第8話 星への願い
『イズミ・・・ここから、もっと下のほうへ行くわ。周りも暗くなるから、気を付けてね。』
「う、うん・・・!」
泳ぐのを一度止めて、私のほうを見るみうの顔が、さっきまでよりも厳しいものに思える。
「言われてみると、先のほうがすごく、急な感じになってるよね・・・」
陸のほうから見たとしたら、少しずつ深くなっていくようだった、私達がいる湖の底が、ここから先は、転がり落ちてしまいそうな坂道みたいだ。
『そうなの。ずっと昔、小さな星が落ちてきたせいかもしれないって、お姉ちゃんが言ってたわ。あんまり、想像がつかないけど。』
「星って、たくさん見えるけど、落ちるものなの・・・? あっ、でも、たまに流れることはあるかな。」
『えっ! 何、それ・・・陸のほうだと、そんなのが見えるの?』
「うん、本当にたまにだけど・・・確かに、水の中だと分かりにくそうだよね。
あれ・・・? じゃあ、みあさんはどうして、そんなことが分かるんだろう。」
『お姉ちゃんは、そういうのに詳しいの・・・今のイズミには、ちゃんと話すのが難しいけど。』
「そうか・・・私が思い出さなきゃ、いけないことだよね。みあさんの気配が、ここにあるんだから。」
忘れていたわけではないけれど、私がみうに、湖の中へ喚ばれた理由を、確かめ直す。
『ありがとう、イズミ・・・実はね、初めて話した時よりも、ちょっと気配が強くなってるから、もしかしたらって、思ってるの。』
「そ、そうなんだ・・・私も、何とかできるよう、頑張ってみるね。」
どう頑張ればいいのかは、自分でもよく分からないけど、みうの少しはにかむような笑顔を見たら、何とかしたいと思うのは本当だ。
・・・それに、私自身も、何も感じていないわけじゃないから。
『あっ、お話が長くなっちゃいそうだわ。イズミ、行こう?』
「うん。いつでもいいよ、みう。」
もう少し、こんな風に話をしていても、私は良かったけれど・・・先へと進みたそうな、みうにうなずいて、その手に引かれて泳ぎ出した。
『ここの一番下まで行けば、その星を見られるかもしれないって、あの時お姉ちゃんは言ってた。もし、私達がそれを見付けたら、戻ってきてくれたりしないかな・・・』
「それは、私は何とも言えないけど・・・そういえば、昔に旅をしていたおばあちゃんから、聞いたことがあるよ。
どこかの地の人は、星が流れる時に、叶えたい願いを口にするんだって。」
『えっ・・・! そうしたら、本当に叶うの?』
「それは分からないけど、とっても珍しいことが空で起きてるから、あまり叶わないような願い事も、本当になるかもって、その人達は考えたのかもね。」
『じゃあ、もし見付けられたら、それをするわ! もちろん、お姉ちゃんのこと!』
「うん。みうがやりたいなら、私も手伝うよ。ただ・・・」
『・・・っ! いけないわ。もう周りが暗くなってきた。もっと気を付けなきゃ。』
お話の途中だったけど、みうがまた厳しい顔になって、私達の周りに、ぷにぷにを作り出す・・・今までよりも、多分ぶ厚いものを。
流れ星じゃなくて、もう落ちている星に、願い事をしても同じか分からないとか、みうがお姉さんとここに来た時は、何かあって見付けられなかったのかな、とか・・・
もう少し、話したかったことはあるけれど、今はそれどころではなさそうだ。
・・・気を付けて・・・ここの闇は、とても深いから・・・・・・
誰かの声が、また聞こえたような気がした。
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