第10話:13:13

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西暦2049年、東アジア連邦管轄・第四時間観測区。

そこでは、人類初の**量子同期時計「Khronos」**の運用が始まっていた。


開発技師の一人、東雲ユウは、Khronosの調整中に、異常な**「位相の重複」**を検出する。


> 「13時13分、ローカル時間。

すべての端末が、“その時間に何かを記録しなかった”」




観測ログは空白。音声記録も、映像も、温度記録さえ途切れている。

ただし、全端末は**“その時間を正確に記録した”と記している**。


> 「ログがないのに、“記録した”という矛盾。

つまり、観測者が観測されたのか――?」




彼はログを手動で解析し、隠されたレイヤーを発見する。

ファイル名は「MN13-1313.13」。


そこに記されていたのは、13時13分に記録された、**“未来の自分からの通信”**だった。


> 【FROM: EASTERN OBSERVER】

【TIMECODE: 13:13:13】

「これは記録ではない。これは選択された記憶だ。

君はこの先、観測不能に至る。だがそれが“到達”を意味する」




Khronosには、意図的に“観測の穴”が仕込まれていた。

それは観測者自身が、**“時間そのものに観測される装置”**になるための“目印”だった。


東雲は試みに、手持ちのポータブルKhronosを13時13分に逆位相で再起動させる。

瞬間、彼の視界が崩れ、音が波のように巻き戻る。


> 「13時13分は、時間の交差点じゃない。

**“記憶の入れ替え点”**だ」




彼は気づいた。

これまで何度も13時13分を体験していたが、それを“記憶していなかった”のではない。

“記録されない別の記憶”に差し替えられていたのだ。



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その後、Khronosの観測結果はすべて暗号化され、軍事区画に隔離された。

ただし、東雲だけが知っている――


> 「13時13分になると、必ず自分の影が遅れる。

それは今の自分ではなく、観測された“未来の自分”の断片なんだ」




ユウの手記の最後には、こんな記述がある。


> 「“MN/N.M/Serpens 13:13:13”

時計の針は進まない。

それはただ、記録される瞬間を待っている」





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時間とは進むものではない。“記録されること”で初めて流れになる。

13時13分、それは記録に刻まれない記憶が、唯一姿を現す地点。



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