カレイド神話
幕乃壱 洸
~プロローグ~ 悪魔種大陸-ディレイドベラ-
第1話
『ドカーーッン!』
俺にはそんな日が来るなんて、想像すらできなかった…。
城が揺れるほどの衝撃音が聞こえると、俺は玉座へと真っ先に向かう。扉を開けた先に広がる光景に言葉を失ったが、足を止めることはしなかった。
床へと倒れるその存在は、正しく我々悪魔の王だった。
「父上!」
限界まで声を張り上げそう呼びかけるが、返答はもらえない。その最中、瓦礫の崩れる音に対して、視線を移動させると、何かの陰が映り込んだ。
その正体が、今にもこの場を立ち去ろうとする人間だと気付いたときには、怒りのままにその存在を追いかけようと床を踏み込んでいた。しかし、微かに聞こえた声によってそれは制止された。
「カ…ネ、ア…」
「父上! カネアはここです! 今すぐ、治療できる者を連れてきます」
「良い…。もう…、私は助からん」
「そんなことはおっしゃらないでください!」
「さ、最後…に、伝え…、敵、を…。はぁ、はぁ…。見誤るな…」
「父上! しっかりしてください! 父上!」
それが、我が父上の生涯で最後の言葉になった。
言葉にならない悲しみに苛まれながらも、ただ涙を流すことしかできなかった…。しかし、その出来事は俺に、ただ一つの強烈な復讐心を芽生えさせた。
「お任せください、父上。この私が、どんな手を使ってでも、必ず人間共を根絶やしにしてみせます」
・・・・・
~ 十年後 ~
目を覚ますと、目の前には天井が広がっていた。もう何年も前のことなのに、この夢だけは何度も見てしまうな。だが、ここまで鮮明なのは初めてかもしれない…。
意識を失ったのなんて久々のことで、状況を把握することすら覚束無い…。そんな状態でも、確実に思い出せることもある。それは、意識を失った原因が『魔王継承の儀』だったということだ。
状況から察するに、儀式で意識を失った俺と妹は、この医療室へと運ばれたらしい。
ここまで来れば、いろいろ思い出してくる。俺が見た最後の記憶は、悠然とその場に立つ兄上の姿だった…。
「お。目が覚めたっすね」
そう声を掛けてきたのは、大陸の監視と兼業で俺の側近を務めている、レヴュア・ドーラだった。
「悪い、迷惑をかけたな。ずっと、診ていてくれたのか?」
「まさか。僕も忙しいので、七日もこうしている訳にはいかないっすよ。モンドとマーモで交代って感じっすね」
「七日か…」
レヴュアの話を聞いて、自分の不甲斐なさを自覚させられた。兄上は、儀式の直後も平然と立っていたのに対して、俺は意識を飛ばしたあげく七日も寝込でいたのか…。
「そんなに、気を落とさないでくださいよ。今回のはあれっすよ。しょうがないって奴じゃないっすか」
それを聞いて、俺はレヴュアを睨みつけた。
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