2話 スキル

ツルギが取り出したのはベッドの下に隠していた薄い本だった。


「結構特殊な物見るんだね……」


「ああああああああ!!!!!見ないでええええ!!!!!」


「ちょ待


俺はツルギから本を奪おうとした際にくっ付いていた野球ボール程の大きさの四角くて白い石を掴んでしまった、何か繊維のようなものがちぎれた様な感覚を感じた、蜘蛛の糸、レンコンの様な、これは何とも形容しがたい。


そのダンジョンコアとやらを手に取った瞬間、周りの壁に家具がひしゃげた。


「え


家にある物が、家そのものがコアにどんどん吸い込まれていく。


「あああああああああ!!!!ぶりぶりぶりゅりゅりゅりゅううううううう!!!」


遂に床までも無くなり、再び空へ投げ出された。


――


「おい!起きろ!」


幼いが力強い声に目を覚ますとツルギが顔を覗いていて、柄を両手に掴み振り下ろそうとしていた。


「やめろやめろ!起きてるから!」


何処かに硬い床に寝転がっているようで、体を起こすと、そこはビル街だった。


「クサキイバラ帝国キセキ市へようこそ」


街並みは東京と似てはいるものの、ビルに浮かぶ広告はスクリーンの様なものに映し出され、人や横を向くでっかい卵が空を飛び交っており、明らかに元いた世界とは変わっていた。


俺の近くに通ると、しばらく止まって方向を転換して行った。


「早く起きて道に出て」


ここは交差点の真ん中で、幸い俺達を注目する人々であの卵型の恐らく車の様なものは通って居なかった、そもそも大きな穴が何故か空いているので通れないだろうが。


「凄い数に俺達見られてるぞ、この穴は?」


「ツルギの着地跡、Sクラスダイバー2人が変なおっさん抱えながら空から降りてきたらそりゃ誰だって見るでしょうね」


「プリズムブレイクだ!」「かわいい〜」「ツルギちゃんは相変わらず血まみれだけど」


ひそひそ話を聞く限りかなりの有名人のようだ。


「警察だ」


青と白を基調とした鎧を着た奴らをツルギは見るとバツが悪そうに顰蹙しそう囁いた。


「ほら行くよ」


俺はサラに手を取られた人の間を抜けて行く。


――


「この世界には色々訳の分からない事が多すぎる!」


「おまいう」


「俺ん家はどうなった!」


「元の世界に戻った」


「そうか、それは良かっいや良くない」


ドラゴンに屋根をぶち抜かれて壁を爪でギッタンギッタンにされ扉の取っ手のねえ家が帰ってきたもんだから両親は絶望だろうな、まあ厄介者が居なくなったんだから代償だと思ってくれや。


「うんそれは置いといて俺はこれからどうすればいい?」


「コアを売りなよ、ダンジョンコアだったら高く売れるんじゃない、そのお金でのんびり暮らすんだね」


ツルギはそう素っ気なく言い捨てる、サラも頷いている様子で、変な事は言っていないのは分かる、だけど。


「いやいやいや、どうやったら元の世界に帰れるのか聞いてんだ俺は」


家に帰りたい、まだやってないゲームに見てないアニメがある、来季の予告を見てわくわくさせるだけで終えたくない。


「無理じゃない?唯一の帰れる手段が今無いんだから、そもそも帰れるか知らないどーでもいー」


「そんな……」


やっぱりツルギの言葉は心無い、手に持っている物に力を込める。


「ふっざけんなちくしょう!要らねえよこんなもん!」


ダンジョンコアとやらを壁に投げ叩き付ける、叩きつけられた時カランと手に持った重量とは裏腹に10円玉の様な軽い音を立て床に落ちる。


「くれるのありがと「貴方だけじゃない」


ツルギより先にサラは拾うと、俺の手を優しく握りコアを手渡す。


「貴方以外に1人他の世界からやってきたと言われる人がいるんだけど……」


「本当か?」


「その子は隕石のダンジョンだった、ある街の下に落ちて爆発は全てを覆って誰一人生き残らなかった、クレーターの真ん中に立っていたある一人の少女を除いて」


俺よりも辛い境遇の人が居る、そんな陳腐な理由では怒りを収められないが一先ず落ち着こう、手掛かりはある事だし。


それに今は帰れる方法か、生き抜く方法を模索する他無いのだから。


「そうかよ…それは災難だな、そいつの名は?」


「メテオラ・ベルカーナ、伝説のダイバーね」


サラの顔が少し引き攣った気がした。


誰だか知らんがそのメテオラに会えばいいのか?


