第5話 虚構を視る魔眼
迷宮・中層エリア“錯乱区画”。
セリアは目の前に広がる景色を前に、唇を噛んでいた。
「これは……構造が歪んでる。視界に映る距離と、現実の距離が一致しない」
この区画では、壁、天井、床のすべてが動的に変形する非ユークリッド幾何空間で構成されていた。さらに、視覚・聴覚・空間感覚に作用する催眠音波と脳波ジャミングが断続的に発信されている。
レオンが苛立ちを込めて叫ぶ。「クソッ、どこに進めばいいんだよ!」
「落ち着いて。ここは、“前進”という概念が通じないの。まずは私の《解析魔眼》で空間構造を……」
彼女の片眼が淡く輝き、周囲の構造を読み解こうとする――が、見えたのは、無数の矛盾と嘘。構造が存在しない空間、概念だけが積層されたデータの渦。
「……“答え”が、視えない……?」
今まで、どんな魔物も、どんな謎も、この眼で見抜けなかったことはなかった。けれど、今回は違った。
この迷宮は、“視られること”を前提として設計されていない。
「ようこそ、セリア・ルーヴェ」
不意に、迷宮中にアリシアの声が響く。
「あなたのスキルは観測による理解に依存している。でも、ここにあるのは“観測不能な真実”よ。目に映る構造は、すべてフェイク。あなたの魔眼は、正しすぎるがゆえに、錯乱する」
セリアは歯を食いしばる。
「だったら……私の目が、あなたの欺瞞を破るまでよ!」
彼女は自らの額にナイフを当て、魔眼の上に魔法刻印を刻んだ。《魔眼の臨界解放》。本来は禁術とされる、自らの網膜を情報変換装置として使用する補助術式。
その瞬間、彼女の視界に、空間の構造ではなく、**“設計意図”**が浮かび上がった。
「そう……なるほど。これは、迷宮じゃない。“デバッガーキラー”……!」
彼女は確信した。この迷宮は、人間ではなく、あらゆる解析スキルや観測魔術そのものを錯乱・殺害するための構造であると。
「でも、設計思想が視えれば、逆に突破できる……!」
彼女はレオンに向かって叫んだ。
「右斜め下、三歩! その先に“存在するけど不可視”の足場がある! 足裏の感覚だけを信じて!」
レオンが反射的に踏み出す。視界には何もないが、確かに「そこに」足場はあった。
そして、二人はこの空間の“バグ”を突いて突破に成功する。
だが、出口にたどり着いたその先――待ち構えていたのは、アリシア自身だった。
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