ショタサイボーグになった男。仕事仲間のエルフ魔法使いと、借金返済に奔走する

高田アスモ

ヴィヴィアンと一緒に仕掛け(ラン)の時間

 太陽が雲一つない空に昇っていてジリジリと地面を焼いている。

 そんな中、ふと腕時計を見れば十二時半を指している。

 ――この仕掛けランが終わったら飯でも食いに行こう。

 建物の影に隠れているジャケットを着て、カタナを帯刀している茶髪のヒューマンの青年――リクロウ・アーミテッジはそう思いながら、腰に携帯している大型ハンドガンを抜いた。

 視線の先には口元から犬歯を生やしたオークのバイカーギャングたちがべちゃべちゃと喋っている。その数13人。

 どいつもこいつもバイクに乗りながら、ドラッグやアルコールを片手に笑ってやがる。


『聞こえますかリクロウ? そろそろ仕掛けランの時間になりますが、大丈夫そうですか』


 耳に装着したイヤホンから、少し離れた建物の上層部にいる予定の、相棒であるヴィヴィアンの声が聞こえてくる。

 いつ聞いても冷たいな印象を与える声だ。しかし彼女の人の良さをリクロウはよく知っているし、なによりデキる女であることをよく知っている。

 おそらくだが前衛を役のリクロウを心配しているのだろう。いつも仕掛けランの前には声をかけてくれる。

 仕掛人ランナー稼業において、心配性しすぎなのは美徳と言える。西暦2121年のこの世の中、なにが起きるか分からないのだから。


「いや、問題ないヴィヴィアン」


『よろしい。では攻撃を開始します。3、2、1……火球ファイアー・ボール!』


 その言葉と同時に、上空から人間サイズの巨大な火の球。否、火球ファイアー・ボールがオークのバイカーギャングを襲う。

 

「なんだ……? ぎゃあああぁぁぁ!?」


「熱い! 熱い!」


 無警戒であった上からの攻撃に、オークのバイカーギャングたちは逃げられなかった。

 特に火球ファイアー・ボールの中心的にいたオークは、自分が燃えていることも気づけず死ねただろう。

 全身が燃えて動かないオークが6人。燃えているが軽症そうなオークが6人だ。

 今回の仕掛けランはこのバイカーギャングの殲滅。1人も生かして返さない。


「ヘイ、弾丸のプレゼントだ! 代金は無料タダだぜ!」


 一番近くにいたオークへ向かって、大型ハンドガンを撃つ。

 放たれた銃弾、計5発の内3発が命中し、そのうち1発は頭部に命中。パァンとオークの頭が弾け跳ぶ。


「なんだてめぇ!」


「どこの鉄砲弾だ!」


「殺せ! 殺せ!」


 ようやく襲撃だと気づいたのだろう。オークたちは各々の武器を準備していく。

 マシンピストルにサブマシンガン、最悪なことにライトマシンガンを持ってる奴もいる。

 即座に優先順位をつける。

 マシンピストルやサブマシンガンを持っているオークは後だ。まずはライトマシンガン持ちのオークを優先して殺す。

 手にしたハンドガンの照準を、ライトマシンガン持ちのオークに合わせると、残った銃弾全てを素早く撃ち尽くす。

 ハンドガンから放たれた銃弾はオークの体に全弾命中。

 が、どうやら銃弾は貫通しなかったようで、倒れてくれないクソッタレなライトマシンガン持ちはこちらをジロリと睨みつけてくる。


「死ねぇえええぇぇぇ!」


 チェーンソーの排気音の如く雄叫びを上げるライトマシンガン。

 走れ! 走れ! 走れ!

 足を止めれば死んでしまう。背後では銃弾が地面に貫通する音が耳障りだ。

 その間にも他のオークたちが、マシンピストルやサブマシンガンなどの連射性の高い銃器を向けてきている。

 このまま多方向から撃たれてしまえば、致命傷は免れないだろう。


「このまま男は殺せ! 魔法使いウィザードは女かもしれねぇ!」


 中々古典的な考えだ。30代の男の童貞魔法使いだったらどうするんだ?

 そして魔法使いウィザードが前衛をしないと誰が決めた?

 ハンドガンを持っていない手の平をオークたちに構える。そして即座にリクロウは魔法の言葉を口にする。


氷の嵐アイス・ストーム!」


 構えた手のひらから氷の嵐が吹き荒れ、オークたちを襲っていく。

 想外の攻撃に、足を止めてしまうオークたち。凍えるような突風が、彼らの足元を凍らせていく。


「クソ! 止まれ止まれ!」


 即座に一番前を走っていたオークが、転倒することを恐れたのか一心不乱に叫ぶ。

 結果として一瞬生まれた隙を、リクロウは見逃さなかった。

 即座にハンドガンをホルスターに戻すと、腰に差しているカタナを抜く。そして他のオークには見向きもせず、ライトマシンガンを持ったオークに向かって走る。


「せいやあああぁぁぁ!」


 一歩地面を蹴れば、まるで疾風のようにオークたちの間をすり抜けていき。

 二歩地面を蹴れば、ライトマシンガン持ちの目の前にたどり着く。

 カタナを構え、首を狙って横一文字に振るえば、その一撃は見事にクソッタレなオークの首と体が別れた。


「てめぇ、達人アデプトか!?」


「いや、でもさっき魔法を使ってたぞ……!」


 リクロウの動きを見て達人アデプトと判断するオークの考えは間違っちゃいない。

 だが達人アデプトでも魔法使いウィザードでもない。


「まさか……ウィザードアデプト!?」


 正解。どうやら連中の中にも学のある奴はいたようだ。

 魔法使いウィザードと同じく魔法を使い。達人アデプトのように一芸に秀でる。

 それがウィザードアデプト。

 しかし気づくのが遅い。一番厄介なライトマシンガン持ちは片付けた。

 カタナを鞘に戻したリクロウは、居合いの構えを取る。次の瞬間にはまた1人オークの首がはねられる。


『リクロウ、状況はどうですか?』


「3人は確実に死んだ。魔法はバンバン撃ってくれ」


『はぁ……素早く魔法を撃てないのは知っているでしょう? まあいいでしょう早速援護を始めます』


 ため息をつきながらもヴィヴィアンは、宣言通り後方から魔法で援護をしてれる。

 3本の矢――魔法の矢マジック・ミサイルがオークの胸を貫いたのだ。


「なんだ!?」


魔法の矢マジック・ミサイルだ! 逃げろ!」


 すぐに状況を理解したのであろうバイカーギャングたちは、急いで物陰に隠れようとする。

 悪いがそれは悪手だ。

 なにせ結果として、敵であるリクロウに背を向けてしまうの行為なのだから。

 素早く地面を蹴って近くのオークの背後を取ると、そのまま背中から横一文字に切り捨てる。

 続けて左の人差し指をオークに向けて狙いを定める。


魔法の矢マジック・ミサイル……!」


「がっ!?」


 無色の2本の矢がオークの胸に突き刺さった。


「この……死ねぇやあ!」


 サブマシンガンを持ったオークがそう叫ぶ。それと同時に、他のオークたちも手に持った銃器を構える。

 しかしオークたちが銃弾を放つより速く、走り出したリクロウ。

 直後、先程までいた場所に銃弾が飛んでいった。


「この! この! この!」


 焦ったように乱射してくるバイカーギャングたち。ついに連射性能の高いサブマシンガンやマシンピストルから弾切れが起き始める。

 させない。

 リロードをしようとするオークの前に立つリクロウ。


「クソがぁ!」


 サブマシンガンを持ったオークは、リロードできないと悟ったのだろう。サブマシンガンを捨て素早く拳を構えると、殴りかかってくる。

 当たりどころが悪ければ人が死ぬ一撃を、まるで波のようにゆらいで回避する。

 連続して攻撃してくるオークの拳を回避しながらも、その際に銃器を持ったオークたちが、誤射を誘発するように位置取りをとる。


「クソ、撃てねぇ!」


「タイミングを待つんだ!」


 その間にもヴィヴィアンの放った魔法の矢マジック・ミサイルが他のオークたちの胸を貫いていく。

 また1人、1人と死んでいく。

 バイカーギャングたちも残り3人だ。


「くそ……! テメェどこの刺客だ! いや、仕掛人ランナーだな!」


 時間稼ぎでもしようと考えたのか、バイカーギャングの一人が話しかけてくる。

 正解だ。

 仕掛人ランナーは合法・非合法な依頼を請け負うフリーのなんでも屋。

 護衛や運輸といったまともな依頼から、暗殺や破壊工作といった汚れ仕事だって請け負う。


「誰に雇われたんだ!? 俺がその報酬の倍……いや三倍を支払おう!」


 素晴らしい提案かもしれない……だが今回の仕掛けランの詳細を聞いていなかったらの場合だ。


「一週間前、お前ら何人か人を轢いただろ」


「あのババァの親族か!? それともあの女か! クソ誰だ!」


 今回の仕掛けランはバイカーギャングに殺された親族全員からの依頼だ。故に断る気も裏切る気も起きない。

 そんな風にバイカーギャングの1人と話していれば、残りは目の前のオークは1人だ。


「悪いね。死んでくれや」


 地面を蹴って距離を詰め、目の前まで移動する。

 そのままカタナを横一文字に振るえば、バイカーギャングの胴体は真っ二つとなる。


「これで終わりだ」


 残心の後、カタナの刀身に付いた血を拭い、鞘に収めるリクロウ。

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