ステータス振り替え!現実世界の学力や体力を異世界のステータスにポイント振り替えできるチートで無双!異世界のスキルで現代異能バトルを攻略!

万和彁了

第1話 ステータス振り替え機能

 異世界に希望なんて抱いていない。だってそこはきっと現実の続きでしかないから。俺は確かに全てを失った存在だった。だけど現実にまだ未練はあったのだ。だから異世界に流れ着いたとき、俺は一筋涙を流してしまった。それがどんなに惨めでも俺の偽らざる本音だったんだ。






 俺は異世界の農村の端っこに召喚された。村人たちは俺を見て、知らない言葉で騒いでいた。そして一番年寄りの男がやってきて俺は村人たちに拘束された。そのまま小さな牢に入れられて荷車の荷物の一つになった。どうやら俺は奴隷商人か何かに売られてしまったようだ。


「xxxxxxxx!」


 商人の男は俺を見て下品な笑みを浮かべていた。俺にどんな値がついているのかはわからないが、きっと男の懐を膨らませるには十分なのだろう。冗談じゃない。


「xxxx!すてーたすxxx!ステータス!xxxx!」


 男は牢にいる俺に向かってそう怒鳴ってくる。実にテンプレートな言葉が出てくる。ステータスシステム。スキル。ゲーム的現実の模倣品。この世界はそういうのがおありのようだ。俺は鼻で笑った後に言った。


「ステータス・オープン」


 すると俺の目の前にウィンドウが出てきた。どんな理屈でこんなのが出てくるのやら。奴隷商人の男は俺のステータスをじーっと見ている。そして少しがっかりそうな顔でため息を吐いた。お眼鏡には敵わなかったらしい。つまり俺にはチートはない。残念。そして俺は荷車でどこかへと運ばれていく。道中は暇だった。俺はステータスを開いて、睨めっこしていた。


「ちからやらHPやらテンプレ過ぎて笑える。こんなの大小比べて何になるんだよ。模試の偏差値比べるより不毛だな」


 ステータスは俺にもわかるように日本語で表示されていた。というよりも見る人間に合わせて言語が変わる仕様なのだろう。作為を感じる。システムというだけあって、裏にはエンジニアがいてベンダーがいて管理者がいるのではないのか?だったらこれは個人情報を管理する家畜の識別タグと等しいのだろう。牧歌的に見えるこの異世界はもしかしたらディストピアの類なのではないだろうか?まあそんなのどうでもいい。まずは逃げ出さなきゃ話にならない。俺はステータスシステムをスワイプしてウィンドウを隅々まで観察する。そして一つ変わった項目を発見した。


「ステータス振替?なんだこりゃ?」


 俺はその表示を押してみる。するとウィンドウが広がり別のステータスが表示された。それは俺の現実世界での学校の成績とスポーツテストの結果だった。


「何これ?うん?transferPoint?」


 現実世界の成績、例えばこの間の中間テストの成績である数学:94点の隣に9TPと振ってあった。


「transferだけに転送、振り返ることが出来るってことか?」


 俺は指で9TPをタッチする。するとそれは画面の上を動き出す。そして指をHPのところに持っていくとHPの上限値がいきなり900pも上がった。


「ふぁ?!え?なにこれ?!」


 俺は逆にHPに付与されて9TPをまた指でタッチして今度はちからのところに持っていく。すると今度は力の値が900増えた。そしてHPは元の数値に戻った。


「もしかして現実での学業成績とか体力テストとかの能力値の分だけこっちのステータスにボーナスを振り替えられるの?」


 他の科目もやってみた。その結果、国語や理科、社会科などから合計45TPを持ってこれた。これをちからやHP、敏捷に振り分けた。ステータスが大幅に伸びた。自分でもなにか身体から沸き立つ何かを感じる。試しに牢の策に手をかける。そして力を入れるとそれは簡単に折れ曲がってしまった。俺はその隙間から外へ出た。


