剣術の師

翌朝、雨は上がり、清々しい朝を迎えた。町の馬車屋で旅用の馬車を手配し、一行は王都への道を進む。馬車の中でガルドはレンに剣の基本を教えた。


「その握り方じゃ力が入らない。こうだ」


厳しい指導だったが、レンは真剣に学んだ。時折見せるガルドの満足げな表情に、彼の厳しさの中にある優しさを感じることができた。


「ガルドさん、魔王ザルバードについて何か知っていますか?」


レンは剣を鞘に収めながら尋ねた。


「物語として聞いたことはあるさ」ガルドは少し遠くを見るように言った。「1000年前、冥界の支配者ザルバードが初めてヴァルディア大陸に現れたと言われている。多くの土地が破壊され、人々は絶望に暮れた」


「どうやって封印されたんですか?」


「伝説によれば、光の力を持つ勇者が現れ、古代の知恵と神聖な力でザルバードを封印したという。その証が、お前の持つ護符だ」


レンは首から下げた護符を見つめた。


「なぜ今になって魔王が復活したのでしょう?」


「それはわからん。だが、魔物の活動が急に活発化したことを考えると、何か大きな目的があるのだろう」


道中、レンはガルドからさらに剣術を学びながら、護符の力のこともしばしば試そうとした。しかし、力は現れなかった。


「焦るな」ガルドは言った。「力は自然と湧いてくるものじゃない。必要な時に、必要な場所で目覚めるものだ」

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