第4話 人民警察

「とりあえず闇雲に移動するのやめて、誰かに道を聞かない?」


「え、アリシアもしかして道を知らずに歩いて他のー?私アリシアが道を知ってると思ってたのにー」


みんなに文句を言われながら、誰かに道を訪ねようとすると突然、黒いコートを着た武装集団に囲まれた。街の中で堂々と武器を向け、統制の取れている様子から強盗などではなく治安部隊だとわかった。


「警察だ!大人しく武器を捨てて投降しろ!」


け、警察?なんだそれ。初めて聞いた組織だ。革命後にできた組織か?


「アリシア、どうする。戦うか、それとも逃げるか?」


「荒波を立てたくないから今回は大人しく降伏するわ。それに彼らからなにか情報を引き出せるかもしれないからね」


持っていた武器を地面に下ろしひざまずくと、彼らは「貴様らを武器所持の容疑で逮捕する!」と言い、手を後ろに組まされ拘束された。無理やり立たされ警察署という建物に連れて行かれた。


「お前たちが誰なのか徹底的に調べてやるからな」


4人とも同じ地下の牢屋に入れられた。ここからどうするか考えていると私だけ密室に連れて行かれ、尋問が始まった。


「お前の名前は?武器を持ってた目的はなんだ」


「私はアイリス、海の向こう側のメーナ王国からやってきた冒険者よ。それよりこの国はどうなってんのよ。冒険者が武器を持ってるだけでいきなり拘束するなんて」


「この国ではいかなる武器の所持も禁止なんだ。例外はないぞ。それより冒険者なんて久しぶりに見たよ。10年前に冒険者は禁止になったからな」


冒険者が禁止になった・・・?こっちの大陸も魔物がいるはずだけど、冒険者がいなくてどうやって生活をしているんだ。


「そもそもここはヴィンセンヌ王国じゃなかったかしら。革命が起きたとか聞いたけど今この国はどうなってんのよ」


「そうか、海の向こうではまだ情報が伝わってないんだな。じゃあ教えてやる。今から10年前、一人の男が現れたんだ。その人はとても賢くて、共産主義という考えを広めたんだ。これは簡単に言えば資産とかを金持ちから取り上げて平等に分配することだな。そこから俺達は反乱を起こして俺達を虐げた貴族を追い出したんだ」


「へえそれで?」


「そっからは凄いぞ。ありとあらゆる街から人が集まって王都に行進したんだ。牢屋に囚われた仲間を解放し、金持ちを制裁を与えたんだ。王族たちは卑怯にも逃げようとしたけど俺達で阻止したんだ。そしてあの男、同志書記長の手によって公開処刑にされたんだ。あれは本当にすごかったな」


何が革命だ。罪のない貴族を殺して金持ちの財産を奪うってただの人殺し、強盗じゃないか。この恥知らずが!


「でそいつは誰なの?今の国の指導者ってこと?」


「そうだ。そいつの名前は同志スタリーンだ」


スタリーンね。覚えたわよ。いつか直接顔を拝んでやるんだから。


地下牢獄に戻されたとき、私の持つ能力を発動した。15歳のとき能力がないという理由で追放されたが、私にも能力があったのだ。私の持ってる能力は時間停止。ほんのわずかな間だが、時を止めることができるのだ。


背後に回った瞬間能力を解除して首を叩き、気絶させた。看守がつけていた鍵を奪い、牢屋の鍵を開け仲間たちを解放した。


「みんな武器を回収しに行くわよ」


武器の保管場所はここに来るまでに確認した。確かここに来るとき曲がった場所を曲がらずにまっすぐ行った突き当りにあったはずだ。廊下を曲がろうとしたとき2人の看守がいるのを見つけた。


看守たちの持っている武器はなにかしら。あれは小型の銃かしら。あのおもちゃのようなマスケット銃じゃないようね。


「どうします?ぼ、僕が倒しにいきますか?」


「いや、私がやるよ。遠距離魔法なら得意だからね」


ベルニスが魔法を詠唱をした瞬間、二人の看守は気絶して床に倒れた。杖がなくても魔法が使えるなんてさすがベルニスね。魔法使いの最高ランク、魔魏亜カタストロフィなだけあるわね。


看守たちが持っていた武器をすべて奪い、たまたま近くにあったロープで拘束した。


「あったあった、私の杖。傷一つない完璧な状態だね」


「よかった。壊されていないようね。これ作ってもらうのに苦労したんだから」


「僕もよかったですぅ・・・イモータル・ネクロスがもし壊れてたらと思うと・・・・・」


エルマは大剣を大事そうに抱えていた。ここにとどまるわけにはいかないので看守に連れてこられたときと同じルートで一階に上がると、誰もいないことを確認して裏口から警察署を脱出した。


「まずは王都に行って情報収集よ。この服じゃ目立つから着替えてからいきましょ」


「さっき倒した看守が地図を持ってたわよ。ここが駅のようだからその近くの服屋に行けばいんじゃないかしら」


シャルロッテが持ってる地図を見て場所を確認した。ここからすぐそこだな。警察に気づかれる前にこの街をでないとね。


「そうね。ついでにもっと目立たないように隠さないといけないから袋も買わなくちゃね。じゃあみんな行くわよ。ついてきて!」

――――――――――――――――――――――――

魔魏亜カタストロフィ・・・大陸魔法協会が定めた魔法使いランクの最高位。禁忌魔法を含めた全ての魔法の行使が許可されている。現在は世界にベルニス含め3人しか居ない。


他のランクは上から順番に、


大魔法使いカリテロス・・・禁忌魔法以外の全ての魔法の行使が許可されている。ここまでたどり着ける人は極少数。


上級魔法使いカロス・・・上級魔法の行使が許可されている。魔法使いの大半はここまでしか到達できてない。


中級魔法使いシニサス・・・中級魔法の行使が許可されている。


初級魔法使いアルカリオス・・・初級魔法のみ扱える。


がある。


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