第35話 ニットワード

 ニットワード。


 僕の名前はそれで、今はダンジョンという洞窟の中にいるらしい。


 12才の男性。幸か不幸か特殊な出自ではなく、姿かたちも人間と変わりない。

 ニットワード自身、決して特別強いわけでも、なにか特筆すべき才能があるわけでもない。魔法は使えるらしいが、記憶を見るに、上手いわけでも下手というわけでもない。運動神経もないわけではないが、あるわけでもないようだった。


 ダンジョンは何度か経験はあるらしい。だが、このダンジョンに潜るのは初めてらしく、緊張と恐怖の感情が胸の中に残っている。


 このダンジョンの来た目的は……奥にある、赤色の花を摘んでくること。なんでもその根が万病に効くとされており、病気のお母さんのためにダンジョンにきているらしかった。


 同行者は、一人。ニットワードの妹の、ライワード。6才。


 こちらも特に才能に秀でているわけではなく、魔法は使えるが年相応といった具合で、倍近い年齢である兄には当然及ばない。武芸に秀でているわけでもなく、本当のか弱い女の子という感じであった。

 そして、ダンジョンはこれが初めてということらしい。


 一緒に花を摘むため、お母さんを助けるんだと無理言って兄のあとをついてきたらしい妹は。


 僕の――ニットワードの、目の前で。


 その腹を。


 柔らかい腹部を。


 魔女の左腕で貫かれていた。




――― 第四章 完 ―――

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