第14話 辻風
「よーし処置完了〜よく我慢したねっ偉いぞ。」
少女の腫れた足を氷で冷やすケロンさん。穏やかな表情で少女の頭を撫でると暗い表情の瞳から涙がポロポロと溢れ落ちる。
「ン・・シヨよし怖かったよね・・ウモ大丈夫だから。」
コトグニの言葉でそう言い、ギュッと少女を抱きしめる。きっと亡くなった弟にもこんな風に接していたのだろう。少しでもこの子の心が少しでも安らぐようにと・・・?
確かな違和感。
(あれ?今ケロンさんが話してたの日本語じゃなかったよな・・えっじゃあなんで僕は聴き取れたんだ・・?)
「ソリャ僕ト繋ガリガ出来タカラネ」
「!?」
慌てて後ろを振り向くと僕の足元近くにあの時の人形が立っていた。
「?チロ君どうしたの」
「っ!みっ見てくださいこれっコレ!」
「えっ?チロ君今、私たちの言葉・・」
なぜかコトグニの言葉を聴き取り、話せる僕を見て驚くケロンさん。
「そっそれは僕にも・・・それよりコイツですっ生存者がいるって教えてくれた・・」
そう言って人形を指差すが彼女はきょとんとした顔で首を傾げる。隣の少女も不思議そうに僕を見つめている。
「・・?何もいないよ」
出会って初めて言葉を発した少女の隣で彼女もそう頷く。
「僕だけが見えてるのか・・?」
「マァソウイウコト。僕ジシン分カラナイコトガ多インダケドソウイウモノラシイ。実際僕ノ姿ヲ見レタ人ハ50年ブリダヨ」
「らしいって・・・お前は一体なんなんだ!?」
僕の問いに腕を後ろに組んで上目遣いで答えた。
「・・・・悪イケドソレハ後ダ。来ルヨ」
「来る?何が・・」
「ハチロウッ避けろぉぉ!!」
「あははっ!」
それは一瞬の事だった。
僕がネプティマさんの荒げた声を聞いた瞬間、正面から何かが途轍もない勢いで衝突してきた。そして僕の体は後ろにいたケロンさん達の横を通り過ぎ、奥の潰れた家屋に激突した。
「がはっ・・・うぅ・・」
全身が軋みズキズキと痛みが走る。何が起こった?何が飛んできた?。なんとか目を開けて辺りを確認する。
「ヤレヤレコイツハエグイ・・」
おそらくコイツが守ってくれたのだろう。かなりの痛みはあれど、あれだけの勢いで吹っ飛ばされたにも関わらず僕の体は驚くほど無事だった。それにしても一体何が・・。
「チロ君っチロ君!!」
血相を変えて少女を抱えながら僕の元に向かってくるケロンさん。
「ゲホッ・・ケロン・・さん。さっきのは・・一体・・」
「喋らなくて良いから!今師匠が戦ってる。すぐに逃げるよ!」
決起迫る表情でめり込む僕をむりくり引きずり出して少女と共に抱えて全速力でジョージの元へと走り出す。人形もしっかりと僕にしがみついていた。
「させないよ?」
「っ!?」
後少しで村の外に出ようとした瞬間、僕たちの目の前に突然風が巻き起こりたちまち風の壁が先を塞いでしまった。
「邪魔っ!」
ケロンさんが氷の槍を射出する。しかし壁に触れた瞬間粉々に粉砕されてしまった。
「チッこれじゃあ出れないじゃん!ジョージのとこまであとちょっとだったのに・・」
後少しのところで退路を塞がれてしまった。下手に近づいても何が起こるか分からない。
「二人ともちょっと下ろすよ」
そう言って彼女は壁から距離を取り、僕たちをゆっくりと地面に下ろした。
ネプティマさんは大丈夫だろうか。今戦ってる相手はきっと恐ろしく強いのだろう。コイツが守ってくれなかったら僕は間違いなく死んでいた筈だ。
「彼ガ心配カイ?」
不安な気持ちの僕を見て人形はそう聞いてきた。
「・・問題ないって思いたいよ。」
「相手ハカナリノ曲者ミタイダカラネ。彼デモ苦戦スルカモ」
「そんな・・ゲホッ・・・ぐぅ・・」
咄嗟に口元を抑える。手のひらが吐いた血でドロドロになってしまった。あげく全身の関節がズキズキと痛い。これでは体を動かすのもままならない。
「チロ君っ!」
吐血した僕を見て二人が駆け寄る。僕の背中をさするケロンさんの手から余裕が無いことがひしひしと伝わってくる。少女は僕を見て心配そうに見つめる。
何も出来ないなんて自分が不甲斐なくてしょうがない・・。ケロンさんには毎回助けてもらってばかりだし、この子に関しては今の僕なんかより心も体もずっと苦しい筈だ。
(くそっこの状況・・どうすれば良いんだろう)
「ナントカシテホシイ?」
突然の問いかけだった。
「え・・」
「僕ノ力。キミニ貸シテアゲル」
そう言うと人形は掌に乗っかり僕の顔を見上げて手を伸ばす。
「僕ノ名ハ大地ノ鎧ランド。転移セシ者タチノ鉾トナリ盾トナル乖世ノ三鎧ガ一領」
人形は自身の名をランドと名乗った。すると人形の体から暖かな光が溢れ出す。
「僕ヲ纏イ、命ヲ賭シテ戦ウ覚悟ハアルカイ?」
表情は読み取れない筈なのにとても真剣な表情をしているように感じた。生半可な気持ちで答えて良い質問ではない。
「・・・うん、あるよ。僕は・・もう助けられてるだけのままで居たくない。この村のような悲劇はもう起きてほしくない。今度は僕が誰かを助けたい・・!」
僕が今思っていることを偽りなくそのままランドに伝えた。
「分カッタ、認メルヨ。コレヨリ大地ノ鎧ノ所有者ヲ片桐八郎ニ制定。装着ヲ許可スル」
そう言い終えると、ランドは僕の掌から飛び上がり体中のヒビが開き始め、そこから溢れた光が僕の肉体を包み込んだ。
「チロ君・・!?一体何が起こって・・」
「光・・あったかい」
暖かな光と共に僕は強大な力を手にした、いや手にしてしまった。こいつとの出会いは最初から決まっていたことだったのかもしれない。
この時から僕の人生はさらに特異で過酷な道へと舵を切った。
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