第6話 隠したい過去

 ウィルの父親のロン――イブリ書店の店長は数年前まで冒険者をしていたらしい。



 メイには、人の過去を無遠慮に聞くという悪癖があった。

 少し親しくなるとその人の過去について聞いてしまうのだ。オルガにはやめるようにいつも厳しく叱られるが、ついつい聞いてしまう。自分のルーツが分からないので、人のルーツを聞いて想像することが好きなのだ。


 メイはロンに「ウィルのパパとママはどうして結婚したの?」と聞いたことがあった。

 その時はオルガも一緒だったので、すぐに注意されたが、ロンは気前良く話して聞かせてくれた。


「私は、何年か前まで黒魔道士で冒険者ギルドに冒険者登録していたんだよ。魔導書を買いに、この書店を利用するようになって、ウィルのママのアンナに一目惚れしたんだ」


 恥ずかしそうに、茶色の口ひげを触りながら、ロンは続けた。


「アンナに声を掛けたくて、毎日のように書店に来たんだけど、恥ずかしくてなかなか声をかけられなくてね。見かねたオルガがアンナに声をかけて友達になってくれたんだ。それで、オルガが私にアンナを紹介してくれたんだよ」


 メイはオルガが話に出てきたので食いついた。メイがオルガのことを聞いても全く教えてくれないからだ。


「先生とウィルのパパはその時から友達だったの?」


 ロンは頷いた。


「そうだよ。オルガもその時は冒険者で、同じパーティのメンバーだったんだ」

「ええ!!?」


 メイは初めて知ったオルガの過去に仰天した。

――まさか、先生が冒険者をしていたなんて…… 


「私は、結婚を期に冒険者は引退して、この書店に婿入りしたんだが、オルガはその後もしばらく冒険者をしていて……」


 ロンは、他にも何か話そうとしたが、オルガが嫌そうな顔をしていることに気が付き、それ以上ロンから話を聞き出すことはできなかった。





 メイはウィルに本を借りて今日は早々に帰宅することにした。

 冒険者ギルドでもらった薬代がたんまりあったので、美味しいサンドイッチでも買ってオルガのお土産にしようと考えたのだ。

 広場でサンドイッチを買い、急いで来た道を戻った。



 (お昼ちょっと過ぎちゃったけど、先生はもうお昼を食べちゃったかな?)



 メイが森の家の近くまで来ると話し声が聞こえてきた。今日はどうやら、まだ薬屋が森の家にいるらしい。

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