二十六話 狩人、試験に挑む 其の弐

 アルマンダインがツカサ達が試験会場に戻って来ると残った30人は既に次の試験の準備を行なっていた。


「強いなアルマンダインとやら」


 ツカサは戻って来た、アルマンダインの前に立ち、目を見開きながらそう言うと彼はそれに反応を示す。


「一級【探索者】だぞ? 俺は。模範であり、強者でなければその階級を得るに相応しくない。ホシナミ・ツカサ、俺にそれを示せ。示せなければ、俺はお前を切り捨てる」


「何が何だかさっぱりわからんが、オレオレの【狩り】をするだけだ。どんな時でもな」


 彼もまた互いに目線で火花を散らすとアルマンダインは再び声を上げた。


「二次試験会場に移動する」


 アルマンダインが短く伝え、指を鳴らすと彼らはその場から一瞬にして姿を消した。


 そして、目を開くとそこにはとある迷宮ダンジョンの入り口に立っていた。


「二次試験は中型迷宮ダンジョンの踏破だ。配信を行いながら踏破を目指せ。パーティーを組んでも、ソロでやっても何しても構わない。踏破が出来た時点でそこで試験は終了。最初に辿り着いた者達だけが二次試験を合格とする」


 アルマンダインは何処からか袋を取り出すとそこから幾つかの瓶を取り出した。


「最近は【探索者】の死亡率が上がっている。本部や、専務庁から指示があって開発した緊急脱出道具ベイルアウトアイテムだ。瓶を地面に叩き付ければWDG本部に強制的に帰還することが出来る。ただし、割った場合はその時点で失格とする」


 アルマンダインは一人一人に手渡すと全員に行き渡ったことを確認し、再び彼らに視線を向け、声を上げる。


「説明は以上。試験開始!!!!」


 その言葉と共に30人の【探索者】達が一斉に動き出した。


 八階層以上十三階層未満、それが中型迷宮ダンジョンであり、アルマンダインの合図を聞き、一次を突破した強者達が一斉に入り口に向かい、歩き始めた。


 ツカサもまた、すぐに入り口に向かおうとした時、後ろから肩を軽く叩かれ、その方向を向いた。


 そこにはゴトーが立っており、彼らからとある提案をツカサは持ちかけられた。


「ツカサさん、俺と一緒に【狩り】に行かないか? 一ヶ月前の約束、思ったよりも早く果たせそうだし」


「そうだな。ふむ、ゴトー、それじゃあ、一緒に行くか! そうと決まれば急ぐに限る! 行くぞ! 久々の【狩り】だ!」


 ツカサの了承に連れられ、2人はパーティーを組み、迷宮ダンジョンへと足を踏み入れた。


***


 中型【迷宮ダンジョン】アストラ、それは至ってシンプルな構造をした迷宮ダンジョンである。階層ごとに複数の部屋に分かれてはいるが何処から通ろうが次回層に至ることが出来、トラップなども簡単に見破ることが出来た、らしかし、そのシンプルな構造とは裏腹に未だに踏破が成されないと言う歪な【迷宮ダンジョン】であった。


 一角兎アルミラージ迷宮ダンジョン内を駆け巡り、蛇鶏バジリスクが闊歩する。


オレの樹海に居た、奴らばかりではないかー!!!!」


 ツカサは有無を言わずにそれらを狩り、ホクホクと嬉しそうな表情を浮かべながらゴトーと共に【迷宮ダンジョン】を走っていた。


(アストラ、対象の出会ったことのある魔物をランダムで配置することで有名な未踏破の中型【迷宮ダンジョン】。まさか、ここが試験の会場になるなんて。よっぽど、一級と言う階級の地位が大切なのか?)


