『とりかいさん』 

 ノノちゃんの生きもの好きはママゆずりだ。ノノちゃんのママも『いきもの』が大好きで、とてもくわしいらしい。

 そんなノノちゃんのママのススメで、今日きょうは人にうことになっている。 


 名前なまえを『とりかい』さん、と言うらしい。鳥が好きそうな名前なまえだと、ヒナちゃんは漠然ばくぜんと思っていた。


 ヒナちゃんのうち片田舎かたいなかの小さなまちにあるのだが、今日はノノちゃんのママがくるまを出してくれるのでヒナちゃんはワクワクしながら車のそとをながめていた。


 田んぼやはたけばかりの風景ふうけいが、コンクリートづくりの建物たてものおおくなってゆき、道路どうろもツギハギだらけの走りにくい道から、アスファルトの走りやすい道へと変わっていった。


「わあ~! ノノちゃん見て!!あの建物たてものたかいね〜!!」

「うんうん、でもあんなマンションじゃきっとペットなんて飼えないよ!」

「そうなの?」

「まわりに『迷惑めいわく』がかかるからダメなところがおおいんだって!」

「そうなんだ!?」

「そうよ〜? 鳥さんくらいならまだ良いけど、ワンちゃんやネコちゃんはムダきするからムリなところが多いみたいね? それでも最近さいきん入居者にゅうきょしゃってきていたり、ペットブームで普通ふつうえるところもえてるみたいだけど、まだまだみたいだし、実際じっさいエレベーターの中で糞尿ふんにょうしたりして問題もんだいになったりしているらしいわよ?」


 ノノちゃんのママ(以後いごノノママ)がくわしくおしえてくれる。


「ええっ!? エレベーターの中で!? それはやだなぁ⋯⋯」

「ペットを飼うなら最低限さいていげんのマナーはまもってほしいわねぇ〜」


 くるまの中でも『生きもの』の話でり上がる3人であったが、そんな話をしているあいだ目的地もくてきちいた。


 大きなショッピングモールない併設へいせつされている大型おおがたのペットショップだ。


 ペットショップと言うだけでもワクワクしすぎておどってよろぶヒナちゃんだが、大型おおがたのペットショップのおみせひろさを見て、言葉ことばうしなった。


「⋯⋯」

「ヒナちゃん?」


 それを見てすこ心配しんぱいになったノノちゃんが、ヒナちゃんにこえをかけた。


「はっ!? からだをのこしてたましいだけがはしりまわってた!!」

「あはは♪ おっかしいの! でもなんとなくわかる!! 広すぎて全部ぜんぶまわりたいのにどこまわればいのかわからなくって、気持きもちだけが先走さきばしっちゃうやつ!!」

「そう! それ!! ふひひ♪」

「ちょっとあんたたち、見てまわるのはあとにして? わざわざともだちに時間作じかんつくってもらったんだから、さきにするべき用事ようじを済ませるわよ!?」


 ノノママは今にも走り出しそうな二人の頭をおさえた。


「ふむむむむむむ〜」

「ふひゅうううぅ〜」


 どうやらたっていたようで、二人とも興奮こうふんおさえきれていない。


「ほら! インコのところだから行くよ!?」

「インコ!?」

「行く〜♪」


 と言ってれてこられた鳥コーナー。大小さまざまな鳥がいる。

 ジュウシマツ、キンカチョウ、文鳥ブンチョウなどのスズメの仲間なかまや、セキセイインコ、ボタンインコ、コザクラインコ、オカメインコ、サザナミインコ、オキナインコ、アキクサインコ、ナナクサインコ、シロハラインコ、ウロコインコ、コガネメキシコインコ、セイガイインコ、モモイロインコ、ヨウム、コンゴウインコなどインコやオウムの仲間、猛禽類もうきんるいいたるまでヒナちゃんが見たこともない鳥がたくさんおります。

 モモイロインコなどはケージから出して止まり木に止まっているので、とても近い距離きょりだ。『さわらないでください!』と書いているが、近すぎて思わず手が出そうになる。


