昔男だと思っていたボーイッシュ美少女と再会した結果、灰色だった青春は少しずつ色づき始める
向井数人
第1章 ゴールデンウィーク明けの転校生
第1話 転校生と予想外の再開
ゴールデンウィーク明けの水曜日の朝、
自転車を駐輪場に停めてから学校の下駄箱に行って上履きに履き替えて、階段を昇って2階に上がり、自分の所属する2年B組の教室へ後ろのドアを開いて入ったのだが。
(……あれ?)
晃成は教室内の様子を見ていつもとは違和感を抱いたが、その正体に直ぐに気が付いて。
(前までこの机は無かったよな)
自分の席に着いた晃成は隣の席を見て、心の中でそう呟いた。
晃成の席は教室の一番後ろの窓際から1つ隣の列にあり。
晃成の席の隣の窓際の列の最後尾には、ゴールデンウィーク前には無かった筈の勉強机と椅子が置かれていて、晃成は何があったのかと一瞬疑問に思っていると。
「ねえ、知ってる? 今日から家のクラスに1人、転校生が来るらしいよ」
前の方の席に座っていたクラスメイトの女子が、今日から置かれた新しい机を見てそんな事を言うと。
「うん、知ってるよ、今朝その転校生を見た人が言っていたのだけど、背が高くて凄く美人な女の人だったって」
別の女子生徒がそう答えて、その言葉を聞いた晃成は、
(こんな時期に転校してくるなんて珍しいな……まあ、何か事情があるのだろうけど、俺には関係ない事だから気にするだけ無駄だろうな)
心の中でそう思うと、晃成は視線を彼女達から外して、まだ誰も座っていない隣の窓際の席に移した。
その後、チャイムが鳴ると教室の前のドアが開き、細身で眼鏡を掛けた40代くらいのこのクラスの担任の男性教師が教室に入って来て、教卓の後ろに立つと。
「えー、ゴールデンウィーク明け早々ですが、皆さんにお知らせがあります、もう気が付いている人もいるとは思いますが、今日からこのクラスに1人、転校生が加わります」
そう言って、男性教員は一呼吸入れると。
「えー、それでは朝霧さん入って来て下さい」
廊下の方に向かってそう声を掛けると、ガララッと音を立てて、教室のドアが開くと。
1人の女子生徒が堂々とした足取りで教室の中に入って来て、そのまま教団の隣に立って、クラスメイト達の方を見ると。
「……凄い美人」
「背も高くてスタイルも良いわ、モデルさんみたい」
「今日からあんな美人とクラスメイトになれるのか、俺このクラスになって良かったわ」
彼女の姿を見たクラスメイト達が小声でそんな感想を述べていたので、転校生にあまり興味を持って無かった晃成も気になって彼女の姿を見てみると。
(……本当に凄い美人だ)
少し遠目に観てもハッキリ分かる位に整った容姿をしている転校生を見て、晃成は声には出さずに心の中でそんな感想を述べて、他のクラスメイトと同じように彼女の姿に見とれていると。
クラスメイトを一通り見渡していた転校生と不意に目が合ったのだが、その瞬間、彼女は何故かとても驚いた様な表情を浮かべたので、転校生の突然の変化に理解が追い付かず、晃成が転校生の表情を黙って見ていると。
「えっと、それでは朝霧さん、自己紹介を……って、朝霧さん?」
そんな風に話を進めようとした担任の言葉を無視して、転校生はゆっくりとした足取りで生徒達が座っている席の間を進み始めて。
彼女は晃成が座っている席の前まで来るとその場で立ち止まり、晃成の顔をしっかりと見て来たのだが。
(……うわっ、遠目で見ていても分かっていたが、近くで見ると本当に美人だな)
晃成は改めて心の中でそう言った。
近くで見た転校生は、晃成が座っているせいか、彼自身と比べても大差がないくらい身長が高く見えて。
体は痩せ型でスタイルもよく、その上、女性らしさを主張するように胸はハッキリ膨らみがあると分かる位に大きく。
髪は黒のショートカットで、顔は少し中性的な印象を受けつつも、晃成が今まで出会って来た女性の中で一番の美人だと自信を持って言える位に顔立ちが整っていて。
その中でも晃成にとって一番印象に残ったのは、左目の下に付いていた泣きぼくろで、晃成にはそのほくろを見て妙な懐かしさを覚えつつも。
いきなり見ず知らずの美人に見つめられた晃成は緊張と混乱で訳が分からないまま、彼女の顔を見つめ返していると。
「えっと……人違いなら非常に申し訳ないのだけど、もしかして君は八月朔日晃成なのか?」
何故か転校生はそう言って、初対面のはずの晃成の名前を言い当てたので。
「えっ……そうだけど、どうして俺の名前を?」
内心かなり困惑しつつも、晃成がそう答えると。
「そうか……まあ、5年も会わずにいたら普通は気が付かないよな」
転校生はそう言うと、目を瞑ってその場で小さく深呼吸をすると。
再び目を開いて、晃成の目をしっかりと見つめながら。
「俺だよ、晃成、小学6年生の夏休みの間、公園で落ち込んでいたお前の事を励ましてあげただろ?」
急に男っぽい口調になった転校生にいきなりそんな事を言われて、晃成は今以上に混乱しそうになったが。
初対面のはずなのに、何故か懐かしさを感じる彼女の笑顔を見て過去の記憶が掘り起こされて。
「……もしかして、凪咲なのか?」
晃成がそう聞くと。
「ああ、そうだ、久しぶりだな、晃成!!」
美人な彼女には妙に似合わない、少年の様な無邪気な笑顔を浮かべて、転校生はそう答えると。
「えっと、朝霧さん、知り合いに再開して嬉しいのは分かるけど、取りあえず他のクラスメイトにも自己紹介をしてくれないか?」
担任の教師は少し遠慮しながらも転校生に向かってそう告げると。
「あっ、それもそうですね、すみません、先生」
転校生は申し訳なさそうにそう言うと、晃成に背を向けて教卓の方に戻ると。
そのままチョークを手に取って、彼女は黒板に朝霧凪咲と綺麗な字で書いてから。
「初めまして、私の名前は
朝霧凪咲はそう言って、その場で綺麗にお辞儀をすると、教室内は大きな拍手で包まれて。
それから暫くして、拍手が鳴り止むと。
「それじゃあ、朝霧さんはこれから八月朔日くんの隣の誰も座っていない窓際の一番後ろの席で授業を受けてくれるかな、2人はどうやら知り合いみたいだし、何か困った事があれば彼に聞くと良いだろう」
担任の教師は朝霧凪咲に向かってそう言うと。
「はい、分かりました」
彼女はそう返事をして、再びゆっくりと歩き出してから、晃成の隣に置いてある、窓際の一番後ろの席に座ると。
「まさかこんな形で再開するとは思ってもみなかったよ、これからよろしくな、晃成」
頬杖を付きながら晃成の顔を見て、凪咲がそう言ったので。
「ああ、よろしくな」
晃成は短くそう答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます