和食ギャング

多摩衛門

序章 踏み外し

2023年12月31日 チンピラと殴り合いをした


大晦日という一年の締めくくりにも関わらず自宅から少し離れた公園で同い年のチンピラと昼前から言い争いをしてた


「おまえ調子に乗ってるよな」


そう言ってきたのは自分よりも身長も高く体重も当時の自分より7キロ近く重かった藤川だった。重いと言っても怠惰してできた体ではなく先天性かつトレーニングではないであろう経験値を物語る筋肉だった


「全然話と違うじゃん」


そんな明らかに自分より強くいかにもチンピラの見た目をしてる藤川を目の前にビビり散らかしてる自分がそう言った。

それはそう、聞いてた話は身長164体重64.3の格闘技始めようと思ってる高校1年生のスパーリングの練習と聞いて来たのに正しかったのは高校1年生の部分だけ。


「話がどうとかじゃなくてさぁ...」


99.7%が嘘で構築された話で騙されて話が違うとか関係ないとかおかしいだろとしか思えなかった。


「あんな上から目線でパンチのアドバイスとかしてきてまさかやらないとは言わせないよ?」


出た、チンピラ構文。正直煽られ続け腹が立ってた自分が勝手に自我を持ちはじめた。


「じゃあお望み通りやってやるよ」


頭に登った血で会話した。


「ルールは素手で噛みつきと武器と金的なし、それ以外はなんでもありね」


藤川がそう言い放った。本来であればスパーリングにおいてベアナックルであろうがMMAであろうがそんなルールではない。しかし頭に血が登ってるくせして脳みそがドンガラの自分にはそれはおかしいと思う思考に辿り着かなかった。その結果ドンガラ脳みそは了承の判断を下した。今であれば1番殴るべき相手は自分、人中に全ての体重を乗っけたストレートをお見舞いし前歯が全て砕け散るべきだった。そんなことも考える暇もなく藤川が連れてきてた柄の悪い男1〜7が自分とその藤川を囲みリングを形成した。


「ready fight!!」


レフリー役の佐古は顔は幼いが体つきと見た目はチンピラそのものである。そして絶対皮かぶりである佐古がそう言い放った。しかし相手は格闘技未経験、自分は総合格闘技歴1年というないようなアドバンテージに自惚れその掛け声と同時にタックルをしマウントを取ってからひたすら上から拳を振り下ろす所まで計算済みだった。自分の完璧な計算に勝ちを確信し、左足を相手の側面に送り込んだ瞬間だった。何故か目の前に居たはずの藤川は居なくなり、景色が若干の曇り空に変わっていた。その数秒後には藤川は自分の上に乗っかり拳を自分の顔面に振り下ろしてきた。


「うぐっ」


出す予定のない声が出た。タックルをしようと出した左足は浮き石を踏んであらぬ方向に曲がりバランスを崩して、マウントを取られ殴られてる自分がまるで第三者が見ているかのような視点で走馬灯として流れてきた。


「stop!」


佐古がそう言い、攻撃は止まった。

起き上がればちゃんと締まらなかった蛇口ほどの鼻血が垂れていた。しかし自分はアドレナリンという合法な成分が脳みそ由来から分泌され、痛みは感じなかった。ファイティングポーズをとり継戦可能の意思を身体で伝え試合が再開。

藤川の攻撃は不要な溜めがあり力はあるが次にどんな攻撃が来るか丸わかりで避けることができ、自分のカウンターパンチは藤川の顎や側頭部をしっかりと捉えることができた。藤川に顔面やみぞおちの攻撃を意識させ恐怖を与え、確実に流れは自分に来た。そこで自分は再度タックルを仕掛け、チンピラにくっつくことに成功し、倒した。あとはマウントを取って拳を振り下ろすだけ。そうして振り下ろした拳が藤川の人中に大当たり。しかし相手は喧嘩慣れしてるだけあり殴られながらも自分の事を振り落とそうとし必死に抵抗され、マウントは解除され横に転んだ自分に藤川が飛びかかったタイミングめ三角絞めを極めて藤川のタップにより


「はい、終わり」


佐古がそう言い放ち試合ともスパーリングとも言えない喧嘩に近い何かが終わった。お互いがアフターケアをしてる中で藤川の所属していた組織の頭である福ヶ迫が声をかけてきた。


「お前の気合いと根性すげぇよ、俺んところに入ってくれ、ぜってえにお前が活きるところだから」


そう言われタバコのパーラメントを差し出された。タバコを咥えるのは小学5年生の時に祖母から盗んで友達と隠れて吸っていたわかばが最後だった。でも最後まで自分の中では格好良くいたかった高校生特有の強がりで当時副流煙の臭いが嫌いだった自分は"勝者の一服"と名してパーラメントを口が血生臭いまま咥えた。その時のタバコの味は未だに忘れない程言葉にはし難い余韻に浸れる"勝者の一服"に相応しい味だった。タバコをフィルターまで吸いきり空き缶に吸い殻を捨てたところで福ヶ迫がまた話しかけてきた。


「それを吸ったってことはウチに来てくれるんだよな」


「え?これ承諾のタバコだったんですか?!」


「あたりめぇーよ、じゃなきゃタバコなんか渡さねえから」


半笑いで言われた。まさかの承諾のタバコとは思わず戸惑いが隠せなかったが


「そういえば名前なんて言うの?」


「久保田です」


「下は?」


「あつきです」


「じゃあ今日からあっくんって呼ぶわ、久しぶりにちゃんと強くて気合いの入ったやつ見たからうちのとこで盛大に歓迎会開くから1週間後の1月7日予定空けといてな」


「ありがとうございます」


「敬語じゃなくていいから、仲良くしてこうや」


そんな会話をして連絡先を交換した。今までチンピラなんかに触れたこともない自分がこんなとこで上手くやっていけるのだろうかと言う不安に駆られながらもなんもなくその場は解散になった。

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