「ヒナちゃん、ノノちゃんもさわっちゃダメよ?」

「う、うん!」

「でもママ? どうしてダメなの?」

「それはね? 二人が見ず知らずの人にベタベタさわられたらうれしい? いやだと思っていても、言葉ことばつたわらない相手あいてだったらどうする? みついても文句もんくは言えないよね?」

「え? みつくの!?」

「そりゃあいやなことされたらおこることもあるでしょう?」

「そだね⋯⋯」

かりみつかない子だとしたら、この子はいやだとは思っていても我慢がまんしているかも知れないでしょ?」

「うん」

「そうしたら、ストレスで羽根はねいちゃってハゲるかも知れないよ?」

「え!? 鳥さんハゲちゃうの!?」

「二人はお父さんがストレスでハゲちゃったらどう思う?」

「やだ!」

「うん、やだ!」

「そうでしょ? それじゃ、鳥さんだって、ネコさんだって、ワンちゃんだって、いやがるようなことはしちゃいけないわよ?」

「わかった!!」

「わかった!!」

「二人ともいい子ね〜!! どちらも優香ゆうかの子かな?」


 鳥の世話せわをしていたエプロンをつけた店員てんいんさんが、こちらにがついて話しかけてきた。


「あ、幸子さちこ! 今日きょういそがしいのにわるいわね? うちの子はこっちの『ののか』で、こちらは今日きょうあなたに相談そうだんってしいと依頼いらいの『可愛かわいひな』ちゃんだよん♪ 『ノノちゃん』『ヒナちゃん』てんであげて?」

「ノノちゃんに、ヒナちゃんね!? わかった♪ ボクがノノちゃんのママのおともだちの『幸子さちこ』だよん♪ ボクのことは『サっちゃん』て呼んで? 今日はヨロシクね♡」

「よろしくおねがいします!!」

「よろしくおねがいしま〜す♪」

「よしよし、ボクが二人を立派りっぱな『とりかいさん』にしてあげるぜぃ♪」


 と言って幸子さちこ以後いごサっちゃん)は二人をでた。


「あれ? ノノちゃんのママ? 『とりかいさん』て人の名前なまえじゃなかったの?」


 ヒナちゃんはノノママにかってくびかしげます。


「うふふ♪ 『とりかいさん』て言うのはね? 『鳥さんを飼う人』『鳥さんを大好きな人』をみんな『鳥飼とりかいさん』って言うんだよ♪」

「へぇ〜!?」

「じゃあ、サっちゃんは鳥さんを飼ってるんですか?」

「そうね? うちはずっとオカメインコを飼っているけど、今までに文鳥もセキセイインコもコザクラインコも飼ったことがあるかな? あとここの子たちもみんな世話せわしてるけどね♪」

「えっ!? すごい!!」

「ふふん、だから今日は何でもいてよ?」

「はい!」


 ヒナちゃんはリュックに入れてきた『魔法まほうしょ』を取り出した。

 それを見てサっちゃんは目をまるくして、ゆっくりと細めた。


魔法まほうしょ!?」

「はい。これは『魔法まほうしょ』と言って、セキセイインコを召喚しょうかんするために必要ひつようほんなの。この本にセキセイインコを飼うための必要ひつよう情報じょうほうをすべてむと、パパがセキセイインコを召喚しょうかんしてくれるんです!!」

