7. 回顧録:情報部所属の軍人
あの騒動を覚えているかだと?
忘れられるはずがないだろう!
私がどれだけの迷惑を被ったと思っているんだ!
出会い?
あいつとの出会いのことか?
……思い出すだけでも腹立たしい。
ストレスで胃がムカムカしてくる。
あいつが情報部に乗り込んできた時、たまたま私がその場に居合わせたんだ。
そう、あの時、余計な口を、挟まなければ!
こんな苦労を背負い込むことは無かったんだ!
落ち着いて冷静になれ?
私は冷静だ。
そう、長きに渡って艱難辛苦を乗り越えてきた私が、そう簡単に取り乱すわけがない。
出世街道に乗れたのだから良いだろう?
そういう良い点だけに触れるのは不公平ではないかね。
そもそも軍人として、部外者への情報提供を行うことは問題だ。
ましてや、軍で上司に逆らうなど正気の沙汰ではない。
あいつがそれを強要したことを忘れないで欲しい。
昔話と言えば、あの時に配送計画を守るためにどれだけ苦労したことか。
国内を駆けずり回るだけでは足りず、部隊を率いて銃撃戦までこなしたんだぞ!
ゴードンがいたからまだ何とかなったが、なんで平時の国内で複数の武装勢力と戦うことになるんだ!
しかも、戦闘中に他の勢力が強襲してくるなど、戦地でもそうそうお目にかかれないだろう。
乱戦の中、命があっただけでも大したものだ。
その後も、事あるごとに大臣や元帥閣下から呼び出され、本来の指揮系統を無視して仕事を振られた。
直属の上司と板挟みにされた上、それでも両方の面子を維持しながら仕事をこなす日々!
君にこのストレスを理解できるのか?
お偉方に逆らえるはずもなく、思いつきの無理難題を振られ。
上司からは厄介な仕事に遠慮なく巻き込める使い勝手のよい部下として扱われ。
薄氷を踏み抜けば、文字通り全てを失い転落する。
そんなギリギリの状況の中、あいつは余計な仕事を放り込んで来るんだぞ?
恨み言の1つくらい言う権利はあるはずだ。
隣国、しかも大国との共同案件など関わりたがる者はいない。
国家の威信もかかっているとなれば尚更だ。
第三国からちょっかいを出されることは珍しくもない。
ろくに相談する相手もいない中、仕事を積み上げられ、周囲に振り回される人の気持ちが分かるかね?
私がこの苦難を乗り越えたのは事実だ。
確かに出世はしたし、同年代で私に並ぶものは存在しない。
だが、覚えておくと良い。
階級の高さは、失敗した時の責任と処罰の重さに比例すると。
なに、また頼み事があるだと?
…インタビューじゃなかったのか?
ついでだからと頼まれたと。
.........いい加減、あいつを甘やかすのは止めたまえ。
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