第六章 入学式、過去編

第33話 入学式

 僕のドタバタな生活はあの日……この仙石中央学園に入学した日から全てが始まったんだった。




 入学式の日、僕は制服を着て椅子に座って肩が震えていた。同じクラスには幼稚園からの付き合いの啓馬や明菜、後小中学校からの付き合いのメンバーとかもいたけれどやはりこの場は不安だった。なぜかと言うと……


『新入生代表の言葉。海城淳志君。お願いします』


 この行事だ。新入生代表の言葉を読む行事はどこにでもあり、この高校でも入試の成績が一番良かった生徒が読むのが慣例だった。それが僕だったのだ。まぁ僕自身覚悟していたことだったけど。


「はい!」


 僕はハキハキと声を上げた。周囲の生徒から自然と視線が集まる。恐らく一番成績がいい生徒の顔を見てみたいという興味だろう。僕は重い一歩を踏み出しながら歩きだした。


「宣誓!我々200名はこの仙石中央学園にて共に学業を研鑽し、運動に励み立派な仙石中央生として励むことを誓います」


 そう読み上げて帰っていった。思えばこれが最初に全校に僕の存在を知らしめた出来事だったように思う。




 対して在校生側も少しざわめいていた。


「あの新入生チビすぎだろ……小学生の間違いじゃね?」


「でもあのメンバーの中で一番頭がいいんだろ?童顔だけど」


 ここで小中学校が一緒だった在校生から声が出る。


「ありゃあっちゃんだな。素直でいい奴だよ……後は顔が可愛らしいから女子を中心に俺ら先輩たちにカルト的人気があった……」


 こうしたコソコソ話を小耳にはさんだ武史はと言うと……


「何や淳志やないか……相変わらず背が伸びとらんなぁ……後で話しかけてみよっと」


「生徒会長からの言葉……神崎美波生徒会長お願いします」


 そんな中一同を静寂に包んだものがいた。そう神崎美波である。勉強、運動どれにもケチをつけるものがない。神崎財閥のお嬢様の生徒会長……男女問わずカリスマ性に当てられたものは多く、ずっと皆の憧れとして認知されている。


 美波は演壇で淳志と向かい合う。


 武史はそれを見て


(おいおい、美波がデカいのもあるが並ぶとマジで大人と子供やな……)



「我々仙石学園在校生はあなた方200人を新たな仲間として歓迎します。これから3年間学業に励んでください」


 美波は淡々と言葉を並べる。しかしその心中は……


(か、可愛い!低い背、童顔そして緊張している様子。こんなガチ天使がまだこの日本に、私の手の届く範囲に眠っていたというのかしら……)


 そうガチで惚れていた。


(何よその身長。私の胸までしかないじゃない……腕も細いしきっと力なんてないわね……顔も良いわ。決して爽やかイケメンではないけれどその顔はまさに中性的な良さ……それが見上げてくるんだから……髪もサラサラで美しいわ)


 先にも言ったがこの生徒会長は今までも多くの男子に告白されるも全て断っている。しかしその前提が撤回されてしまった。


(きっと後ろの女子たちも狙っているわね。この子はそのことに気づいてないけど……後で家の力で守ってあげないと。いつか私のものにするために……)


 美波は演壇から戻ったがその際口元が少し緩んでいたのはほぼ全ての人が見逃してしまったに違いない。

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