『  』と呼ばれた少年

リフ@『  』と呼ばれた少年第二章完結!

第一章 星渡巡と白猫とマァ

プロローグ

 気が付くと真っ白な部屋に立っていた。


「は?」


 混乱した意識の中で視線を前へ向けると、大きな箱と立て札を見つけた。

 恐る恐る近づき立て札を読む。

 そこには箱の穴に手を入れて中身を引くようにと書かれていた。

 視線を箱にやると正面には『  』の文字が。

 って文字なのかこれ……。


「夢か」


 俺は頭を振る。

 今日は卒業式を無事に乗り切り、大学合格のお祝いもかねて家族とレストランで食事をし、そしてベッドに入った。

 覚えているのはそこまでだ。


「でも、夢にしては妙にリアルだ」


 これが明晰夢めいせきむというやつだろうか。

 白い部屋の眩しさや空気の匂い、目の前にある立て札を触れば木の感触もしっかりある。


「中身とやらを引かないと出られない?」


 しばらく付近を歩いてみるが、何かが起こる様子もない。

 俺は仕方なく箱の前に戻ると穴の中を覗き込む。

 中は暗くて何も見えなかった。


「本当に大丈夫だよな?」


 俺は恐る恐る手を入れる。


「せめて良い物でありますように」


 そう呟きつつ中身を探る。

 ひんやりとした拳大の丸い何かが沢山入っていた。


「これだ!」


 俺はその中から一つを選ぶと手を引き抜く。

 そして何を引いたか見ようとした瞬間、意識が闇に飲まれていった――。

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