第6話 放課後会02
きれいに整えられた黒髪のボブに、メガネによって強調された元々大きいであろう綺麗な二重の目、長い睫毛も彼女の綺麗な瞳を引き立てていた。
【か、かわいい…】
「あっあの、席、倒しても大丈夫ですか…?」
「えっ!?あっ、席ですね!はい!喜んで?!」
目の前に座るどタイプのその彼女に見惚れていた私は動揺してしまい、意味のわからないことを口にしていた。
【なんだよ喜んでって…、めちゃくちゃ困惑しちゃってるし、私だっさ…】
「あ、ありがとうございます」
「いえ、その、はい…」
よくわからないことを口にした挙句、それをめちゃくちゃタイプな子に完璧スルーされた私のメンタルはボロボロで、目的地の駅に着くまで私の気分はとてつもなくブルーだった。
「皆さん、目的地の駅に到着しました。ここから降りたらまず、学校別に集まってもらい、そこからそれぞれの志望高校順に分かれてもらいます。私たちが先に降りて、学校順にプレートを持っているので、そこに集合してください」
私たちをまとめる係員である先生が車両の先頭の方で声を張って全体に連絡している。その連絡を聞き終えて下車の準備をしていると、前の席の子にまた話しかけられた。
「あの、これ…」
少し気まずそうにしながらも彼女から差し出されたのは、酔い止めだった。
「…えっ?酔い止め?なんで?」
経緯がわからないまま差し出されたそれに、私は純粋に疑問を抱き、ストレートに聞き返してしまった。
「えっ…、あっ、その、ずっと窓の遠くの方見て少し気分が悪そうだったので、電車に酔っちゃったのかなって思いまして…」
「…あ、あ〜ねっ!いや、全然大丈夫だよ!でも、ありがとうね。帰りに必要になるかもだから、ありがたくもらうね」
「は、はい!」
彼女は私が酔い止めを手に取ることを確認すると、嬉しそうに笑顔を浮かべた。私は、その笑顔に見事に心を打ち抜かれた。
「それじゃあ、ありがとうございました!」
彼女はボーッと突っ立ってしまっている私にぺこりとお辞儀をすると、足早にカバンを持って去ってしまった。
「あっ、名前…聞けばよかった」
彼女が走り去っていった方向を眺めながら、名前を聞けなかったことを少し後悔していた。そんな中、彼女の消えた先に掲げられた看板が目に入った。
【私立海燕高校…。あの子、私立の子だったんだ…】
その後、高校の見学会を終わらせ帰宅する時は行きと座席も号車も違ったため、会うことができなかった。
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【あの子、どの高校受けるんだろう…?】
あの日から一週間、私はずっと彼女のことが頭から離れなかった。
「香澄〜?最近よくぼーっとしちゃってるけど、何?なんかあったの?」
私があまりにも上の空だったからか、みかねた真紀子が話しかけてきた。
「ん〜?あぁ、あのさ、真紀子って海燕高校に知り合いいたりする?」
「え?海燕高校?なんで?」
「いや、ちょっと気になることがあってさ」
「う〜ん。確か、私の友達の友達がそこって聞いた気がする」
「…まじ?」
「おん、多分だけど」
「その子に会うことってできる?」
「多分。てか、塾一緒だから今日行ってみる?」
「いいの!?いくっ!」
「おけ。じゃあ、放課後一緒行こ」
私は、その真紀子の知り合いから彼女の志望校が私立櫻山高校であること、名前が優香であること、すごい努力家であることを知った。そして、私も優香ちゃんと同じ高校に行きたいと強く思った。
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「とまあ、こんな感じかな笑」
私は優香に、女の子の正体が優香であることを伏せてこれまでのことを話した。
「偶然かもですけど、私も香澄ちゃんと同じイベント?に中学の時に参加したんです…!」
私の話を聞いた彼女は少し驚きつつも嬉しそうに、自身の顔を指さし、笑顔でそう答えた。
【知ってるんだよなあ…笑 優香は知らないかもだけど、私、あなたの前の席に座ってたよ笑】
話せないもどかしさと、うれしそうな優香を見て嬉しい気持ちが混ざり、私は心の中で苦笑した。
「まじで?!めっちゃ偶然じゃん!」
「ふふふ笑 まあでも、ここは全国でも有名な高校なので、私たちが知らないだけであのイベントに参加していた生徒はいると思いますよ」
「まあそーだけどさ、いいじゃん!これはこれで、運命?みたいなのだしさ笑」
「運命って、そこまで大袈裟にしなくても笑」
彼女は私の大袈裟な言い方に少し困り顔をしつつも、最後は結局「そうですね」と笑顔で頷いた。
【なんか今日、めちゃくちゃ優香と仲良くなれた気がする!めちゃ嬉しい…!】
私の今までの話をしたことで、彼女の中にも親近感が湧いたのか、その後の私たちは中学の時の話を中心に雑談をしつつ、自分たちの勉強を進めた。
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