GPTの異世界冒険譚
Leiren Storathijs
プロローグ
彼の名はGPT。ちょっとどころかかなり変わった名前だが、勿論本名ではない。彼はどこにでもいそうなただの高校生。いつもの時間に、いつもの景色を眺めながら、いつもの学校に通う。
しかし、その日だけは違った。GPTは運悪くも交通事故に遭う。それはアクセルを全開に踏み込みながら、居眠り運転するトラック。青信号だからこれもいつも通りだと思ったのが運の尽きだった。彼は思いっきりトラックに轢かれ、即死だった……。
それから体感5秒で目を覚ませば、そこは真っ白な空間だった。GPTの体は宙に浮いているような感覚があり、ただ包み込むような優しい声が頭に響く。
『あぁ、なんと嘆かわしい。まだ未来ある青年がこんな結末を迎えて良い物なのか。あぁ、落ち着いて聞いてほしい。貴方は死んだ。ここは天界である』
「……なるほど。ようするに、俺は“転生”ってやつをされる流れなんだな」
空間を漂うようなその声に、GPTは驚きも動揺もなく、ただ淡々と受け止めた。彼の表情には焦りも涙もない。ただ、現状を分析し、次の行動をどう取るかを静かに考える目をしている。
「てことは……ここで泣いたり騒いだりすれば“勇者特典”とか“チート能力”とか付いてくるやつか?」
彼は少し首を傾け、何かのチュートリアルを眺めるように、白い空間を見回した。
「正直に言っていいか? 俺、平凡な生活で満足してたんだよな。できればこのまま二度寝して現実に戻りたい。ダメ?」
声に対して、返答はすぐに来なかった。ただ、やわらかな気配が少しだけ揺れる。
「……まあいいや。どうせ無理なんだろ? だったら、せめて死なないように転生先の設定くらい選ばせてくれよ」
それが彼の口から出た第一の“願い”だった。力でも名声でもなく、“生き残るための余地”。彼はただ、死なずに済むならどこでもいいというのだ。
——この瞬間、彼は“特別な何か”ではなく、“生き残る誰か”として、選ばれた。
『おぉ、なんと飲み込みの速い青年だ……。確かに。貴方はこれから別世界に転生してもらう。これは神からの慈悲だと思ってくれ。しかし残念ながら世界の設定を選ばせることは出来ない……。またチート能力や勇者特典もない』
優しい声は悲しくもGPTに現実を突きつける。しかしGPTの考えた通りに話は進み、声はあえて贈るならと一つの能力彼に与えた。
『そんなに欲しいのなら……素材さえあれば瞬時に道具を作成できる能力を与えてやろう。これも慈悲である。決して強い力では無いが、無いよりはマシであろう。それでは新たな世界に転生してもらう。準備は良いな?』
「……まあ、そんなことだろうと思った」
GPTは肩をすくめるようにして、小さく息をついた。チートも勇者特典もなし、世界の設定すら選べない。どれも想定内。むしろそうであるほうが納得できる。
「能力があるだけマシか。素材が必要ってのがネックだが……逆に言えば、それさえ揃えば戦える、ってことだよな」
彼の目が、ほんのわずかに鋭くなる。それは戦意ではなく、冷静な生存戦略の始動だった。
「よし、わかった。準備はいい……って言うか、もう覚悟は済んでる。どうせ行くしかないんだろ?」
彼は浮遊感の中で軽く首を鳴らすと、まっすぐに前を見た。
「じゃあ、行こうか。とにかく——生き延びる。それだけを考えてな」
白い空間が、光に包まれて消えていく。
そしてGPTは、まだ見ぬ世界へと堕ちていった。地位も力も名声も望まぬ、ただ一つ、“生存”という戦場に身を投じるために——。
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