路の右に行くがもう夕刻なので翌日に進む事にした。


 翌朝ベルを先頭に、残り三枚の地図を見ながら、冥府のダンジョンと書かれた地図を便りに、不気味な雰囲気を放つ地下に向けて行く、知り合った長老達に危害を与える様なあの変態ヴァンパイアみたいなのが、気味の悪い場所から現れても困るからだ。



 【冥府一階層】


 ・冥府のダンジョン

 生前悪意を持ち人を一人殺害した者、罪は軽いが魂が汚れた罪人の魂が彷徨さまよう場所、冥府には罪の重さ関係なく地獄に堕ちた罪人がモンスターに成った者たちが、罪の業火で魂が焼かれてもまだ罪を本来なら、魂が懺悔と救いを得られるまでモンスターとして倒されるハズの魂が彷徨う、それは本来の機能を失い冥府の王が仕事をしてないからである。



「何か気味が悪い所ね」

「一応浄化しますね………」


 グゲギャァァァァ!!


「…………」

「「…………何か、おぞましい何かが聞こえた様な?」」

「「「モンスターかな?」」」


 揺らめく不思議な蒼白い炎の松明たいまつらしき物、そして骨の様な色をした大理石の壁広がる、広い通路の冥府のダンジョンはシャルロッテさんの浄化でも、何故かまだ暗いのは仕方ないがモンスター反応は無い。


「何かモンスターのドロップ品、禍々しいですよ史郎さん」

「僕は触りたく無いな………」


 魔物らしき骨の仮面と、波型のソードや黒のコアクリスタルが散らばってる、一応回収しダンジョンは広いから奥の手を出す、上のダンジョンは乗り物には向かない地形だが、骨ぽい大理石の様な床なら話は別、チビッ子には子供用の自転車は階段では浮遊し降りないでも乗ったまま進める、因みに魔王攻略戦では移動スピードの大半を担ってる。


 浮遊バイクはベルとプリムローズさんは、アンナに運転や守るべき最低限のマナーやルールを叩き込んでる、因みに私のサイドカーにはシャルロッテさんが同乗する、何かプリムローズさんからプレッシャーを感じるが、チビッ子三人は右側をベルが持ってる地図を写したのを見ながら、宝箱やドロップアイテム回収をする。


 ベルは一人左側に、私とシャルロッテさんは一応冥府一層のボスが居るか確認後、先に二層に向かうがボスが居た場合シャルロッテさんの護衛として、プリムローズには居てもらう。


「チビッ子勇者に、罠解除のスキル無かったよね?」


 ベルが確認の様に聞く。


「大丈夫だよ、ベル兄ちゃん」

「僕達は最近、色々な魔法覚えたから」

「罠探知魔法を試したいし」

「………僕の今までの苦労て………」


 項垂れるベルに「どんまい」と言う、純粋な三人のチビッ子勇者に更に項垂れるベル、だがベルの熟練した罠解除と此れから魔法を熟練する勇者チビッ子三人では、経験差が在るがクラーラは基本ラッキーガールな為、宝箱の罠では怪我を負わないが、ミミックが居た場合はミミックが血祭りに成り返り討ちは必須だ。


「一時解散」

「良し宝探しだ!」

「ベル兄ちゃんよりも探すぞ」

「チビッ子三人に負けるかよ!」


 こうして三方向に別れた、私とシャルロッテさんにプリムローズさんは、二階層に向かう場所まで行き数十分で到着、途中禍々しい宝箱は無視をして来たが全くフロアーボスは居ないが、コアクリスタルが転がってる以外は何もない。


 冥府二階層も変わらず、シャルロッテさんに浄化して貰いそしてドロップアイテム回収と、浄化班に分かれて冥府初日で五十階層に到達、この日は全員風呂で疲れを癒し戦利品の一部をお金に変え、携帯駄菓子や飲み物に携帯食をチビッ子三人の渡した、因みにベルは基本大量に物を買い込んでるので必要無いが、後でベルにはお金を渡しておこう。


 翌日冥府のダンジョン二日目は、朝と昼食以外は浄化とドロップアイテムや宝箱探しをし、シャルロッテさんの無双は続くがたまに紅茶でリフレッシュしたり、甘いケーキを食べて張り切ったり護衛が要らないので、一日目途中から宝箱の中身を回収してるプリムローズさんが居ないので、何故か甘え上手なシャルロッテさんを子猫を撫でる様に、頭を撫で撫でして私が久々に得をする。


「癒される~」

「………(私が癒されてるのだが、まあ猫を長く撫でて無いからシャルロッテさんの頭を撫でてると、やはり落ち着くな…………本人には言えないが)」


 シャルロッテメインヒロインエンド、確定か?

 まあそんなに簡単でも無いが、シャルロッテは史郎の好感度をフリージアに近付きつつあった、因みにシルヴィアは史郎の好感度は伸び悩んで居た、頑張れシルヴィア此のままではタイトルのヒロインは、髪質が近いシャルロッテに成ってしまうぞ。


 まあまだ他にも、同じ髪質のヒロインが出ない確証は無いが。


 さて史郎とシャルロッテは最後の階層、百八階層に居たが夕方近かったし一応浄化はしたので、セーフティー空間でセーフティーハウスを出して一休み、恐竜のモモ肉の唐揚げを柔らかい肉質の部分を唐揚げ粉で揚げて、先に来たチビッ子勇者は手洗いやうがいをし先に汗を流しに行く、シャルロッテさんとクラーラが先に入り次に帰って来たプリムローズさんが入り、次に最後に帰って来たベルとアルスとルークが入り、食後に私が風呂に浸かるが何かぬるい気がするのは何故だろうか?


 久々にアルスとルークと、何故か年齢が離れた兄弟の様に寝る、一応クラーラ対策に鍵は三重にロック済みだ、因みに廊下が二重ロックで内部は私の許可しないと開かないロックにしてる、因みに魔法でも解除不可のにガリレオさんに作って貰った。


 翌日冥府のダンジョン三日目、遂に百八階層の奥からする恐怖と絶望の気配の元に殴り込む、そうベルやチビッ子勇者三人が神殺しの称号を獲る戦いが幕を開ける。


 次回に続く。


 ・冥府のダンジョン


 本来は浄化無しでは、数ヶ月掛かるダンジョンだが全体攻撃の光魔法や、規格外の冒険者以外は苦戦し命を落としかねない危険なダンジョンであり、とある存在が自身の復活の為に穢れた人間の魂を手に入れる場所である、本来の冥府に戻れば冥府のモンスターを倒しに来る勇者の経験の糧として、本来の機能を果たす筈だった。

 

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