「へえ!? ステキだね!?」

「うん♪ だから今日はいろいろおしえてください!!」

「わかった! ヒナちゃんが無事ぶじにセキセイインコを召喚しょうかんできるように、ボクがお手伝てつだいするよ♪」

「はいっ!」


 サっちゃんはヒナちゃんの頭をグリグリでつける。ヒナちゃんのあたまがそれにつれてフリフリ動く。


「よし、それじゃあこの子たちを見てみて?」


 そう言ってサチコは鳥かごではなく、プラケースに入った鳥を見るように言った。


 見るとプラケースの中には小さな鳥のヒナたちが大きな口をけてヒヨヒヨといている。


「わあ♪ 鳥のあかちゃんだぁ!」

「そう、これはセキセイインコの赤ちゃんたちだよ? すこかおちなづけてにおいをいでみてよ?」


 二人はプラケースの上の開放部かいほうぶに顔を近づけた。


「どう?」

「お日様ひさまみたいなにおいがする♪」

「なんだかいい匂い♪」

「よしよし、二人とも合格ごうかく!!」


 とサっちゃんはにやりと悪戯いたずらわらった。


合格ごうかくって何がですか?」

「うん、『鳥飼とりかいさん』としての入学試験にゅうがくしけんだよ?」

「ふぇ?」

「ははは♪ インコには独特どくとくにおいがあってね、鳥飼とりかいさんは全員ぜんいんと言って良いくらい、この『鳥の匂い』が好きなんだよ♡ もちろんボクも好きでね? ぎて『インコしゅうアイス』もべたことあるぜぃ♪」

「ええっ!?」

「インコしゅうアイス!?」

「うん、ちょっとマニアックなお店でってるアイスなんだけどね? しすぎてネットでせちゃったよ♪ わはは」

「インコさんのあじがするの?」

「ううん、今いだインコしゅうあじだよ? 鳥飼とりかいさんは絶対ぜったいにインコは食べないからねっ!?」

「インコしゅう!!」


 そう言ってヒナちゃんたちは、もう一度いちどプラケースにかおを近づけた。目をつむって堪能たんのうしているようだ。きっとインコしゅうアイスのあじ想像そうぞうしているのだろう。


「ちなみにボクはこの『セキセイインコのヒナの匂い』はインコしゅうの中でも極上ごくじょうだと思っている!!」

「えっ、極上ごくじょう!?」


 二人はすこおどろくが、ノノママは自分じぶんもわかると言ったふうでクビをたてにっている。


「ほら、特別とくべつだぞ? そっといでみそ?」


 そう言って、サっちゃんはプラケースの中から1のセキセイインコのヒナを取り出して、両手りょうてやさしくつつんで見せてくれた。

 その手の上から二人は交互こうごいでみた。つづいてグッとノノちゃんをしのけて入ってきたノノママもいだ。


「ご、ごくじょうだ⋯⋯」

「うん、これはごはんべられる!」

「おかわり!」

「はい、おしまーいっ!」

「ええ〜っ!?」


 ノノママはサっちゃんに不服ふふくとうてるが、問答無用もんどうむようにヒナはプラケースにもとされた。


 キラーン☆


 ヒナちゃんとノノちゃんはワクワクがまらず、ひとみかがやきはすばかりだ。






───────────────────

【インコ用語】(※はインコに限りません)

『鳥飼さん』(とりかいさん)

鳥を飼っている人、愛鳥家を指す言葉です 犬や猫と比べて、鳥はペットとしてややマイナーですが、その魅力に惹かれて飼う人が増えており、「鳥飼さん」という言葉で愛鳥家を指します

その鳥への愛の深さから、鳥飼さんは鳥をペットとしては扱わず、『コンパニオンバード』として鳥と人間と密接な関係を築き、生活を共にすることで喜びを感じております 飼い主にとって、大切な家族の一員として、愛情を注ぎ、一緒に楽しい時間を過ごすことを目的としております


『ムダ鳴き』※

人間が『ムダ鳴き』と称しているだけで、犬、猫、鳥などがムダに鳴いたり吠えたりすることはありません これは動物が何を言っているのか人間が理解出来ないために生まれた言葉です

○ムダ鳴きの主な理由

・甘やかし:鳴けば飼い主が反応してくれると学習する。

・要求吠え:欲求を満たすために鳴いている。

・不安や恐怖:新しい環境や、留守番中に不安や恐怖を感じている

・ストレス:運動不足や、環境の変化などによるストレス

・認知症:老猫の認知症症状として、夜鳴きや無駄鳴きが見られる

・体調不良:体調が悪くて鳴いている場合もある

など

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る