殺意
赤い目をしたそれは、私の方を向いた。しかし、襲っては来ない。やはり噂通り、高校生位の男子しか襲って来ないのだろうか。私は『封魔の鍵』を握り締めた。しかし、何も起こらない。
「アノコハ…ドコ…、オカアサン、シンパイシテルノヨ…」
思ったよりもはっきり言葉を喋るんだなと、冷静になっている自分が何処かに居た。それでも、私の言葉に耳を貸すかと言われると、そうではないだろう。
「お兄ちゃんを、返してよ」
私は敵意を剥き出しにして『ふじみ様』に向かっていった。『ふじみ様』も、私の様子を見て襲いかかる。『ふじみ様』は私の命を奪おうとしていたが、その攻撃をぎりぎりで避けた。
胸から黒い何かが生まれ、私を飲み込んでいく。この湧き立つ気持ちに名前をつけるなら、『殺意』だ。
「『不死は枷、命を抑えし枷
生者は現し世に、亡者は常世に
その狭間のものは何処へ向かうのか
生の理を乱すものよ、その枷を解き放ち、あるべき地へ帰れ』」
詠唱をした瞬間、『封魔の鍵』から光線が放たれる。それが『ふじみ様』に当たった。命が弾ける音がした。
私は『ふじみ様』に殺意をぶつけて、殺した。この気持ちを知らないまま、大人になりたかった。
頭の中の回線が切れた。黒い感情から少しでも心を守る為に、自己防衛本能が働いたのだろうか。私はその場に
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