第1話 科学で戦う異世界理系JKの実験バトル生活
令和7年、夏休み初日。
雷鳴が響く午後、明里はリビングのソファでスマホをぼんやりいじっていた。
「なんか面白いことないかなあ……」
目に留まったのは、奇妙なタイトルのゲームアプリ。
『科学で戦う異世界理系JKの実験バトル』
好奇心に負けてインストール。
「ゲームスタート」をタップした瞬間、スマホが発光し、画面が粒子のように分解されていく。
「え、ちょ、ちょっと待って!? これって量子トンネル……?」
雷鳴と同時に、視界が真っ白になった。
目を開けると、そこは真っ白な空間。
目の前には、無表情で淡々とした雰囲気の女神が立っていた。
女神「異世界転送プロトコルを開始します。あなたは救世主候補として選出されました」
明里「え、えええ!? なんで私が!? 物理選択ミスとかじゃないの!?」
女神「選出理由:量子ゲート接触者。該当者は自動的に転送対象となります」
明里「自動って……そんな軽いノリで異世界行き決めないでよ!」
女神「異世界での生存率を高めるため、アイテムを三つの中から一つ選択してください」
選択肢が浮かび上がる。
1. 雌鶏獣(毎日金の卵を産む)
2. 金の腕輪(魔力2倍)
3. 念動術の石(物体を意志で操る)
明里(金の卵なら食いっぱぐれないけど、獣の世話って面倒そう……。魔力2倍は派手だけど、MP切れしたらヤバいよね? 念動術? 物理法則でハックできそう!)
明里「えっと……き、金の卵を産む、め、め、めん……ねんど、じゅちゅ……」
沈黙。
痛いほどの沈黙。
女神は、まるで処理中のAIのように数秒フリーズしたのち──
女神「……“念動術”ですね。選択を確定します」
明里「ちがっ! めんどりって言いたかったのにぃぃ!」
女神「滑舌エラーは仕様です。再選択はできません」
明里「えええええええええええええええ!」
女神「では、異世界転送を開始します。落下にご注意ください」
ゴゴゴゴゴ……
足元がひび割れ、黒い渦が開く。
明里「ちょ、ちょっと待ってってばぁぁぁぁぁ!!」
女神「……処理完了」
明里の悲鳴を残して、彼女の姿は量子の渦に吸い込まれていった。
転送完了後、神界の事務室。
女神は無表情のまま、端末に転送ログを打ち込んでいた。
女神「転送完了。滑舌エラーによるアイテム誤選択、記録済み」
隣の席では、同僚の神官がコーヒー片手に書類をめくっている。
神官「またJK?今月、滑舌事故多すぎじゃない?」
女神「この時期になると急に転生ばっかりだから嫌になる。夏休み、ほんと地獄」
神官「人間界の休暇シーズン、転生申請が跳ね上がるからね。しかもJKばっかり」
女神「JKは滑舌が不安定。あと、語彙が曖昧。“めんどり”と“念動術”の誤認率、昨年比12%増」
神官「それ、マニュアルに載せといた方がいいんじゃない?」
女神「……マニュアル更新は第六神殿の承認が必要。平均処理時間、約300年」
神官「無理ゲーだな」
女神「異世界も、神界も、働くって大変」
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