そんな事を考えてる暇は無く、取り敢えずコアを売りに行くべく今はダイバーサポートセンターという建物に向かっている、そこはダイバーを支援する団体達が作った場所で現れたダンジョンを事務で管理してダイバーを派遣する施設らしい、ファンタジー物だとギルドってやつだろうな。


「ここ」


ツルギが指差した先は他のビルよりも何倍も巨大な建物だった、国会議事堂の形をした悪魔のような見た目だ。


「なんかめちゃくちゃ厳ついなあ、あれ何の鱗と角だ?」


自動ドアの上にはキセキ市ダイバーサポートセンターと書かれている。


「バハムートとかヒドラかな、全部Lランク」


「おー怖」


巨大な自動ドアを潜ると、カウンターに居た受付嬢が笑顔で手を振って出迎える。


「あーサラちゃんとツルギちゃんだ!今日も可愛いわ!」


「もーやめてくださいってケイラさん、あの今日も精算お願いします」


「はーい」


ケイラは虫眼鏡のような物を取り出すと、レンズから緑色した幾何学模様の魔法陣が飛び出し、石を覆った。


「…………………あら!Lランク相当じゃない、これだと買取額は2億イェンよ」


「「Lランク!!!!!!???2億!?」」


サラとツルギは目ん玉飛びだしゃ驚く、どうやら凄い事が起きている様だがよく分からん。


「どうする?2人で分ける?」


「いやこれはブオくんのお金だから、あっこの人新入りです」


「まさかこの人がLランクのダンジョンをクリアしたって事?」


「いや俺は…これ話していい?」


俺が異世界人なんて軽々しく言ったら、どっかの研究機関に命を狙われたりしないのだろうか?


「大丈夫、ここの人は信用出来るから」


――


「それがかくかくしかじかでして」


「なるほど、一応ですけど病院で体をスキャンされてみては?」


「どうしてですか?」


「メテオラさんもその…見て頂いた方が分かると思います、お代の方はこちらが出しますので」


「分かりました、ありがとうございます」


見て頂いた方が分かる、この言葉にワクワクしたのだが、ほんの少しだけ怖かった。


「それではダイバー契約の方ですね、書類にサインしてください」


「はい」


「それではこちらの端末に手をかざしてください」


カウンターにある四角い台の装置を前に出す、手のイラストが描かれている、先にサラが手を乗せた。


「スキルを手に入れてない人は適性が表示されて、既にスキルを持っている人はスペックが表示されるよ」


サラ・プリズムエンド


スキル適性 S


虹彩術式 L

収納魔法 S

浮遊 A

身体強化 B

光耐性 S

闇耐性 C

炎耐性 A

闇耐性 F

水耐性 C


ツルギ・ワールドブレイク


スキル適性 S


バーサーカーモード U

身体強化 S

肉体再生 S

全物理耐性 S

斬撃 L


「虹彩術式はさっき見たけど、バーサーカーモードってのは?」


「虹彩術式は全属性関係無く攻撃と防御に使える万能魔法ね、バーサーカーモードは防御力をゼロにして攻撃力を10倍にするユニークスキルだね」


「ほえー、じゃあ俺の番だな」


俺も手をかざしてみる。


「あれ?もうスキルを手に入れてる」


諸藤 武雄


スキル適性 L


起死回生 S

身体強化 A

全魔術耐性 S

全物理耐性 A

身体強化 B

肉体再生 B

炎魔法 A


「こんな強かったなら助けなくてよかった」


「やっぱりあの子と一緒でスキル持ちなんだ」


「最初は無いの?」


「ええ、スキルは簡単に言うと体を無理やり強化してるの」


「失敗するとくたばる」


「まじかよ!」


「それは本当よ、適性Sでも成功率40%、Fに関しては1%未満、しかも得られるスキルにも確率がある」


「それじゃあサラとツルギも何回も強化なんてことしたのか?」


「まあね…」


自動ドアが開く、やつれた顔した男がカウンターの前に立つ。


「あの前にも言いましたが「お願いします!仕事がクビになったんです!ダイバーとして稼がなきゃ生きていけないんです!この通りです!」


男はケイラの言葉を遮り急に土下座し始め、額を床に擦り付ける。


「お顔上げてください!でもスキル取得は1回1000万イェンですよ」


1回1000万円のガチャとかやばすぎだろ。


「借金しました!」


男は立ち上がると、目の前にディスプレイが現れ操作する。


「なんだあれ?すげえ」


「ブレインデバイス?メッセージとかも勿論スペックがいつでも確認できるようになったり色々できるよ」


「それではご一緒に、同じ機械で手に入れられます」


ケイラはそのスキル取得する場所へと向かった。


「スキルと一緒で死なないよな?」


「みんな赤ちゃんの時に入れてるから大丈夫大丈夫」


そのまま長い廊下を歩き続ける、やはりほんの少し怖い。


「そういえばあいつ確か適性Cだよね?大丈夫?」「うーん微妙」


2人は何かひそひそ話続ける、声が聞こえたのか男は振り向いた。


彼のあの切なくて諦観し尽くした表情、俺はもうワクワクしていない。


ケイラが金庫室の様な重厚な扉の前に経つと、パスワードを入力し真ん中のロックが回り思い音を立て開く。


「でっかい……ロボ、虫?」


「最初のモンスターであるファージです、制御しているので安心してください」


俺の前に現れたのは、角張った大きな頭に棒のような身体、その下には針が覗き長い6本の虫みたいな足の、紛れもない俺達にとっての敵であるモンスターだった。

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