前田利家ロリハーレム♥!?傾奇者はロリコン!?前田又左衛門利家 ~忠義と恋、ドタバタ戦国ラブコメディ!幼い少女たちに翻弄される武将の奮闘記~

常陸之介寛浩◆本能寺から始める信長との天

プロローグ

 時は戦国時代。

 織田信長がその名を天下に轟かせ、尾張の虎と恐れられ始めたころのことである。


 まだ二十歳そこそこの前田利家――かの名を後世に残す「槍の又左」は、今、主君の前で深く頭を垂れていた。


「利家……お前は何をしている!」


 織田信長の怒声が、鷹の間に響き渡った。

 かつてこの広間で幾度、剣戟のごとき議論が交わされたことか。だが今日のそれは、血と火ではなく、もっと個人的で、もっと根深い“問題”だった。


 信長の隣には、ひとりの少女が立っていた。

 まだ十二歳。華奢な肩に小袖をまとい、だがその目だけは、強い光を湛えていた。


 松――利家の正室。

 幼くして前田家に嫁ぎ、そして、たった今「女」になった少女である。


「上様……」


 利家はかすれる声でそう呟くと、手を突き、額を畳につけた。


「申し開きもございません……全て、私の不徳と未熟の賜物……」


 声が震える。胸の内も、胃の腑も、ぐつぐつと煮え立っていた。

 目の前にいるのは、ただの主君ではない。織田信長――尾張の覇王。

 恩義がある。畏れもある。だがそれ以上に、利家にとって信長は、すべての指針であり、絶対だった。


「お前……本当に分かっているのか? 松はただの女子ではない。織田家と前田家の橋を繋ぐ、掛け替えなき命なのだぞ」


 信長の言葉は冷たいが、どこかに苛立ちと、そして心配が滲んでいた。


「十二だぞ、利家。まだ干支が一巡すらしていない童に――妊娠、だと?」


 怒りというよりも、呆れに近かった。

 そしてなにより、信長自身も――少女の顔を見て、言葉に詰まる。


 松は震えていなかった。

 泣いてもいなかった。


 ただ、前だけを見ていた。


 利家はその姿に、胸が詰まった。

 あの夜――短い、一夜のことだった。


 松が寝間で小さく呟いた。


『……私、殿のこと、ずっと好きでした』


 その声が、あまりに澄んでいたから。

 その身体が、あまりに儚かったから。


 利家は、拒めなかった。


 幼い松の額に手を当て、ため息をついた。


『わしなどに、よう……こんなにも……』


 だが、松はふわりと笑った。


『だって、利家様の手は――あったかいんですもの』


 あの言葉が、今も頭に残っている。


「私は……松を娶ると決めたときから、いずれこのような日が来ると、覚悟していたつもりでした……」


 利家は語る。


「ですが……彼女がこんなにも早く、“女”として私を信じてくれた。それが、どれだけ重いか。私は、命に代えても……松を、守ります」


 その言葉に、信長の眉がピクリと動く。


「命に代えても、か」


「はい。松は、前田家の柱です。私が選んだ、女です。……私の妻であり、これから産まれてくる子の、母です」


 信長はふぅ、と深い溜息を吐いた。


「その言葉、忘れるなよ。これは遊びではない。これは、戦の決断にも等しい覚悟がいる」


 そう言って、信長は膝を立て、ゆっくりと立ち上がった。

 その歩みが、怒りに満ちたものではないことに、利家は気づいた。


 主君は、思っていた以上に――優しい。


「松、そなたはどうだ」


 唐突に、信長は松に問うた。

 少女は一瞬だけまばたきをしたが、すぐに背筋を伸ばし、きりりとした声で答えた。


「はい。私は、利家様を信じております。たとえ幼いと言われようとも、妻として、母として、恥じぬよう努めます」


 信長は――くくっと笑った。


「こやつよりずっと大人ではないか」


 その一言に、広間の空気が少し和らぐ。


 だが、次の瞬間。


「……ならば利家」


 信長は鋭い視線で利家を見た。


「その娘に相応しい夫となれ。槍だけが能ではない。女の涙も、武士の器量で支えるのだ」


「はっ……!」


 利家は拳を固め、再び深く頭を下げた。


 このときから、若き前田利家は変わった。


 戦場での勝利よりも、

 名声よりも、

 まず先に――一人の少女と、その腹に宿る命を守ると決めた。


 そしてこの日から、広間に響いた信長の言葉は、誰よりも利家の胸に刻まれ続けることとなる。


 “戦に勝つだけが、武将じゃない”


 “日々を背負い、女を守る。その覚悟もまた、強さだ”

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