第12話 邂逅

ギャッ!


四発撃ったうち、一発は獣の眉間を砕き仕留めることができたが、残りの弾はいずれも他二体の顎や頬を掠っただけで仕留め損ねた。


(チッ流石に三匹一度には無理かっ)


僕は速る心臓を抑えてふたたび三発四発と追撃をする。が、僕の存在に気づいた二匹は身を翻し次々躱していく。


「くそっ!」


僕の表情を見てニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、仲間が死んだことなど気にも留めずに勢いよく僕に飛びかかる。


「っ!」


ギッ!?ギャッ!


突然壁を突き破って氷の槍が獣たちの腹部を串刺しにした。それを見てぼくはすぐさま二発正確に獣の頭に撃ち込んだ。


そのままぴくりともしなくなったとたん、獣たちの肉体がドロドロと溶けていき、やがて跡形もなく消え去ってしまった。食い散らかした遺体を残して。


「ハァ・・ハァ・・倒した・・・ちくしょう」


ケロンさんの援護があったとはいえなんとか倒すことが出来た。彼女がいなかったら僕は今朝の夢のように食い殺されていただろう。


それこそこの遺体のように・・。


「・・助けられなかった、こんな死に方・・酷すぎる・・っ!!!」


飛び出しそうなほど目を開いたまま苦悶の表情を浮かべている遺体を前に、吐き気を忘れ救えなかった無力感と、この惨劇を引き起こした人間がいるという事実に対する憤りが僕の心の中に広がっていく。


「助けられなくてごめん・・」


ぼくは遺体に謝罪をし、そっと瞼に手を添える。


「・・まだだ・・まだどこかに・・生きてる人を探さなきゃ!」


一人でも生きている人がいる可能性を信じて立ち上がった。ここから出ようと入り口の方を向くと何かが立っていた。


それは手のひらに乗っかりそうなほど小さい体をしていて、体のあちこちにヒビが入っており、頭には双葉の葉っぱがちょこんとひっついている。眼・・なのかはわからないがカメラのレンズのような単眼が特徴的な人形?だった。


「・・なんだ?」


あわてて指を構えるがそれはただじっと動かずただ僕の顔を見つめている。


(襲ってくるわけじゃないのか・・なんなんだこいつ?)


恐る恐る近づき、目の前にまで立つがピクリとも動かない。よく見るとなんだかマスコットのような愛嬌のある顔をしている。


(何もしてこないな・・もういいや害意がないのなら放っておこう。それよりも早く生存者を・・)


「アッチ」


(・・喋った)


そう言って人形は正面の潰れた家屋を指差した。


「お前・・喋れるのか・・?というか日本語・・なんで」


いきなり言葉を、それも僕の世界の言葉を発した人形に問いかけるがそれを無視するように淡々と話を続ける。


「アソコニ女ノ子ガヒトリ、マダ助カルカモネ」


「っ!本当!?」


「イケバ分カルヨ」


「ありがとっ!」


生存者の存在を聞き僕は謎の人形に軽く感謝をしてそのまま正面を突っ走る。


外に出るとあちこちに氷の槍で貫かれた獣の死体が転がっていた。次第に死体たちの体がドロドロと溶け始めていく。どうやら死にたてほやほやだったようだ。


「チロ君〜無事でなによりだね。雑魚は全部仕留めといたよ〜」


聞き馴染みのある声。


「あっケロンさっ・・っ!?」


声の方を向くと全身血まみれのケロンさんがトコトコと歩いてきた。


「だっ大丈夫・・なんですか!?そのっ血まみれ・・」


青ざめる僕の問いかけに彼女はウィンクをしながら親指を立てる。


「問題なーし!八割は返り血だしね〜それに奴らの死骸が消えれば血も消えるから重ねて問題なーし」


「二割はケロンさんの血じゃないですか!!まぁ大丈夫そうだけど・・それよりもケロンさん!あそこの潰れた家屋、生存者がいるみたいなんです」


「いるみたいです・・って誰から聞いたの?」


僕の言葉に首を傾げるケロンさん。


「そうなんですよ!ほらっ俺の後ろにいるこの小さい人形みたいなやつが・・・ってあれ?」


振り返るとさっきまでいたはずのあいつは忽然と姿を消していた。


「いない・・・何処に行ったんだあいつ」


「チロ君疲れてるんだよーなにせ初めて命のやり取りしたんだもんね。少し休む?デカブツの方は師匠も終わりそうだしね」


幻覚・・だったのだろうか?だけど確かにいたはずだ。はっきりと存在していた。まだ助かるかも知れないと言っていた。


「あそこの家屋探してみます!」


「わっちょっチロ君?」


そう言って僕は謎の人形が指差した潰れた家屋を念入りに捜索してみた。ありとあらゆる隙間を除き、どかせそうなところは頑張って取り除いているとどこからか苦しそうな声が聞こえる。


「・・・ぐぅっ」


木の板を必死にどかすと棚らしきものに足を挟まれて動けなくなっている茶髪の子供がボロボロの状態でうつ伏せになっていた。


「居た・・ケロンさん来てください!!!生存者です!!」


「うそぉ?わっホントだ・・助けなきゃ。チロ君離れててっ」


「え?あっはい!」


僕が離れたことを確認するとケロンさんは優しい声で子供に語りかけた。


「よーし・・大丈夫だからね〜お姉さんが助けるから」


そう言うと隙間に手を入れてゆっくりと片手で持ち上げながら、そっと子供の体に手を回し抱き抱えて救出した。


とてもじゃないが家の扉を蹴りで粉砕したり、地下室に置いてあったフラスコをぶつけて粉々にするような人とは思えないくらい丁寧だった。





「よーし・・救出成功〜」

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