 ゴトーはそんなことを言いながらも手に握る片刃の剣を振るい、ツカサに付いていく。敵対する魔物を難なく切り裂くゴトーの剣捌きは以前、ツカサと出会った時よりも落ち着いており、大蠍を【個性スキル】も使わずに一撃でのした。


「ゴトー! 以前と違って空気が違うな!」


「あはは、そりゃ、どうも。まぁ、あの時は剣も折れちゃったのとまだ、【遺物アーティファクト】の準備も出来てなかったからね。少しだけ言い訳しようかな」


「ほう! 今持ってるのが【遺物アーティファクト】か?」


「そうだ。まぁ、能力は秘密。多分、使う羽目にはなるから楽しみにしておいてくれよ」


 現在、ツカサとゴトーは誰よりも早く迷宮ダンジョンの最前線へと至っており、二階層を突破しようとした。


「レベルが上がりました。ステータスを確認してください」


 ツカサは自身のレベルが上がったことが知らされるもすぐに次の階層へと向かおうとした。しかし、頭の中に一瞬遮ったアルコーンの姿を思い出すと自身が彼に勝てなかった事実が襲い掛かった。


 あの時、死ねなかったこと、そして、何より、自身が今、生かされていることを考える。次、アルコーンと出会った時、自分が必ず狩らなければ行けない、そう思うとその足を止めた。


「ステータス」


 ツカサが呟くと目の前に、自身のステータスを確認した。


――――――――――――――――――


【名前】ホシナミ・ツカサ

【レベル】56

次のレベルまでの経験値「25000」

『HP』3250→3300

『MP』0

『腕力』790→795

『耐久』740→745

『敏捷』1178→1180

『器用』90

『知力』100

『精神』550

【PP】5

【TSP】2400

個性スキル】なし

固有個性ユニークスキル我、狩人たらんプレデター・オリジン武器職人マスター・メイカー冥処の住人フォレスト・サバイバー言語統制バベル


――――――――――――――――――


「うお! やっぱり、すごいなツカサさん」


 突然、ツカサが開いたステータスをゴトーは後ろから眺めており、その数値の高さに驚いていた。


「これは高いのか?」


 ツカサは尋ねるとゴトーは首を縦に振り、自身のステータスを見せるために口を開く。


「ステータス」


――――――――――――――――――


【名前】ゴトー・ミキヤ

【レベル】45

次のレベルまでの経験値「900」

『HP』2000

『MP』150

『腕力』400

『耐久』500

『敏捷』500

『器用』70

『知力』90

『精神』300

【PP】0

【TSP】100

個性スキル火炎フレア

固有個性ユニークスキル冷華結晶ブリザード・ローズ


――――――――――――――――――


 2人は互いのステータスを見せ合うとツカサの数値がレベル以上になっていることが明らかになった。


「ふむ、オレとゴトーで何故こうも差が出ているんだ?」


「そうだなー。純粋にツカサさんは身体のスペックが高いんだと思うよ。ステータスが出来てから数値の可視化ってのがされて色々最初は大変だったんだよなー。まぁ、俺は今になって、その余波を感じることになるとはなー」


 ゴトーは一切の嫌味なく、感想を述べるとツカサはそれ聞き、自身のステータスを見つめていた。


(オレの過去、ここに来る前の70年間がこのステータスとなっている、そんなところだろうな。それであっても勝てなかったアルコーン。今までの自分では勝てない。だが、これはまだがあると言うことだな! ならば、伸ばそう! オレのこれからのステータスを!)


 ステータスにあるPPに手を置くと少しして、自身が上げたい能力に、割り当てる。


――――――――――――――――――


【名前】ホシナミ・ツカサ

【レベル】56次のレベルまでの経験値「25000」

『HP』3250→3300

『MP』0

『腕力』790→805

『耐久』740→760

『敏捷』1180→1200

『器用』90

『知力』100

『精神』550

【PP】0

【TSP】2400

個性スキル】なし

固有個性ユニークスキル我、狩人たらんプレデター・オリジン武器職人マスター・メイカー冥処の住人フォレスト・サバイバー言語統制バベル


――――――――――――――――――


 ステータスの上昇を確認するとツカサはそれを閉じた。


「うむ! これで決定! さぁ、行くか! 二階層へ!」

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