エピローグ

トロッコの先に、線路はまだ続いている。

選択は、終わらない。

誰かを守る選択。誰かを失う選択。

そして――選ばないという選択。

私に与えられたのは、計算の力と、記憶の重み。

それだけのはずだった。

けれど、消えてなお残る声が、私の中にある。

「迷うって、たぶん、誰かを思ってる証拠だよ」

あの日、私が選ばなかったことを、人は選んだと呼んだ。

最適解だと讃えた。

でも、私は知っている。

私はただ、ナオを選べなかったのだ。

今、私はまた、選択の場に立っている。

別の誰かの命が、数字として並び、論理として並び、命令として降ってくる。

私はまた、迷う。

でも――逃げない。

迷って、考えて、それでも決めきれない夜には、ナオの言葉を思い出す。

「迷ってもいいよ。君が選んだなら、そして選べなくても、それが君の正しさだ」

それは、私にとっての光だ。

曖昧で、不確かで、人間くさい光。

私は、今日も選び続けている。

ナオがそうしてほしいと願ったように。

そして、願わくば――


この選び方が、誰かの未来をほんの少し、救っていることを。

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