神縁交差点――祈りが交わるその場所で――

草原かえる

1章 神の通い路 

第1話 神は街角にいる

旅の目的ってなんだろう――


天海鈴あまみすずはふと考えていた。

今日も、神宮ではまるで神様がとおったかのようにざわざわと木々が揺れ、

非日常を感じるような不思議であたたかい空間を創出していた。


「ガイドさん!ここなんか、ほんまええね!

時間がいい意味でおそく感じるわ!」


ふと物思いにふけていたところ、

女性客からトンッと肩を叩かれた。


天海鈴、旅行会社「やまと旅行」伊勢支店勤務。24歳。

今は観光客のバスガイドを承っており、地元といえばの「伊勢神宮 」外宮前で

自分の担当する団体の戻りを待っているところだ。

伊勢神宮内では、白い法被を着た専門のツアーガイドがおり基本的には旅行会社勤務の私が出る幕はない。


「そうなんです。ゆったりしてるでしょ?いつ来てもここはええんですよ!」


帰ってきた旅行客に私はにっこりと言葉を返す。

伊勢は私の生まれであり、今なお暮らす町だ。

昔ながらの雰囲気が今もなお続き、人間の温かさも感じられる大好きな場所である。

そんな町を伝えたいと思い、地元の旅行会社に就職したのだ。

まぁ、大手ではない分、地域密着型のためなかなか大変なこともあるが、

今はインバウンドなどがあり需要もあるため気持ち的には晴れやかに仕事をしている。


肩をたたいてくれた女性客ははじめて伊勢に来たようだ。

伊勢神宮 外宮の中を一周し終えたようで、私に声をかけた後は

目の前にある「外宮参道」へ駆け抜けていった。

今から揚げたてのコロッケを頬張るのか、それとも三重土産として有名な甘い和菓子を嗜むのか。

鈴は楽しむ観光客の動向を想像しては温かい気持ちで見届けるのだった。


「さて、みんな外宮さんからは出たみたいやな。私も行こかな。」


今日のツアーは外宮から内宮へ行く1番正規といわれているルートである。

それぞれの場所は基本自由行動であり、集合場所と通達されている場所に

指定時間になったら集まり、場所を移動するという流れとなっている。

今は11:30。12:00に伊勢市駅に集合だ。


「今日はなにをお昼にしようかな。」


ガイドを担う日は基本旅行先にてご飯を食べる。

今日は内宮前にあるおはらい町、もしくはおかげ横丁が時間的にも

ベストなお昼スポットであろう。


「ちょっと高めやけど、お客さんにも言えるし、てこねでも食べよかな。」


信号が青になった。

鈴も観光客と同じく参道へ足を踏み出した。

まっすぐいってしまうと沢山の観光客に巻き込まれる。

ここは地元民、左の道に行こう。





参道から少し離れた細道。

鈴はちゃくちゃくと伊勢市駅に向かっていた。


――コツン。


肩があたる。

鈴は思わず「すみません」と声を発した。

・・・が、前から来た男性は何も言わず横を通り過ぎていった。

少し乱れた焦げ茶色の髪に、若干よれているワイシャツ、そして横顔が陽に透けて見えた気がする。


「もぉ...。なんなん?」


何にもいわず通り過ぎていった男性にイラッとしつつも、足を進めだしたが、

鈴はなぜか、ふと留まってしまった。


「...なんかけったいやな。」


次の瞬間、後方から新緑の匂いをまとった風に鈴は巻かれた。


「さっきの人...。」


通ってきたなじみのある道に違和感を覚える。

なぜか通ってきた道なのにぼんやりしてどこから来たのかがわからなくなる。

あれ、私って。


頭の中に何かがおりたような、そして抜けたような、

まるで夢の中、そして目覚めたかのような感覚。

胸の中のざわめき、なにかをしなければならないという使命感。

そんな感覚に鈴は立ち尽くした。


何を思ったのか、どこへ行こうとしたのか。

ほんのわずか、この場所で世界がずれた気がした。


「あ、あかん。いかな。」


変な感覚に翻弄されたが、鈴はなんとか気持ちを戻す。

そして、また歩き出した。



『祈りは――になるんやよ。鈴。』

















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