「xxxxx!xxx!?」


 奴隷商人が酷く驚いている。そりゃいきなり出てきたらビビるよね。俺は冷静に奴隷商人に向かって近づいて、思い切り頭を蹴り飛ばした。奴隷商人はぐったりと気絶してしまった。


「脱出成功か……とりあえずいただけるもんはいただくか」


 俺は奴隷商人の服をはぎ取り、財布や食料を奪い取り、荷車にあったリュックに詰め込む。そしてその場を後にした。






 街道を何日か歩いた。途中でモンスターに遭遇したが、HPとちからにTPを全振りして殴ったら簡単に殺せた。モンスターの死体は塵のように消え去り、なんか素材やら綺麗な肉やらが残った。俺はステータスシステムのスキル欄にあった、魔法のスキルツリーにTPを振って火魔法と水魔法を手に入れて鍋に魔法で水を入れて、火魔法で鍋を熱した。鍋には肉が入れてある。熱を入れれば食えるだろう。十分に加熱後に、口にしたが意外に美味かった。そんなサバイバル生活をしながら街道を進んでいたのだが、途中で全長100mはありそうな木々の森を通りかかった。日差しが木々に遮られていて暗い。街道を外れると恐らく遭難は確定だろう。それは困る。だけど突然爆発音が響いたのだ。そして爆風が俺を吹き飛ばす。近くの木に体を打ち付けられたが、ステータスをTPで強化していたから何とか無事だった。初期ステならきっと死んでいただろう。


「何がおきたんだよくそ!」


 俺が爆発した先に目をやると金髪の女が走っているのが見えた。それを真っ白い肌のスキンヘッドの男が追いかけているのが見えた。


「どう考えてもトラブルだ。どっちに肩入れしてもろくなことにならないやつ」


 俺は頭を抱える。だけど。ふっと召喚される直前、クラスメイトと交わした言葉を思い出した。


『でも。あなたはやさしいから』


 そんなことを言われたのは初めてだった。他人とうまくやれない俺が初めて誰かに優しいと言われた。それがとても嬉しかった。追われている女を見る。女の耳は長かった。きっとエルフって奴だろう。泣きそうな顔で必死に逃げている。対して男の方は恐ろしい顔をしている。憎しみに支配された哀れな目をしている。どっちに肩入れしたらいいかはすぐにわかった。だから。


「xxxx!xxxxx!!」


 スキンヘッドの男は真っ黒な禍々しい球体の魔法弾をエルフに向かって何発も撃った。エルフの少女は立ち止まって身をかがめている。


「ステータストランスファー!」


 俺はそう叫びながらステータスシステムを頭の中で操作する。防御魔法に全TPを突っ込んで巨大な光の膜を張り黒い魔法弾をすべて弾いた。


「xx!?xxx!!?」


「すまんね。何言ってんのかわかんねんだわ。だけどこれならわかるだろう?」


 俺は再びステータスのポイントを振り替える。今度は光の攻撃魔法にポイントを全振りする。俺の右手に巨大な光の奔流が集う。それはまるで剣のように形作られた。エルフの少女もスキンヘッドの男も俺の光の剣を驚きの目で見ている。


「xx……エルフxxx!」


 何かを吐き捨ててスキンヘッドの男は背後に現れた黒い空間に入ってその場から姿を消した。俺は光の剣を消し去り、エルフの方へと向く。


「大丈夫か?まあ言葉は通じないか」


「いいえ。あなたの言葉わかります」


 エルフの少女は青い瞳で真っすぐ俺を見ていた。彼女はとても美しい顔をしていた。まさにエルフ妖精と言われるような愛らしさと神秘性が両立した不思議な魅力があった。


「わたくしはヨーゼファ。先ほどこの世界に生まれたばかりのエルフです。あなた様は誰ですか?」


「あー。言葉分かるんだ。ありがたい。とりあえず色々聞きたいんだけど。俺は久遠くおん聖了きよさだ。異世界から来た。帰り方知らね?」


 これが現実世界と異世界とをまたにかける冒険の日々の始まりだったんだ。

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