第4話: 猫と宝くじ

 息子が小学校低学年のころ。小さな子猫を2匹拾ってきた。

 オス、メス一匹ずつ。オス猫は白ベースの茶トラで、メス猫はキジ猫。ちょっと抜けたような顔のオスがニャンコさん、絶世の美女のメスがネコさん。かわいかった。


 手のひらに乗るような子猫。足元をちょろちょろするから何度踏みそうになったことか。甘えた声で私を探す姿は人間の子供と一緒で。2匹で協力して、近くの池から串に刺さった魚を持って帰ったこともあったっけ(釣り人さんから頂戴したのでしょう。まさしくどろぼう猫)。


 少し大きくなると性格に差が出てきて面白かった。

 ネコさんがお澄ましになる一方、ニャンコさんはやっぱりちょっと抜けていた。

 マムシにかまれて帰ってきた、あのときのパンパンになった顔!屋根から雪が落ちてくるな、と思って見上げたらニャンコさんの足がじたばたしてる!慌てて2階に上がってつかまえた冬のある日。

 馬鹿な子ほどかわいいというけれど、それは猫に対しても同じだった。


 当時は家猫といっても放し飼いだった。

 かわいいニャンコさんがなかなか家に帰ってこなくなった。帰ってきても、ご飯を食べてすぐ出ていく。家に閉じ込めているつもりでも、いつの間にか抜け出している。甘ったれた顔に野性味が帯びてきていた。

 そして、とうとう姿がなくなった。もちろん探したけれど、いつかこうなることは

なんとなくわかっていた。

 野良犬は少なくなっていたけれど、野良猫はまだまだ当たり前だった時代。オス猫は家を出る、そういうものと割り切るしかなかった。


 それから1年近くたったある日、ニャンコさんの夢を見た。どんな夢だったかは覚えていないけれど、ニャンコさんの夢。


 その1週間後に宝くじが当たった。

 ちょうどある程度まとまったお金が必要で、どうやって工面しようかと頭を悩ませていたとき。ちょうど、その必要な金額とほぼ同じくらいの額が当たった。


 春子に言うと、たまたまでしょ、と。繰り返し話して聞かせると機嫌が悪くなる。それって、ニャンコさんは死んだってこと?なんていい始める。

 そうかもしれないよね、厳しい世界に出ていったから。でも、生きているか死んでいるかなんて、もう知りようがない。そこじゃないのよ。

 私たちの愛情は間違いなく届いていた、ということ。


 わかっているよ。

 猫の恩返し。ありがとうね、ニャンコさん。






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